会社が銀行融資を受けることについて。メインバンクをつくりましょう、とは言うけれど。それは、なぜなのか?
ということで。会社にはメインバンクが必要だと言える理由について、お話をしていきます。
メインバンクをつくりましょう、とは言うけれど。
会社が銀行から融資を受けることについて。「メインバンクをつくりましょう」という話があります。文字どおり、「メインの取引銀行」をつくりましょう、ということです。
でも、なんでメインバンクをつくるのか? メインバンクをつくることでなにかメリットがあるのか? あるいは、メインバンクがないとデメリットがあるのか? と、思われるかもしれません。
そこで、会社にはメインバンクが必要だと言える理由について、お話をしていきます。おもに、こちらの5つです↓
- 不測の事態に融資を受けやすい
- 赤字のときでも融資を受けやすい
- アドバイスが期待できる
- 金利が低い
- リスケを進めやすい
それではこのあと、5つの理由を順番に見ていきましょう。
会社にはメインバンクが必要だと言える5つの理由
【理由1】不測の事態に融資を受けやすい
不測の事態として、2つの例を挙げてみます。ひとつは東日本大震災、もうひとつは新型コロナウイルスです。いずれも予測不能であり、まさに青天の霹靂… という点で共通しています。
結果として、なにが起きたのか?
多くの会社が、融資を求めて銀行に殺到しました。不測の事態により、事業は大きなダメージを受け、資金繰りが厳しくなったからです。
とはいえ、銀行にも「限界」があります。おカネが必要だからといって、ただただ融資をするわけにはいきません。相応の手続き・相応の審査は必要ですから、手間と時間がかかります。
けれども、あまりに多くの会社となれば、手続きも審査も追いつかない。どこかで限界がやってくる。すると、「優先順位」を付けざるを得なくなります。
では、どこから優先するか? 日ごろから懇意にしている会社を優先、というケースが多かったようです。
日ごろから懇意にしていれば、その会社のことはよくわかっていますので、手続きや審査をするにも「スムーズ」です。また、懇意にしている会社をよりだいじにしよう、という「思い」もあるでしょう。
いずれにせよ、懇意にしている会社は銀行から優先されたわけです。懇意にしているとは、「その銀行をメインバンクにしている」ということ。
つまり、メインバンクがある会社は、そのメインバンクから速く融資を受けることができた。一刻を争うような不測の事態にあっては、とても大きなポイントでしょう。
【理由2】赤字のときでも融資を受けやすい
会社が赤字のときには、融資が受けにくいものです。貸したおカネを返してもらえる可能性が低くなる。銀行はそのように考えるからですね。
それでも、メインバンクは他の銀行に比べて、会社の事業内容・将来性をより深く理解していますので。決算書が赤字だから融資をしない、という「機械的・画一的」な対応にはなりにくいものです。
これを、赤字になっても融資を受けられる可能性が高まる、と見れば。やはり、会社にとってメインバンクは必要だと言えるでしょう。
長く会社を続けていれば、いつもいつも黒字とはいかず。赤字のときもあるはずです。そのときのことも考えて、会社はメインバンクをつくっておくことが大切になります。
なお、メインバンクが赤字でも融資を検討する理由として、「地域の悪評を避けるため」ということもあるでしょう。
ちょっと赤字だからといって融資を断ると、「貸し渋りだ! 貸し剥がしだ! ひどい銀行だ!」と、悪評が立ってしまいます。だから、あまりカンタンに融資を断ることはできない。
これは、地域に根ざして商売をしている地方銀行や信用金庫にはデメリットです。
いっぽうで、全国展開をしているメガバンクであればどうでしょう。地方銀行や信用金庫ほどには、悪評を気にしなくてもいいですよね。つまり、メガバンクは、ドライに融資を断ることができます。
メインバンクにするなら、地方銀行や信用金庫のほうが良さそうだなぁ。と、考えるべきところです。
[ad1]【理由3】アドバイスが期待できる
銀行は、その融資先の会社が「順調」であることを望みます。順調でなければ、貸したおカネを回収できないし、順調であれば、もっと融資がしやすくなるからですね。
その望みはメインバンクほど大きく、会社に対しての「アドバイス」というかたちであらわれることがあります。
経営的アドバイスや財務的アドバイス。このあたりは、金融庁が銀行に要求しているものでもあり、今後はますます増えてくるものと考えられるところです。
とはいえ。本来的には、銀行員はアドバイスをしにくいものであることは理解しておいたほうがよいでしょう。とくに、業績が悪い会社ほど、アドバイスには躊躇するものです↓
第三者からアドバイスをもらえるのは、会社にとってメリットだと考えるのであれば。アドバイスをもらいにくいのはデメリットです。
この点で。より多くのアドバイスをもらうためにも、会社にはメインバンクが必要だと言えるところでしょう。
【理由4】金利が低い
メインバンクが、他の銀行と比べて違うところとして。まずは、融資残高が多いことが挙げられます。
融資残高が多いということは、ボリュームがある分だけ貸出金利を下げる余地があるということです。ボリュームがあれば、金利を下げても金額は大きくなりますので。
また、メインバンクは預金残高も多いものです。融資を受けている会社から多くの預金をあずかっていれば、それは担保のようなもの。やはり、金利を下げる余地が生まれます。
場合によっては、会社が不動産担保を提供していることもあるでしょう。これもまた金利を下げる要素になります。メインバンクは、他の銀行よりも担保をとっていたりもするものです。
さらに言えば、メインバンクは融資先について、多くの情報を持っています。預金口座内の決済取引情報、事業内容・将来性、商品力、経営者の資質などなど。決算書の表面的な数字だけではなく、他の情報を加味することで、より低い金利を設定することもできるでしょう。
こうして、メインバンクからの融資金利が下がれば、それを見た他の銀行も下げざるをえない状況になります。メインバンクをもつことのメリットです。
この点で。メインバンクがあるのに金利が下がらないのは、問題があると言えます。
メインバンクでさえ金利を下げられないほど、会社の業績が悪すぎるか。あるいは、会社がメインバンクに対して、金利引下げのプレッシャーをかけられていないのか。いずれも問題です。
なお、銀行の規模によって、金利には差があることは覚えておきましょう。メガバンクがいちばん低く、ついで地方銀行。いちばん高いのは信用金庫・信用組合です。
したがって、信用組合に対してメガバンクや地方銀行並の金利を求めるのは、ムチャな話になります。
【理由5】リスケを進めやすい
あまり考えたくないことではありますが、「リスケ(返済猶予)」の場面についても考えておきましょう。
会社は、どうしても返済ができない… となれば、銀行に対してリスケをお願いすることになります。会社の存続を考えれば、リスケ自体はしかたのないことです。
実際に、リスケのお願いのほとんどは銀行に受け入れられています。銀行としても、返済してもらえずに会社が潰れてしまうよりは、返済してもらえる可能性を残したいのです。
このリスケについて。メインバンクに対してはとくに、協力的な対応を期待できます。メインバンクには、「メインバンクとして会社を支援する」との役割があるからです。
これをふまえて。リスケをしなければいけないときには、まずはメインバンクからリスケのお願いをしましょう。まずはメインバンクの了承を取り付けてから、他の銀行にもリスケのお願いをする流れです。
これが逆になると、メインバンク以外の銀行からは「メインバンクはなんと言っていますか?」と聞かれることになります。メインバンクがリスケをしないなら、ウチだってできないという考えです。話が前に進みません。
ではもし、メインバンクと呼べる銀行がなかったらどうでしょう?
どの銀行も「様子見」になりかねませんよね。最終的にはリスケできるかもしれませんが、より多くの時間と手間がかかる可能性が高まります。急ぎの状況であればあるほど命取りです。
というわけで。いざというときのためにも、会社はメインバンクをつくっておくべきだと言えるでしょう。
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まとめ
銀行から融資を受けるのであれば。会社にはメインバンクが必要だということ、そして、その理由について押さえておきましょう。
メインバンクをつくることにはメリットがあり、メインバンクがないとデメリットがある、ということがわかります。
- 不測の事態に融資を受けやすい
- 赤字のときでも融資を受けやすい
- アドバイスが期待できる
- 金利が低い
- リスケを進めやすい