会社が受ける融資なのに、社長個人のことまで聞かれるなんて気持ち悪い。答えたくない。と、思われるかもしれませんが。
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」について、お話をしていきます。
隠したくても隠さない、むしろ、見せる。
会社が融資を受けようとする場合、銀行から「社長個人の情報」について聞かれることがあります。
これに対して、「どうして会社の融資なのに、社長個人のことを答えなければならないんだ?」と思われるかもしれません。
実際、「個人のことを聞かれるなんて気持ち悪い。答えたくない」と言われる社長もいます。個人の情報をできるだけ隠そうとする、そんな社長もいるのです。
ところが。会社が銀行から融資を受けるにあたっては、社長個人の情報であっても隠さないほうがいい、むしろ、積極的に開示すべきだとも言えます。
というわけで。会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」について、お話をしていきます。具体的には、こちらの3つです↓
- 社長個人の資産や収入
- 社長の個人信用情報
- 社長の経歴
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」3選
社長個人の資産や収入
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」。1つめは「社長個人の資産や収入」です。
まずは、個人の資産について
会社が銀行から融資を受けようとすると、「社長個人の資産」について聞かれることがあります。たとえば、社長個人名義の「預金」や「不動産」などです。
これを聞かれて、「なんでそんなことまで教えなくてはいけないのか!」と怒り出してしまう社長もいました。「どうせ、また担保に取ろうとしているのだろう」と、考えたからです。
たしかに、その可能性も否定はできませんが。昔に比べると、銀行は担保を取らないようになっている傾向にあります。
また、銀行が「社長個人の資産」をたずねたのは、担保に取りたいからばかりではありません。どういうことかと言うと、
銀行は「社長個人の資産を把握することで、なんとか会社に融資をできないか?」と考えているのかもしれない。そういうことです。
銀行の融資審査で、会社の「決算書」が重視されることはよく知られています。その決算書の内容について、会社の「資産」が心許ない… というケースはあるものです。
つまり、資産が少なく、場合によっては負債のほうが多い。これを「債務超過」と呼びます。債務超過は、文字どおり、債務(借金)が多すぎるわけですから、銀行としてはこれ以上の融資が難しいところです。
けれども。社長個人の資産があれば、会社のいざというときには、その個人資産で補うことができるはず。なにしろ、中小企業は「会社と社長が一体」なのだから。という考えが、銀行にはあります。
したがって、「会社の資産・負債」と「社長個人の資産・負債」とを合算して、そのうえで「資産 > 負債」であればOK。会社単独では債務超過でも、合算してクリアできればOKなのです。
だから、銀行は社長の個人資産までたずねることがある。ということを覚えておきましょう。かたくなに答えずにいると、ほんとうは受けられるはずの融資が受けられなかった… ということもあるからです。
続いて、個人の収入について
社長個人の「収入」についても、似たようなことがあります。
決算書の「役員報酬(社長の給料)」が少ない場合、銀行には「それで生活できるのか?」という見方があります。生活できないほど役員報酬が少ないのであれば、その役員報酬は過少だと見ます。
結果として、「会社の決算書に掲載されている利益は、もっと少ないはずだ」となってしまう。社長が本来とるべき役員報酬をとれば、費用が増えて利益が減るからです。
利益が減ることは、返済力が減ることをあらわします。融資が受けにくくなります。
けれども、社長個人に役員報酬以外の収入があればどうでしょう? たとえば、不動産賃貸をしていて収入があるとか。
であれば、役員報酬が少なくても生活はできますよね。決算書の役員報酬が過少だとは言えませんよね。だから、「社長個人の収入」について、銀行に積極的に開示する。ということも、押さえておきましょう。
社長の個人信用情報
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」。2つめは「社長の個人信用情報」です。
個人信用情報とは、氏名や生年月日などの本人を確認するための情報、これに加えて、「ローンやクレジットなどの利用状況」に関する情報を言います。
銀行は融資審査の際に、社長の個人信用情報を照会していることがあり、そこに「キズ」があるとわかれば融資をお断りすることがあります。
たとえば、スマホ購入代金の毎月の分割払い。毎月の支払が遅れてしまった… これも個人信用情報のキズのひとつです。
したがって、支払うべきものの支払いがされていなかったり・遅延したりしてしまうと、銀行には個人信用情報のキズとして見られてしまいます。
結果として、キズがあるような「おカネにルーズな人」に、おカネを貸せるわけがない。というのが、銀行の考え方です。
ではもしも、個人信用情報にキズがある、という場合にどうするか? 黙っていよう、隠しておこう。との考えが、裏目にでることがあります。
銀行のほうから先に、「ローンの支払に遅れたことがありますよね」などと指摘をされてしまうようなケースです。先に言われてしまうと、黙っていた・隠していたということになってしまいます。
そこから先に「弁解の余地」はありません。
けれども。言われるよりも先に、個人信用情報のキズを正直に銀行に伝える場合はどうでしょう? 弁解の余地はゼロではなくなります。
社長みずから、個人信用情報のキズについて確認をして、そのときの状況やその後の経緯などを整理して伝える。あわせて、今後はそのようなことがないように気をつけることも伝える。
もちろん、キズのていど加減にはよりますが(大きなキズだと弁解がきかないことはある)、銀行に理解をしてもらえることがあります。理解をしてもらえれば、融資をしてもらうこともできます。
したがって、社長の個人信用情報については、隠さないほうがいいこともあると覚えておきましょう。そのあたり、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
社長の経歴
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」。3つめは「社長の経歴」です。
会社が融資を受けるにあたって、銀行からは、社長の経歴書を求められることがあるでしょう。はじめて取引をする銀行であれば、とくにです。
銀行が、社長の経歴を知ろうとするのは、「社長の素性」を知るためということもありますが。さらには、「会社の行く末」を占うためでもあります。
たとえば。社長の経歴を見たときに、いまの会社の商売につながるような経歴を積み上げているとしたら。商売に対する理解も深く、この先も成長を期待できそうだなぁ、と感じられることでしょう。
いっぽうで。社長の経歴を見たときに、いまの会社の商売とは関係がなさそうなことが多い、そのうえ、短期間のあいだに職を転々としている… という場合にはどうでしょう?
いまの商売がうまくいくかは不安ですし、この先も商売をすぐにとっかえひっかえするような、胆力のない行動をしそうだなぁ。だったら、融資は控えたほうが良さそうだ、と銀行は考えるかもしれません。
ですから、「社長の経歴」が、会社の銀行融資にも影響することは覚えておきましょう。
そのうえで、「社長の経歴」を銀行に対して積極的に伝えることも検討すべきです。
さきほど、「いまの会社の商売とは関係がなさそうなことが多い」という社長の経歴を例に挙げました。パッと見では、関係なさそうな場合でも、実は関係があることも少なくありません。
たとえば。飲食業の会社の社長に、梱包材料卸の会社に勤めていた経歴があったとして。一見すると飲食業とは関係がないようですが、実は、卸先は飲食店ばかり(テイクアウト用の梱包材料)ということはありえます。
飲食店ばかりに出入りをしていたので、飲食店の経営やオペレーションなどについて、現場から見聞きして身につけている。というのであれば、いまの会社の商売(飲食業)に活きることでしょう。
また、業種業態的にはまったく関係のない経歴であったとしても、管理職に就いていたのであれば。社長に必要な「マネジメント能力」を身につけた、ということもあるでしょう。
ですから、「とおりいっぺんの経歴書」では、ほんとうの意味での経歴を伝えることはできません。結果として、融資を受けにくくしてしまうことさえあります。
融資が受けやすくなるように、「社長の経歴」は積極的に開示するようにしましょう。経歴書を充実させるという方法もありますし、折に触れて、銀行担当者に話をしてみるという方法もおすすめです。
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まとめ
会社が受ける融資なのに、社長個人のことまで聞かれるなんて気持ち悪い。答えたくない。と、思われるかもしれませんが。
会社の銀行融資で隠さないほうがいい「社長個人の情報」があることを理解しておきましょう。むしろ、積極的に開示することで、融資が受けやすくなることがあります。
- 社長個人の資産や収入
- 社長の個人信用情報
- 社長の経歴