銀行対応・銀行融資において、試算表のおもな目的は「現状を伝える」ことだと言えます。
とはいえ、そればかりではない。試算表の使いどころはいろいろありますよ、というお話をしていきます。
試算表にできることはいろいろある。
銀行から求められて、「試算表」を提出することがあるでしょう。あるいは、会社のほうから自主的に提出することもあるでしょう。
そのおもな目的は、「現状を伝える」ことだと言えます。試算表は、いま現在の財務状況をまとめた書類だからです。
とはいえ、試算表にできることは「現状を伝える」ことばかりではありません。
というわけで。銀行対応・銀行融資に効く、試算表の使いどころをお話していきます。具体的には、次の5つです↓
- 黒字月→赤字月
- 赤字決算→黒字転換
- 決算日近くでの借入申込時
- 雑勘定の精算時
- 計画書の提出時
試算表について、これらの使いどころを知っていれば、銀行融資がいっそう受けやすいものとなるはずです。
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行対応・銀行融資に効く!試算表の使いどころ5選
黒字月→赤字月
試算表は、基本的に「月次」でつくられます。1月分、2月分、3月分… と毎月つくられていくものです。
その毎月の試算表を見たときには、「黒字(利益がプラス)の月」と「赤字(利益がマイナス)の月」とがあるでしょう。
銀行から融資を受けたいのであれば、「黒字の月」に借りるべき。というのはだいじょうぶですよね。決算書が黒字を求められるように、試算表もまた黒字を求められます。
決算書にしても試算表にしても、赤字の会社は銀行からすると心配なのです。
この点で。試算表の使いどころは「黒字月→赤字月」のタイミングであることを覚えておきましょう。たとえば、「1月は黒字だった(黒字月)、2月は赤字になりそうだ・なるかもしれない(赤字月)」というタイミングです。
赤字になれば融資は受けにくくなるのですから、会社は「黒字月→赤字月」になる前に、銀行に融資を依頼する。さきほどの例で言えば、1月の試算表ができた段階で依頼する。少なくとも、試算表が赤字になる前に依頼する。
そのタイミングをはかるのに、試算表を使いましょう。
試算表をつくるのが遅れていたり、そもそもつくってすらいないと、タイミングをはかることができません。気がついたら決算で、しかも決算書が赤字。融資が受けられない・受けにくい… ということにもなりかねません。
試算表を毎月つくるのは基本の「キ」であり、つくるのであれば、「できるだけ速くタイムリーに」を心がけましょう。
赤字決算→黒字転換
銀行は、融資審査の際に「決算書の良し悪し」を重視します。決算書が良ければ融資をしやすいし、悪ければ融資がしにくくなる。ということは、広く知られているところでしょう。
ではもしも、決算が赤字になってしまったら。次の決算までの1年間、銀行からは「赤字の会社」と見られてしまうのか? と言えば。そうなります。繰り返しになりますが、銀行は決算書を重視しているからです。
だからこそ、会社は「なんとしても黒字」を達成すべきだと言えます。
とはいえ、赤字は避けられない… そんなときにはどうすればいいか。次の決算までの試算表で、黒字をアピールしてみましょう。なにもないよりは、銀行から評価をしてもらえるはずです。
たとえば、3月決算の会社が、決算で赤字を出してしまった。決算書が赤字、というケース。4月以降のどこかで黒字転換しているのであれば、その試算表を銀行に提示したうえで融資の申込みをする。
試算表を提示せずに融資の申込みをするよりは、融資を受けられる確率が上がるはず。そういうことです。
また、いまの試算表では黒字転換まではしていないにしても、前年同月比でプラスに転じている。このままいけば、近いうちに黒字転換できる。このようなケースでも、いまの試算表を提示して「前年同月比プラス」をアピールしてみましょう。
やはり、融資を受けられる確率が上がるはずです。
決算日近くでの借入申込時
たとえば、12月決算の会社が 11月くらいに「どうしても融資を受けたい」と考えているとして。銀行に融資を申し込むと、「次の決算書を見てから」言われることは多いものです。
銀行が決算書を重視することは、再三お話をしています。決算が近いのだから、決算書の良し悪しをみて融資の判断をしたい。これが銀行の考え方であることを覚えておきましょう。
とはいえ、どうしてもいま融資を受けたいんだ! ということだってあるかもしれません。そんなときには、試算表です。
いまが 11月なのであれば、その前月である 10月分までの試算表をつくって銀行に提示する。その試算表を「決算書の替わり」として見てもらいます。
ただし、「決算書の替わり」として見てもらうためには、決算書と同じくらいの「精度」で試算表をつくらなければいけません。
けして少なくはない試算表が、「精度が低くてアテにならない」ことを銀行は知っています。試算表では黒字だったのに、いざ決算書ができたら大赤字… ということは、なんども目にしているのです。
だから、ただただ試算表を提示するだけではアピール不足です。ウチの試算表は、精度が高いんだ! というアピールもできるようにしておきましょう。
そのあたり、くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ↓
雑勘定の精算時
銀行で使われる言葉のひとつに、「雑勘定(ざつかんじょう)」というものがあります。
雑勘定とは、具体的に言うと、「仮払金」や「貸付金」「立替金」などの勘定科目です。こういった勘定科目が決算書に掲載されていると、経理処理に問題があるケースが多いことから、銀行は雑勘定を嫌います。
たとえば、仮払金。ほんとうは「費用」なのだけれど、利益を水増しするために仮払金として処理していたり。実は社長が個人的に使ったおカネなのだけれど、ひとまず仮払金として処理していたり。
いずれにせよ、「不健全・不正確」な経理処理であり、社長の経営姿勢を疑われるところでもあります。だから、決算書に「雑勘定」を残してはいけません。
とはいえ、どうしても残ってしまった。気がついたら残っていた(決算書をちゃんと見ていなかった…)、ということはあるものです。そんなときには、やはり試算表を使いましょう。
決算書に仮払金が残っていたのであれば、その後に仮払金を解消する。解消された試算表を銀行に提示することで、「もうだいじょうぶ」をアピールします。
もちろん、「不健全・不正確」の過去を消し去ることまではできませんが、少なくとも、いま解消していることは評価してもらえるでしょう。
場合によっては、試算表に加えて「総勘定元帳」も提示して、より明確に解消の経緯を示すのも効果的です。そこまでするの? と思われるかもですが。そこまで疑われているのが雑勘定です。
計画書の提出時
計画書(事業計画書、経営計画書)を、銀行に提示する会社もあるでしょう。計画書をつくっている会社は少ないこともあり、計画書を提示するだけでも、銀行からプラスの評価をもらえる一面があります。
そのいっぽうで、銀行は計画書を疑っているものです。「ほんとうに、このとおりになるの?絵に描いた餅じゃないの?」と疑っているものです。根拠もなく右肩上がりの売上計画など、実際に絵に描いた餅であることは少なくありません。
ですから、会社が計画書を提示するのであれば、ただ提示するだけでは不足です。なにをすればいいか? ここでもまた、試算表になります。
銀行に提示した計画書について「実際に達成できた」ことを、その後の試算表でもって示すわけです。「計画では売上 2,000万円、利益 150万円でした。実際には売上 2,050万円、利益 160万円で計画を上回っています」といった具合です。
計画に対して実際が上回っている、上回ることができなくても計画に近い実績は出ている。これを試算表で示すことができれば、計画書に対する疑いも晴れますよね。
試算表を定期的に提示し続ければ、より疑いは晴れるでしょう。むしろ、「この会社の計画書は信頼できる!」との評価につながるはずです。
計画書はつくるけど、つくっただけ。つくっただけで、その後の予実管理(計画と実績との差異管理)はしていない、という会社は多いものです。そういう会社といっしょにされないように、試算表を活用していきましょう。
銀行融資におすすめのメニュー
モロトメジョー税理士事務所では、「銀行融資のサポート」をするメニューをそろえています! 当事務所は経営革新等支援機関の認定を受けています。
銀行融資の記事まとめページ
銀行融資入門セミナー
銀行融資・財務のコンサルティング
銀行融資の個別相談
まとめ
銀行対応・銀行融資において、試算表のおもな目的は「現状を伝える」ことだと言えます。
とはいえ、そればかりではありません。試算表の使いどころはいろいろあることを覚えておきましょう。銀行融資がいっそう受けやすいものとなるはずです。
- 黒字月→赤字月
- 赤字決算→黒字転換
- 決算日近くでの借入申込時
- 雑勘定の精算時
- 計画書の提出時