「銀行の担当者が、ウチの商売・商品をちっともわかってくれないんだよね…」という社長のハナシを見聞きします。
そこで、銀行員が自社の商売・商品をわかってくれない「理由」と「対策」について、お話をしていきます。
嘆いてばかりでは、はじまらない。
会社が銀行から融資を受けるにあたっては、「銀行に、自社の商売・商品をわかってもらいましょう」というハナシがあります。
商売の良し悪しがわからなければ、融資先の将来性をはかれず、銀行は融資をしにくくなるから。商品(あるいはサービス)がわからなければ、どこにおカネが必要なのか・どれくらいのおカネが必要なのかがわからず、やはり融資をしにくくなるからです。
この点で。「銀行の担当者が、ウチの商売・商品をちっともわかってくれないんだよね…」という社長のハナシを見聞きします。
わかってくれないのはツラいところではあるけれど、ただ嘆いていたのでは融資が受けにくくなるばかりです。
そこでまずは、銀行員が「ウチの商売・商品をわかってくれない…」の理由を理解するようにしましょう。おもなところでは、次の3つです↓
- 決算書を見てもわからないから
- 担当先件数が多いから
- いまさら聞くことはできないから
これらの理由をふまえて、どうしたら銀行員に自社の商売や商品をわかってもらえるか? の「対策」まで押さえておきましょう。
このあと順番にお話をしていきます。
銀行員が「ウチの商売・商品をわかってくれない…」の理由と対策
《理由1》決算書を見てもわからないから
銀行員が「ウチの商売・商品をわかってくれない…」の理由、1つめ。それは、「決算書を見てもわからないから」です。
融資を受けている会社であれば、決算書一式を銀行に渡していることでしょう。だから、銀行は自社の商売や商品のことをわかっているはずだ。と、考えている社長がいます。
たしかに、決算書には「商売や商品に関する情報」が掲載されてはいるものの。「商売や商品そのものズバリな情報」は掲載されていない、と言ってよいでしょう。
商売について言えば、「業種(〇〇の製造業、〇〇の小売業とか)」ていど。商品について、細かく記載されている決算書はほとんどないはずです。それだけの情報では、「商売・商品をわかっている」とは言えませんよね。
会社が融資を受けやすくするためにも、銀行にわかっていてほしいこととは? 端的に言えば、「なにを・だれに・どうやって売るか」です。
同じ「小売業」の会社だとしても、なに(商品)を扱っているかの違いがあります。同じ商品だとしても、だれ(取引先)に売るかの違いもあります。仮に同じ商品・同じ取引先だとしても、どうやって売るか(販路)の違いもあるでしょう。
このあたりの違いが、会社の強みとなって、銀行は会社の商売の良し悪しをはかりやすくなります。ひいては、融資のしやすさに影響するところです。
ところが。「なにを・だれに・どうやって売るか」は、決算書だけではわかりにくいし、わからない。だから、「ウチの商売・商品をわかってくれない…」となるわけです。
では、どうしたらよいか? 対策として、「商流図」をつくって、銀行に説明をするのがおすすめです。
商流図とは、自社の商売の流れ・商品の流れを図にしたもの。言い換えると、ビジネスモデルを図にしたものが「商流図」になります。たとえば、こんな感じです↓
決算書に加えて、商流図があると。銀行は「なにを・だれに・どうやって売るか」が格段にわかるようになります。融資を検討しやすくなる。会社としては、融資が受けやすくなります。
というわけで。決算書を見ればわかるだろう、ではなく。商流図をつくって、銀行に説明するようにしてみましょう。商流図について、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
《理由2》担当先件数が多いから
銀行員が「ウチの商売・商品をわかってくれない…」の理由、2つめ。それは、「担当先件数が多いから」です。
つまり、銀行員はそれぞれ、担当している融資先件数が多い。忙しい。だから、なかなか融資先のことを把握しきれない。そういうことです。
さきほどお話をしたとおり、商売・商品については決算書を見ているだけではよくわかりません。そこで、社長から聞くなどしなければならないわけですが、なかなかその時間もない…
実際に、「担当先件数が 50件以上あってタイヘンだ」と聞いたこともありますし。100件を超える銀行員もいるとも聞きますから、たしかにタイヘンだろうということです。
銀行員の数は減少傾向にありますから、今後もタイヘンな状態は続くものと思われます。
では、どうしたらよいか? 対策として、ついでの機会に話をするのがおすすめです。
具体的には、決算書を渡すとき、決算報告をするとき。決算が終わると、銀行から「決算書をください」と言われますよね。そこで、商売・商品のことを伝えられるとよいでしょう。
あらためて、話をしようとすると銀行員もタイヘンでしょうから。決算書を渡すときに、「ついで」に伝えることで負担を軽減してあげよう、というわけです。
ちなみに。決算書を渡すときには、銀行員に来てもらうのではなく、会社の方から銀行(支店)に出向くようにしましょう。
すると、いつもの担当者だけではなく、その上司や融資審査の担当者、場合によっては支店長にも同席してもらうことができます。そこで、自社の商売・商品の話を伝えることができれば、同席した銀行員みなにわかってもらえますから、より融資が受けやすくなるはずです。
融資の決裁をする支店長にしても。担当者からの又聞きしかしたことのない会社と、実際に社長と会って話をした会社と、どっちが融資をしやすいかと言えば後者でしょう。
会社のことがよくわからなければ、「よくわからないから融資はやめておこう」ということはあるはずです。
なお、決算報告の場に、さきほどお話をした「商流図」を持参するのも効果的です。1年たてば、商流に変化が起きていることもあるでしょうから、毎年決算のタイミングであらためて説明すれば、銀行の理解もより深まります。
[ad1]《理由3》いまさら聞くことはできないから
銀行員が「ウチの商売・商品をわかってくれない…」の理由、3つめ。それは、「いまさら聞くことはできないから」です。
良い会社に融資をしたい、安全な会社に融資をしたいとの考えから、銀行員のほうでも、「会社の商売・商品について知りたい」とは考えています。
けれども、「いまさら聞けない」ということはあるものです。その会社の担当になってから、だいぶたっていれば。いまさら「商売・商品について教えて下さい」とは言いづらいですよね。
また、担当が変わったばかりだとしても、「前担当者から聞いてないの? 引き継ぎしてないの?」と社長から文句を言われても困ります(実際、あまり聞けていないようですが…)。前担当者を含めてだいぶたっていれば、やっぱり銀行はいまさら聞きにくいのです。
このまま放っておけば、当然、銀行は会社の商売・商品のことがよくわからず。融資がしにくくなる。会社としては、融資が受けにくくなってしまいます。
では、どうしたらよいか? 対策として、会社のほうから話をするのがおすすめです。銀行のほうから聞きにくいのであれば、会社のほうから話をする。
この点で。話をするだけではなく、「現場・現物」を見せるのが効果的です。
「現場」とは、店舗や工場、倉庫、事務所など。それらを案内しながら話をします。「現物」とは、商品やサービスです。実際に商品を見てもらったり、可能であればサービスを体験してもらったり。ただ話をするよりも、銀行員の理解も深まるはずです。
銀行員もまた、「現場・現物を見たい」と考えているものですが、ここでも「いまさら言えない」みたいなことはあります(そう聞いたこともあります)。
ですから、「銀行がなにも言わないからなにもしない」ということではなく。会社のほうから声をかけるようにしてみるとよいでしょう。銀行の担当者が替わったときなどは良いタイミングです。
銀行に、現場・現物を見てもらうときのポイントとして、こちらの記事も参考にどうぞ↓
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まとめ
「銀行の担当者が、ウチの商売・商品をちっともわかってくれないんだよね…」という社長のハナシを見聞きします。
なぜわかってくれないのか? その「理由」を理解したうえで、「対策」まで押さえておきましょう。銀行員に自社の商売・商品をわかってもらえるかどうかは、「融資の受けやすさ」にかかわる重要なポイントです。
- 決算書を見てもわからないから
- 担当先件数が多いから
- いまさら聞くことはできないから