自社の決算書や試算表を見たときに、「仮払金」の勘定科目はありますか?
仮払金経理には9つものデメリットがありますよ、というお話です。
決算書や試算表に「仮払金」はある?
経理をするうえで扱う勘定科目のなかに「仮払金」があります。
自社の決算書や試算表を見たときに、もしも、「仮払金」が掲載されているのであれば。仮払金には9つものデメリットがあるので気をつけましょう、というお話をしていきます。
こちらです ↓
- 仕訳が増える
- 残高管理が必要になる
- 精算の催促をしなければいけない
- 銀行に対して良くない
- 税務署に対しても良くない
- 利息を取らなければならない
- 持ち逃げや盗難の心配が増える
- 現金を扱うのはメンドー
- のちのち解明が困難になる
これらを見れば、仮払金による経理は「もうやめる以外にない」とも思えるはずです。
ということで。このあと、9つのデメリットを順番に見ていきましょう。
もうやめる以外にない!仮払金経理9つのデメリット
《デメリット1》仕訳が増える
仮払金の勘定科目を使うと、仕訳が増えてしまう。仕訳をする作業が増えてしまう、というデメリットがあります。
たとえば。社員の出張にあたって、旅費その他の経費を「仮払」した。このとき、1つめの仕訳をすることになります。
そして、社員が出張から戻ったときには2つめの仕訳。「仮払の精算」にともなう仕訳が必要です。
では、仮払をせずに、社員に「立替」をしておいてもらうとしたらどうでしょう?
1つめの「仮払」による仕訳はなくなりますよね。必要なのは、「立替の精算」による仕訳1つです。
それだけの違い? と思われるかもですが。1つの仕訳・1つの作業を将来にわたり確実に減らせるのですから。やらないのはもったいない、そう思いませんか。
社員に立替を負担させるのは申し訳ない、という理由で仮払している会社もあるでしょう。けれども、「クレジットカード」を持っている社員は少なくないはずです。
クレジットカードであれば、支払も遅らせることができますから、立替精算でも社員に負担は少ないと考えられます。
社員がクレジットカードを持っていない、じぶんのクレジットカードを使いたくない、と言うのなら。法人カードをつくって渡すのもひとつの方法です。
《デメリット2》残高管理が必要になる
さきほど、旅費その他の経費の仮払を例に挙げました。
もし、そのような仮払金経理をしていると、仮払金の「残高管理」という作業が必要になります。だれにいくらの仮払をしているか? という管理作業。これもデメリットです。
仮払をしている社員がいればいるほど、残高管理は煩雑にもなるでしょう。メンドーですし、時間もかかります。
立替精算だとしたら? 言うまでもなく、残高管理の必要はありません。やらなくていいことはやらない、のが経理をラクにする秘訣です。
仮払金に限らずですが、やらなくていいことをやっている経理は少なくありません。
《デメリット3》精算の催促をしなければいけない
引き続き、旅費その他の経費の仮払を例に話をしてみます。
仮払をしていると、「なかなか精算をしない社員」があらわれるものです。出張から戻っても、忙しいのか、いいかげんなのか、なかなか精算をしてくれない。
すると、仮払の精算ができませんから、経理担当者は困りますよね。精算の催促をしなければいけなくなる… こんなムダな仕事もありません。
これに対して。立替の精算であれば、催促の必要はなくなります。「出張から〇日以内でなければ精算しない」と、ルールを決めておけばよいのです。
社員としては「出張の自己負担」はイヤでしょうから、催促をせずとも精算をしてくれるでしょう。
[ad1]《デメリット4》銀行に対して良くない
仮払金という勘定科目は、銀行に対して良い印象を与えません。銀行から融資を受けている・受けようとしている会社は注意しましょう。
ほんとうは費用になるはずのものを、経費から除くために、仮払金で経理する会社があります。利益を水増しする、いわゆる「粉飾」です。
銀行はそのような会社をいくつも見ていますから、仮払金には良い印象を持たないわけです。
また、社長個人がプライベートでおカネを使うために、会社からおカネを借用する。これを、仮払金で経理する会社があります。
銀行からしてみれば、会社に貸したはずのおカネが、社長個人に流れていることになる… だったら、そんな会社にはもうおカネは貸せない! と、なってしまいます。銀行から借りられないのは困りますよね。
《デメリット5》税務署に対しても良くない
いましがた、仮払金という勘定科目は、銀行に対して良い印象を与えない、という話をしました。
仮払金は、税務署に対しても良い印象を与えません。なぜなら、仮払金が多い会社・仮払金が増えている会社は、経理がいいかげんそうに見えるからです。
事実。なににおカネを使ったのかよくわからずに、しかたなく「仮払金」として経理をしている… という会社はあるもので。
そのような会社は、なにやら怪しいこと(脱税)をしているのではないか? 経理にもミスがあって納税が足りていないこともあるのではないか? と、税務署が考えても不思議はありません。
すると、税務調査の対象にもなるかもしれない。税務調査によって、追加で納税にもなるかもしれない。これもまた困りますよね。
《デメリット6》利息を取らなければならない
会社が社長におカネを貸した場合。会社は利息を取りなさい、というのが「税金のルール」になっています。
この点で。長いあいだ精算されていない「社長に対する仮払金」は、社長におカネを貸したの同じではないのか。だから、会社は利息をとりなさい。と、税務署から言われる可能性があります。
利息をとることになれば、その分、会社は収入が増えて、税金も増えるのですから、あまりおもしろいことではないでしょう。
仮払金には、利息の問題がついてまわることを忘れてはいけません。
[ad1]《デメリット7》持ち逃げや盗難の心配が増える
ふたたび、旅費その他の経費の仮払について考えてみましょう。
もしも、仮払をしていた社員が、急に音信不通になったとしたら…? 仮払していたおカネは「持ち逃げ」されたということになります。ぜったいに無い、という話でもないでしょう。
また、「現金」で仮払をしている場合。会社のどこかしらに「現金」を置いておくのであれば、それを盗まれる(社員か、部外者かはともかく)ということもありえます。
持ち逃げにしても、盗難にしても。心配が増えると考えれば、仮払金経理もデメリットです。
《デメリット8》現金を扱うのはメンドー
「現金」で仮払をするのであれば、「現金そのもの」の管理という手間が生じます。
現金出納帳をつくったり、出納帳の残高と実際の残高が合っているかをチェックしたり… という手間は、はっきり言ってメンドーです。
仮払をやめる(立替精算にする)ことをきっかけに、そもそも現金を持たないようにすることも考えてみましょう。
現金をまったく持たないのは難しいとしても。キャッシュレス化が進むいまであれば、現金での取引を減らすことはできるはずです。
現金の取引が減ると、経理は速くなります。ラクになります。より正確にもなります。
銀行振込やクレジットカード払いなどであれば「取引データ」を、会計ソフトに取り込むことができるからです。
イチから手入力と、取り込んだデータの加工・確認と。どっちが速くてラクか? どっちが正確か? は言うまでもないでしょう。
《デメリット9》のちのち解明が困難になる
かつて、こんな会社がありました。
先代の社長がおカネにルーズで、社長に仮払したおカネの精算がきちんとできず。仮払金の金額は、積み上がっていくばかり…
そして迎えた事業承継。そこで決算書を見た後継者の社長はびっくりです。なんだ、この多額の仮払金は? と。
もはや先代の社長が、仮払金を解明できるはずもなく。税理士とも相談をして、無理やり仮払金を消滅させるしかありませんでした。
もし、きちんと精算できていれば、「経費」として税金を減らす効果もあったのに。仮払金を無理やり消滅させる場合には、税金を減らすことはできません。ムダな税金だと言えます。
という具合に、のちのち問題になることもありますのでご注意を。
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まとめ
自社の決算書や試算表を見たときに、もしも、「仮払金」が掲載されているのであれば。仮払金には9つものデメリットがあるので気をつけましょう。
これらを見れば、仮払金による経理は「もうやめる以外にない」とも思えるはずです。
- 仕訳が増える
- 残高管理が必要になる
- 精算の催促をしなければいけない
- 銀行に対して良くない
- 税務署に対しても良くない
- 利息を取らなければならない
- 持ち逃げや盗難の心配が増える
- 現金を扱うのはメンドー
- のちのち解明が困難になる