融資を受けている銀行の担当者が異動になることがあります。では、前担当者から新担当者への引き継ぎがじゅうぶんかと言うと。実はそうでもありません。
そこで。引き継ぎの不十分を補うために、銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セットについてお話をしていきます。
引き継ぎは不十分、が前提。
会社が銀行から融資を受けていると、銀行担当者が異動になることがあります。数年に1回の異動が標準的であり、ようやく慣れたころに銀行担当者が変わってしまう… というのはよく聞くハナシです。
そんな銀行担当者の異動について、気をつけるべきことがあります。それは、「引き継ぎは不十分だ」ということ。前担当者から新担当者への引き継ぎが、不十分なまま異動してしまう。
こんなことを言うと、銀行から怒られそうですが。実際、多くの銀行で起きている「現象」でもあります。
そもそも、銀行の「辞令」の交付は、異動前のギリギリらしく(1週間前とか)。担当している融資先数(数十〜数百)をじゅうぶんに引き継ぐだけの時間がない。ゆえに、引き継ぎが不十分なのは、しかたのないことでもあります。
結果として、新担当者は「なにをいまさら」というようなことを聞いてくるし、「前担当者には伝えていたのに」ということを把握していなかったり… はあるものです。
したがって、銀行担当者が異動になったときには、「引き継ぎは不十分」であることを前提に考えておいたほうがいいでしょう。不十分を補うための算段をしておくのがいいでしょう。
具体的には、次の3つの書類を新担当者に渡すことです↓
- 銀行対応必須の3帳票
- 会社概要のまとめ
- ローカルベンチマーク
これらの書類を渡すことができれば、引き継ぎの不十分をだいぶ補うことができるはずです。それではこのあと、3つの書類について順番に見ていきましょう。
銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セット
【書類1】銀行対応必須の3帳票
銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セット、1つめ。それは「銀行対応必須の3帳票」です。3帳票って、なんだそれ? と思われるかもしれませんが、具体的にはこちらになります↓
- 試算表
- 資金繰り表
- 借入金一覧表
これらは、わたしが考える「銀行対応必須の3帳票」です。こららがそろってはじめて、有効な銀行対応ができる。そのための帳票になります。それぞれの帳票について、くわしくはこちらの記事をどうぞ↓
それはそれとして。銀行担当者の異動にあたり、なぜこれらの帳票をすぐに渡す必要があるのか?
それは、「管理体制が整っていること」を示すためです。ウチの会社は、いつでも3帳票を提示できるようになっている、ということを示すためです。
銀行担当者は、担当先から融資の依頼を受けた際、銀行内で審査をするのに必要な「稟議書」を作成することになります。その稟議書を作成するのに役立つのが、3帳票です。
3帳票があるのとないのとでは、稟議書をつくる際の手間と時間が大きく異なります。3帳票があれば、稟議書を速くラクに準備できる。3帳票がなければ、時間も手間もかかってタイヘン。
では、銀行担当者が「取り組みやすい」と考えるのは、3帳票がある会社とない会社のどちらでしょう?
言うまでもありませんよね。3帳票がそろっている会社であれば、稟議書を速くラクにつくれるのですから、そういった会社の融資案件から取り組みたいと考えるはずです。
銀行員にもノルマがありますから、できるだけ取り組みやすい案件を優先するのは、当たり前だと言えます。
そこで、銀行担当者が融資案件に取り組みやすいように、稟議書の準備がしやすいように。会社は、3帳票を渡すことが大切になります。
ですから、銀行担当者が異動になったときには、なるべくすぐに3帳票を渡すことで、「融資に取り組みやすい会社だ」と印象づけるのがよいでしょう。
[ad1]【書類2】会社概要のまとめ
銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セット、2つめ。それは「会社概要のまとめ」です。会社概要のまとめとは、文字どおり、会社の概要をまとめた書類になります。
具体的には、次のような項目をA4用紙数枚ていどにまとめましょう↓
- 会社名
- 所在地
- 電話番号、FAX番号
- WEBサイトのURL
- 代表者名
- 事業内容、取り扱い商品・サービス
- 設立年月日
- 会社沿革
- 資本金
- 主要株主
- 役員一覧
- 従業員数
- 主要取引先
- 関連会社 など
こうして見ると、「いまさら?」と思われるかもしれませんが。冒頭でもお話をしたとおり、いまさらなことが引き継がれていないのですから、あらためて伝えましょう。
また、以前に伝えていたとしても、その後、変更があった情報があるかもしれません。その変更を伝えていないのであれば、銀行が持っている情報は古いまま… ということになります。
これを機会に、最新の情報を伝える意味でも、会社概要のまとめを渡すとよいでしょう。
とはいえ。これらの項目については、「WEBサイトに載っているんだから、それを見てもらえばいい」と思われるかもしれません。たしかに、そのとおりです。
けれども、銀行員各自のネット利用が制限されている銀行もあると聞きます。すると、閲覧はもちろん、プリントアウトもままならず。必要な情報は「紙」で渡してあげるのが、無難であり親切でもあります。
紙ということで言えば。会社案内や商品案内のパンフレットは、あれば渡すのがよいでしょう。手間とおカネとをかけてつくっているものですから、より説得力が増します。また、写真や図などが掲載されていれば、よりわかりやすくもなります。
会社概要のまとめを渡すのはカンタンなようでいて、できている会社は意外と多くありません。銀行担当者が異動になったときすぐに渡せれば、新担当者の印象にも強く残るはずです。
【書類3】ローカルベンチマーク
銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セット、3つめ。それは「ローカルベンチマーク」です。
ローカルベンチマーク(通称・ロカベン)とは、経済産業省が提供しているツール(Excelファイル)。会社の経営状態の把握を行うツールとされています。
内容は、「数字」に関する財務情報、「数字以外」の非財務情報とに分かれ、さまざまな視点から会社の経営状態を把握・検討することが可能です。
このうち「財務情報」については、3期分の決算書情報を入力することで、6つの財務指標を中心とした「財務分析」の結果が出力されます。同業他社との比較についてもわかるため、自社の「特徴」を数字の面から明らかにすることができます。
くわしくはこちらの記事をどうぞ↓
いっぽうの「非財務情報」では、まず、業務フロー(いわゆるバリューチェーン)と商流図を作成します。
業務フローによって、商品・サービス提供の「過程」と、その過程のどこに自社の「特徴(とくに強み)」があるかを明らかにできます。
商流図は、仕入先や協力先(外注先)、販売先やエンドユーザーを図解することで、自社の商売・自社の位置づけを明らかにできます。
これら、業務フローと商流図は、銀行が「融資先の事業」を理解するうえで欠かせない情報です。どれも、決算書や試算表といった「数字」を見ていてもわからないことだからです。
にもかかわらず、業務フローや商流図を銀行に提供できている会社は少なく。ゆえに、銀行担当者は融資に取り組むとき(稟議書を書くとき)には苦労します。
その苦労を軽減し、より積極的な支援をしてもらうためにも、ローカルベンチマークを活用していきましょう。
また、「非財務情報」には、「4つの視点」という情報も付属しています。
具体的には、経営者に関する情報(経営理念や後継者の有無など)、事業に関する情報(強み、弱みなど)、企業を取り巻く環境・関係者に関する情報(市場動向や各種指標など)、内部管理体制に関する情報(組織体制、事業計画など)の4つ。これらの情報を「文字」でまとめていきます。
くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
やはり、「数字」だけを見ていてもわからないところであり、銀行にとっては役立つ情報になるはずです。はじめてつくるのには少々時間と手間はかかりますが、社長自身も作成を通じて、あらためてアタマの整理ができるのではないでしょうか。
いちどつくれば、そのあとは必要に応じて情報を更新するだけですから、その後のメンテナンスはそれほどタイヘンなものでもありません。
銀行担当者が異動になったときには、すぐに渡せる状態にしておくとよいでしょう。
まとめ
融資を受けている銀行の担当者が異動になることがあります。では、前担当者から新担当者への引き継ぎがじゅうぶんかと言うと。実はそうでもありません。
そこで。引き継ぎの不十分を補うために、銀行担当者が異動になったらすぐに渡したい書類3点セットを準備しておきましょう。
- 銀行対応必須の3帳票
- 会社概要のまとめ
- ローカルベンチマーク