借りすぎはよくない。必要もないのに借りるのは良くない。借りかたに問題があると、借金で会社をおかしくしてしまう。
違います。会社がおかしくなるのは、「借りかたが悪い」からではなく「使いかたが悪い」から。というお話をしていきます。
悪いのは借金ではなく会社
会社が銀行から融資を受けることについて。
借りすぎはよくない、とか。必要もないのに借りるのは良くない、とか。「借りかた」を問題にされることは少なくありません。
借りかたに問題があると、借金で会社をおかしくしてしまう。そんな論調です。
けれども、実際のところ。ほんとうの問題は、「借りかた」ではなく「使いかた」のほうにあるのであって。借りたおカネの「使いかたが悪い」から、会社をおかしくしているのでは?
というのが、わたしの考えです。
では、「使いかたが悪い」とは具体的にどういうことのか? よくある3つの例を挙げてみます。こちらです↓
- ムダ使いしている
- 資金使途に違反している
- 改善が足りていない
これら3つの例について、このあと順番に確認していきましょう。
「借りかたが悪い」のではなく「使いかたが悪い」の3例
《例1》ムダ使いしている
「借りかたが悪い」のではなく「使いかたが悪い」の例、1つめ。それは、「ムダ使いをしている」です。
銀行から融資を受けると、借金が増えるのと同時におカネも増えます。1,000万円の融資を受ければ 1,000万円の現金おカネも増える。
この 1,000万円のおカネを見て、「おカネがある」と勘違いしてしまう社長がいます。
言うまでもなく、1,000万円はいずれ返さなければいけないおカネなのですから、自由に使えるおカネではありません。にもかかわらず、通帳に 1,000万円あるのを見ると…
いやいや、そんなことはないだろう。そう思われるかもですが。実際に、社長がサイフのひもを緩めてしまう姿を、なんども目にしてきました。
よくあるのは、飲み食い(交際費)が増える、モノ(消耗品費、器具備品など)を買う、買うモノのグレードが高くなるなど。これまでよりも出費が増えるのです。
かく言うわたし自身もまた、融資を受けると、サイフのひもが緩みそうになるのを自覚しています…
最近の話で言えば、新型コロナウイルス関連の融資で、かなり大きな金額のおカネを借りることができた。という会社もあるでしょう。
いままで見たことのない金額が通帳に記載されている、との声も聞かれるところです。
気をつけましょう。「おカネがある」と勘違いしないように気をつけましょう。とはいえ、それでも勘違いしてしまう社長が多いことはお話をしたとおり。
だからそこは、「しくみ」でカバーをすることです。「しくみ」として考えられるのは、
- 正味のおカネを見える化する
- 定期預金でおカネを固定する
- 予算を決める
まず、「現金預金 ー 借入金」を計算することで、「正味のおカネを見える化する」ようにしてみましょう。
つまり、いまある借入金をぜんぶ返済したら手元にいくらおカネが残るのか?を知る。通帳に記載された金額を鵜呑みにするのではなく、正味のおカネを見るということです。
また、「定期預金でおカネを固定する」のもよいでしょう。普通預金のようにいつでも引き出せる場所におカネがあると、ついつい使ってしまうのがヒトだからです。
なるべく使いにくい場所におカネを置く。意外とおすすめです。
さらに、「予算を決める」というのも有効です。たとえば、「消耗品費は毎月 10万円まで」などと予算を決めておくと、 ムダ使いに対する抑止力になります。
くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
《例2》資金使途に違反している
「借りかたが悪い」のではなく「使いかたが悪い」の例、2つめ。それは、「資金使途に違反している」です。
銀行から融資を受けるときには、必ず「資金使途(おカネの使いみち)」を確認されます。その資金使途とは違った使いかたをするのが「資金使途違反」です。
資金使途あっての融資なので、違反をすればペナルティーが待っています。銀行から一括返済を求められるとか、その後に融資が受けられなくなるとか。大きなペナルティです。
新型コロナウイルス関連の融資で、大きな金額のおカネを借りることができた会社がある、というお話をしました。
そのような会社のなかには、資金使途を「運転資金(仕入代金や経費の支払のためのおカネ)」として融資を受けたにも関わらず、別のことに使っている会社があります。
モノ(たとえば社長車)を購入したり、新規事業を始めるおカネとして使ったり 。
それでも、それらのおカネに見合う利益が出ていれば、「利益のなかから支払った」と言うことはできるでしょう。
けれども、コロナの影響を受けて利益が減っている、あるいは利益が出ていないという会社は少なくありません。
もし赤字だと言うのであれば、モノを購入したり、新規事業を始めたりするためのおカネは、運転資金として借りたおカネを流用したことになります。資金使途違反です。
銀行はいずれ必ず、そのことに気が付きます。おカネには色がないのだからバレはしないだろう、とタカをくくっているのであれば考えをあらためましょう。
借りたおカネをどのように使ったか? 銀行の見方について、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
《例3》改善が足りていない
「借りかたが悪い」のではなく「使いかたが悪い」の例、3つめ。それは、「改善が足りていない」です。
ふたたび、新型コロナウイルス関連の融資について。売上や利益が減少している会社であれば、いずれ始まる返済に苦慮することになります。
当面は「据え置き」で元金返済無しでも、返済が始まれば 、返済できるだけの利益が必要です。利益をあげるためには売上も必要でしょう。
この点で。「いまはおカネがあるから」と、安心をしている社長がいます。多少の安心は良いにしても、安心しきってしまうのではいけません。
いずれ返済が始まったときに、返済額よりも大きな「税引後利益」を出せるように、改善をしなければいけないからです。
借りたおカネの返済原資は「税引後利益」。その税引後利益を増やす方法は、おもに3つしかありません↓
- 売上を増やす
- 売上総利益率を上げる
- 経費を減らす
このなかで、見逃されがちなのが「売上総利益率を上げる」です。売上総利益率とは、「売上総利益 ÷ 売上高」で求められる指標になります。
この売上総利益率が1%増えたときに、利益に与える影響を軽視している(あるいは気づいていない)社長は少なくありません。
たとえば、売上高 5,000万円の会社で、売上総利益率が1%増えた場合。利益は 50万円増えることになります(5,000万円 × 1%)。
もしも、この会社の売上総利益率が 50%だとしたら。利益を 50万円増やすためには、売上を 100万円増やさなければいけません(50万円 ÷ 50%)。
もともと売上高 5,000万円の会社にとって、売上高を 100万円増やすのはそれほどカンタンなことではないでしょう。
そう考えると、売上総利益率1%の効果は大きなものです。たかが1%、とは考えず。売上総利益率をいかに上げるか、を検討するようにしましょう。
ちなみに。売上総利益率を上げるには、原価(仕入)を下げるばかりでなく、売上単価を上げる方法もあります。
原価の引き下げにこだわると、品質が落ちるケースは少なくありません。それよりもむしろ、商品価値を高めて売上単価を上げる(値上げする)のが おすすめです。
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まとめ
借りすぎはよくない。必要もないのに借りるのは良くない。借りかたに問題があると、借金で会社をおかしくしてしまう。そんな考え方もありますが。
会社がおかしくなるのは、「借りかたが悪い」からではなく「使いかたが悪い」からです。自社の「使いかた」に問題がないか? 確認しておきましょう。
- ムダ使いしている
- 資金使途に違反している
- 改善が足りていない