コロナ関連の融資を受けることができて、一息ついている会社もありますが。
いっぽうで、それらの会社には、いくつかの心配も見えてきました。というお話です。
ほっと一息つくのはいいけれど
2020年春先から本格化した「新型コロナウイルス」の影響により、多くの会社・個人事業者が厳しい状況に見舞われました。
これを受けて、国や地方自治体が主導のもと、緊急かつ大規模な融資が実行されているところです(2020年7月21日現在)。
具体的には、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」、民間金融機関を利用する「セーフティネット保証」などが挙げられます。
結果として、これらコロナ関連の融資(以下、コロナ融資)を受けることができて、一息ついている会社も増えてきたようです。
「それは良かった」と思えるいっぽうで、いくつかの心配も見えてきました。こちらの3つです ↓
- 融資はカンタンだ、という勘違い
- ムダ遣い
- 資金使途違反
わたしが見聞きする限りでも、決して少なくない会社が、これらの心配に当てはまる状況にあります。
そのような会社では、近い将来ふたたび、厳しい資金繰りを強いられることにもなりかねません。上記3つの心配に自社が該当していないかどうか、確認をしておきましょう。
コロナ融資を受けて一息つく会社を見て思う3つの心配
《心配1》融資はカンタンだ、という勘違い
このたびのコロナ融資を受けて、「融資を受けるなんてカンタンだ」と考えているのであれば。それは心配だ、と言えます。
なぜなら、コロナ融資は「特別な融資」だからです。
銀行融資についてこんなことを言われます ↓。
” 銀行は晴れの日に傘を差し出して、雨の日に傘を取り上げる”。
ここで言う「晴れの日」とは、会社の状況が良いときをあらわします。そして、会社の状況が良いときであれば銀行は融資をする。
これに対して「雨の日」とは、会社の状況が悪いときをあらわします。そして、会社の状況が悪いときには銀行は融資をしない。
そのような銀行の姿勢を、「晴れの日に傘を差し出して、雨の日に傘を取り上げる」と例えているわけです。
これを聞いて「銀行は何てひどいんだ!」 という感想もありますが。おカネを貸すのが商売であることを考えれば、銀行の姿勢はむしろ当然と考えるべきでしょう。
状況の悪い会社にまでおカネを貸していたら、こんどは銀行までおかしくなってしまいます。
だから本来、状況の悪い会社は融資を受けることはできない(あるいは難しい)。にもかかわらず、多くの会社がコロナ融資を受けることができています。
その理由は先ほども触れた通り、コロナ融資が「特別な融資」だからです。
国や地方自治体が「貸しなさい、貸しなさい」と言うから、銀行も例外的に融資をしてきたのです。ここを勘違いしてはいけません。
コロナ融資だけを見て、「融資を受けるなんてカンタンだ」とは考えないことです。
本来、融資を受けるためには、次の3点に注意が必要であることを覚えておきましょう。いずれもコロナ融資では求められなかったところです ↓
- 利益が出ている
- 手間のかかる書類の提出
- 急ぎではない
通常の融資では、「利益が出ている」ことが求められます。利益が出てはじめて、借りたおカネを返済することができると考えられるからです 。
コロナ融資では、いま現在、利益が出ていないことは仕方ない。コロナが収束して、いずれ利益が出ることを前提にしています。
また、通常の融資では、「手間のかかる書類の提出」が求められます。たとえば、試算表や資金繰り表、借入金一覧表などです。
コロナ融資は、緊急性が高いことから、手間のかかる書類の提出は省かれました。
さらに、通常の融資では、「急ぎではない」ことがポイントになります。いますぐおカネを貸して、というような会社は銀行から見て危ない会社の代表格だからです。
けれどもコロナ融資では、未曾有の事態ということもあって、 「いますぐ貸して」は容認されました。
これらの3点を通じて、コロナ融資と通常の融資との違いを押さえておきましょう。「融資を受けるなんてカンタンだ」とは決して考えないことです。
コロナ融資が終われば、今後は「通常の融資」しかないのですから。
[ad1]《心配2》ムダ遣い
コロナ融資を受けたことで、「いままで見たことがないような額のおカネがある」という会社は少なくないようです。
コロナ融資では向こうしばらくの運転資金として、まとまったおカネ(固定費の3ヶ月〜6ヶ月分くらい)を借りることもできました。
ゆえに、いままでとは桁違いの金額が預金通帳に記されている、という状況があるわけです。その結果、 おカネを「ムダ遣い」してしまう会社は心配だと言えます。
人間とは不思議なもので(もちろん、わたし自身も含めて)、おカネがあるとついつい財布のヒモが緩んでしまう。たとえそれが、借りたおカネであったとしても… というのは恐ろしいところです。
言うまでもなく、借りたおカネは返さなければいけないのですから、ムダ遣いをするわけにはいきません。
にもかかわらず、おカネがあると財布のヒモが緩んでしまう人がほんとうに多いことは、よくよく覚えておいたほうがいいでしょう。
ちなみに、ムダ遣いと言っても、金額の多いものばかりではありません。むしろ、小さな金額の積み重ねが大きなムダ遣いにつながることもあります。
たとえば、会社でちょっとした備品を買うにしても、いつもよりグレードが高く、値段が高いものを買ったり。
あるいは、いつもよりたくさんの量を買ってみたり。
そういうことの積み重ねが、気がつけば大きなムダ遣いになっている… ということはあるのです。このようなムダ遣いを避けるための方法はいくつかあります ↓
- 正味のおカネを見える化する
- 定期預金でおカネを固定する
- 予算を決める・計画を立てる
まず、「現金預金 ー 借入金」を計算することで、「正味のおカネを見える化する」のはひとつの方法です。つまり、いまある借入金を全部返済したら手元にいくらおカネが残るのか? を知る。
通帳に記載されたおカネを鵜呑みにするのではなく、正味のおカネを見るということです。
また、「定期預金でおカネを固定する」という方法もあります。普通預金のようにいつでも引き出せる場所におカネがあると、ついつい使ってしまうこともあるでしょう。
だから、なるべく使いにくい場所におカネを置いておくのです。
さらに、「予算を決める・計画を立てる」という方法も有効です。たとえば、「消耗品費は毎月 10万円」などと予算を決める・計画を立てておくと、 ムダ遣いに対する抑止力になります。
《心配3》資金使途違反
コロナ融資に限らず、銀行から融資を受けるときには「資金使途(しきんしと)」が必要になります。
資金使途とは、「借りたおカネの使い道」のこと。大きく、「運転資金」と「設備資金」の2つに分かれます。
コロナ融資では、多くの会社が「運転資金」としておカネを借りていることでしょう。
運転資金とは、 日ごろの仕入や経費の支払いに充てるおカネです(設備資金とは、設備投資をするためのおカネ)。
にもかかわらず、次のような声が聞こえてきます ↓
- あたらしい機械装置を買おう、車を買い換えよう
- (社長が)会社に貸していたおカネを、会社から返してもらおう
- なにかあたらしい商売を始めよう。
これらのことにコロナ融資で借りたおカネを使うということになれば、「資金使途違反」とみられる可能性があります。このような会社は、とても心配です。
資金使途違反とは、文字通り、資金使途に違反するということ。当初の約束とは違うおカネの使い方をすれば、大きなペナルティーが待っています。
一番大きなペナルティは、「全額返済」を迫られることです。約束を破ったのだから、いますぐ貸したおカネをすべて返してください。そういう話です。
全額返済を免れたとしても、今後はその銀行から融資を受けることは難しくなるでしょう。資金調達の方法が限られるなか小企業にとっては極めて大きなペナルティです。
こういう話をすると、「資金使途違反はバレるのか?」「おカネに色はないのだから資金使途違反にはならないのではないか?」と思われるかもしれません。
けれども、見る人が見れば資金使途違反は分かるものです。また、おカネに色はないとしても「おそらくこういう使い方をしたのであろう」ということは、やはり見る人が見ればわかります。
そうなってしまえば、言い訳は通用しません。融資するかしないかを決めるのは銀行。その銀行から疑われてしまった時点で、言い訳は意味をなさないのです。
このあたりを甘く考えている会社がありますが。資金使途違反をすれば、大きなペナルティによって、会社を潰すことになりかねない。そのように考えておきましょう。
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まとめ
コロナ関連の融資を受けることができて、一息ついている会社もありますが。いっぽうで、それらの会社には、いくつかの「心配」も見えてきました。
心配に当てはまるような会社は、近い将来ふたたび、厳しい資金繰りを強いられることにもなりかねません。
自社が該当していないかどうか、確認をしておきましょう。
- 融資はカンタンだ、という勘違い
- ムダ遣い
- 資金使途違反