現状、コロナ関連の融資によって、厳しい資金繰りをしのいでいる会社・個人事業者があります。
現状を受けて、アフターコロナの銀行融資は「どうなる?」の予測と、「どうする?」の対策についてお話をしていきます。
【予測】アフターコロナの銀行融資は借りにくくなる
本記事の投稿日現在(2020年5月4日)、新型コロナウィルスの影響により、多くの会社・個人事業者が資金繰りに苦慮しています。
これを受けて、国・地方自治体主導のもと、各種の融資が整備・推進されているところです。
おもには、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」、民間金融機関を利用する「セーフティネット保証」が挙げられます。
いずれの融資窓口も混雑し、「なかなかすぐには借りられない」という状況があるいっぽうで。「通常の融資に比べると借りやすい」のは、国・地方自治体の後押しもあってのことでしょう ↓
というように、コロナの真っ只中にある「いま」ではありますが。いずれコロナが収束をしたあと、いわゆる「アフターコロナ」における銀行融資はどうなるのか。
どうなるのかって、なんか変わるの? と思われるかもしれません。わたしは、「相応の変化」があるものと考えています。
相応の変化とは。ひとことで言えば、コロナ以前よりも借りにくくなる。これです。アフターコロナの銀行融資は借りにくくなる。いちおう理由をお話しておくと、こんな感じです ↓
- コロナ融資として大量の貸出を余儀なくされている
- 貸出の結果、少なくはない回収不能が見込まれる
- 貸出の期間、据置期間が長く、銀行の手元資金が減少する
以上のようなことから、銀行はコロナ以前よりもおカネを貸しにくくなる。会社はおカネを借りにくくなる、と考えています。
とはいえ。銀行もまったく融資をしない、ということでもありませんから。
どうなるのかと言えば、銀行はコロナ以前よりも「いっそうの選別」をして、「良い会社」に対象を絞って融資をする。「悪い会社」への融資はいっそう控える。
そんな状況になるとしたら、会社はどうすればよいのか? 融資を受けられないのは困るわけで、「対策」を準備しておく必要があるでしょう。
ということで、アフターコロナの銀行融資対策についてお話をしていきます。具体的には、こちらの3つです ↓
- いままで以上に決算書の黒字を目指す
- 借りられるときに借りておく
- 銀行の事業性評価に協力をする
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
【対策】アフターコロナの銀行融資はどうする?
《対策1》いままで以上に決算書の黒字を目指す
さきほど、こんなことを言いました ↓
” 銀行はコロナ以前よりも「いっそうの選別」をして、「良い会社」に対象を絞って融資をする。”
では、「良い会社」とはどういう会社のことを言うのか? 端的に言えば、「黒字の会社」です。多くの利益が出ている会社です。逆に、「赤字の会社」は悪い会社、ということになります。
アフターコロナは、銀行が融資をしにくくなるのはお話をしたとおりです。融資をするとしたら、黒字の会社、良い会社です。
このこと自体はとくに真新しい話ではなく、これまでも黒字の会社は融資を受けやすい状況にありました。ただ、コロナを経て、黒字重視の姿勢がよりいっそう顕著になるだろうという話です。
赤字の会社で言えば。コロナ以前はなんとか融資を受けられたかもしれない。でも、コロナ後には、もう融資を受けられないかもしれない。そういうことです。
だとしたら、どうすればいいか? 言うまでもなく、黒字を目指すことです。できるだけ多くの利益を出すことです。
納税を嫌って、利益を出し惜しんでいたような会社は気をつけたほうがよいでしょう。納税を嫌いすぎるあまり、利益を調整して「赤字にする」などもってのほかです。
また、同じ黒字であっても、「粉飾決算」はいけません。粉飾がいけないのはあたりまえですが、今後は粉飾に対する銀行の見方が、より厳しくなるものと見込まれます。
倒産した会社が実は粉飾をしてました… ということが銀行業界では話題になっていたり。コロナ後にもなんとか融資を受けようと、粉飾をする会社が急増する可能性があるからです。
アフターコロナの銀行融資対策その1は、いままで以上に決算書の黒字を目指す。黒字にする、黒字を増やすことを考えましょう ↓
《対策2》借りられるときに借りておく
いましがた、「決算書の黒字を目指す」というお話をしました。
この点で、だいじなのは「黒字になったら借りる」ことです。黒字の決算書ができたら融資を受ける。
なにをあたりまえのことを… と思われるのであれば違います。あたりまえではないんです。実は多くの会社・個人事業者が、黒字のときほど融資を受けようとはしていません。
いまは黒字だからだいじょうぶ。黒字でおカネにも困っていないからだいじょうぶ。そう考えて、融資を受けようとはしないのです。
ところが。いずれ赤字になり、赤字を理由に銀行から融資を断られる。そして、「やっぱりあのとき借りておけば良かった」と後悔をしています。これはほんとうに「あるある」です。
いくら黒字を目指すとは言っても、会社・事業を続けていれば、良いときばかりではありません。どうがんばっても赤字になってしまう、ということもあるでしょう。
そのときになってから借りようというのでは遅い。とくに、アフターコロナの銀行融資は「赤字に厳しい」のですから注意が必要です。コロナ以前のように、赤字でもなんとか… は難しくなります。
では、どうするか?
借りられるときに借りておくことです。「黒字」のときには、「いまはだいじょうぶ」などとは言わずに借りておくこと。黒字であれば借りられますが、赤字のときには借りられないからです。
アフターコロナの銀行融資対策その2は、借りられるときにかりておく。
「いまはだいじょうぶ」であっても、「いずれだいじょうぶじゃなくなる」ときのことまで考えるようにしましょう。
[ad1]《対策3》銀行の事業性評価に協力をする
銀行融資において「事業性評価」という考え方があります。
なんだか難しそうな言葉ではありますが。事業性評価とは、「決算書の良し悪しや担保・保証の有無に依存しない。会社・事業の将来性まで評価をしよう」という考え方です。
この「事業性評価」による融資を、金融庁は銀行に要求しています。したがって、各銀行は「事業性評価による融資」に取り組まねばならない状況にある。
ここで勘違いをしてはいけないのが「決算書の良し悪しや担保・保証の有無に依存しない」という文言です。これを見て、決算書が悪くてもいいのか、担保・保証がなくてもいいのか」と考えるのは間違いです。
あくまで「依存しない」との話であって、「重要でない」とは言っていません。よって、決算書は良いほうがいいに決まっているし、必要があれば担保・保証を銀行が要求してもかまわないわけです。
事業性評価の正しい理解としては、「決算書の良し悪しや担保・保証の有無、そこにプラスアルファで会社・事業の将来性も見ましょう」ということになります。
銀行が取り組まねばならない「事業性評価」について。会社としてはどうすればいいのか?
協力です。銀行が取り組もうとしている事業性評価に、会社が協力をしてあげることです。なにより、事業性評価に必要な「材料」を持っているのは会社のほうなのですから。
事業性評価に必要な材料とは、カンタンに言えば「非財務」の情報になります。非財務の情報として、具体的には次のとおりです ↓
- 経営理念
- 後継者の有無
- 事業の強み・弱み
- 業界動向・競合他社との比較
- 主要取引先と取引状況
- 従業員の定着率、人材育成、組織構成
- 事業計画の有無と進捗管理の状況
- 研究開発の体制と状況
- 業務フロー(バリューチェーン)
- 商流(ビジネスモデル)
などなど。これらの非財務情報は、つまるところ「数字以外の情報」です。だから銀行は、数字が羅列された決算書や試算表を見ているだけでは事業性評価ができないのです。
したがって、会社のほうから積極的に情報提供することが大切になります。銀行は事業性評価を求められているのですから、事業性評価に協力してくれる会社に対して、より積極的に融資をすすめることでしょう。
また、同じ黒字の会社だとしても。事業性評価に協力してくれる会社と協力してくれない会社があれば、当然、協力してくれる会社を選ぶはずです。
というわけで。アフターコロナの銀行融資対策その3は、銀行の事業性評価に協力をする。
事業性評価に協力をするための「ツール」もいろいろあります。コロナ後を見据えて、ぜひ、それらツールの使い方も押さえておきましょう ↓
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まとめ
現状、コロナ関連の融資によって、厳しい資金繰りをしのいでいる会社・個人事業者があります。
現状を受けて、アフターコロナの銀行融資はどうなるか? については考えておいたほうがよいでしょう。あわせて、どうするかの対策の準備も忘れずに。
アフターコロナの銀行融資は、コロナ以前よりも借りにくくなることが考えられます。
- いままで以上に決算書の黒字を目指す
- 借りられるときに借りておく
- 銀行の事業性評価に協力をする