社長が決算書で見るべき3つの勘定科目

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目

決算書は、いったいどこを見ればいいのやら… と悩む社長は少なくないようです。

そこで、社長が決算書で見るべき3つの勘定科目について、お話をしていきます。

目次

はじめから欲張るのもタイヘン。

社長たるもの、決算書を見るなど朝飯前。とはいかず、「いったいどこを見ればいいのやら…」と、決算書の見方に悩む社長は少なくないようです。

そこで、社長が決算書で見るべき3つの勘定科目について、お話をしていきます。たった3つでいいの?と思われるかもしれませんが。見方がわからず悩んでいるのに、はじめから欲張るのもタイヘンです。

まずは、だいじなところに的をしぼって、見ていくことにましょう。具体的には、次の3つになります↓

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目
  1. 税引後利益
  2. 現金預金
  3. 純資産

これら3つの勘定科目について、このあと順番に見ていきます。

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目

税引後利益

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目、1つめ。それは、「税引後利益」です。正確に言うと、「当期純利益」。損益計算書のいちばん末尾にあります。

その「当期純利益」は、法人税を支払ったあとの利益。つまり、税引後の利益です。言い換えると、会社が「1年のあいだに増やしたおカネ」ということになります。

損益計算書は、売上高にはじまり、そこから各種の費用をマイナスして、さいごに法人税もマイナスして、税引後利益を計算する書類です。もし、税引後利益が 500万円であれば、会社は1年のあいだに 500万円のおカネを増やしました。と、いうことになります。

損益計算書の結論として、税引後利益を押さえておきましょう。

税引後利益は、「1年のあいだに増やしたおカネ」だと言いました。とはいえ、そのおカネをすべて自由につかえるわけではありません。なぜなら、会社は税引後利益のなかから、借入金の返済をしなければいけないからです。

返済は費用ではないので(利息は費用です)、返済を続けるためには「年間返済額<税引後利益」であることが重要になります。逆に「年間返済額>税引後利益」になるようだと、会社は手元の預金を取り崩しながら返済しなければいけません。

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したがって、社長はまず「年間返済額<税引後利益」かどうか? を確認する必要があります。年間返済額を超えるような税引後利益を目指す、ということです。

そのうえで、「税引後利益ー年間返済額」の金額が、会社が自由につかえるおカネになります。設備投資や研究開発、新規事業のための原資は「税引後利益ー年間返済額」だと理解しておきましょう。

でも、「税引後利益ー年間返済額」だけでは足りないよなぁ… というときには、銀行融資が選択肢の1つになります。その銀行融資で借りられる金額の目安は「税引後利益×10ー既存の借入金残高」です。

税引後利益が 500万円で、すでに 3,000万円の借入金があるならば。「500万円×10ー3,000万円」で、あと 2,000万円くらいが借りられる金額の上限かなぁ、と見ることになります。

ですから、「銀行融資を受けるためには、税引後利益が必要なんだ」ということを忘れてはいけません。

税金を払いたくないばかりに、利益を抑えようとする社長がいます。結果として、税引後利益が少なくなりますから、銀行融資は受けにくくなる。大きなデメリットです。

厳密には、税引後利益+減価償却費

1年のあいだに増やしたおカネが、税引後利益だという話をしました。厳密には、「税引後利益+減価償却費」です。減価償却費は費用ではあるものの、おカネの支払をともなわないから、というのがその理由になります。

減価償却費について、くわしくはこちらの記事もどうぞ↓

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現金預金

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目、2つめ。それは、「現金預金」です。貸借対照表の先頭にあるのが、現金預金です。文字どおり、現金や預金といったおカネがいくらあるのか。

ここでまず確認をしておきたいのは、じゅうぶんなだけの額の現金預金かどうか? です。「じゅうぶんなだけ」の定義はともかく、現金預金の額が少なく、現金預金が足りなくなってしまえば、会社は倒産してしまいます。

さきほど見た「税引後利益」がいくらあろうとも、おカネが足りなくなればおしまい。いわゆる「黒字倒産」です。では、どれくらいの額の現金預金があればいいのか?

ひとつの目安が、平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の2ヶ月分以上です。それくらいあれば、すぐに資金ショートするようなことはあまりないでしょう。

これが、平均月商の1ヶ月分を割り込むような現金預金だと、入金と支払のタイミングがすこしズレただけでも資金ショートが起きやすくなるものです。

したがって、社長はいつも、現金預金の残高を「把握する」ことが重要になります。なお、ここで言う「把握」は、いま現在の残高ばかりではなく、将来の残高も含めてです。

近い将来、資金ショートするようなことにはならないか? もし、なりそうであれば、早めに対応することで、実際に資金ショートになるのを回避することができるでしょう。

そこで、将来の残高を把握するのに役立つのが「資金繰り予定表」です。貸借対照表だけを見ていても、将来の残高まではなかなか見えてきませんから、ぜひ、資金繰り予定表をつくりましょう。

つくり方について、くわしくはこちらの記事をどうぞ↓

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それから、もうひとつ。貸借対照表の現金預金を見て確認しておきたいのは、前年と比べて、どれだけ増えたか? です。前年の貸借対照表の現金預金の額と、今年の貸借対照表の現金預金の額を比べてみればわかります。

その「現金預金が増えた額」と「税引後利益の額」とを比べてみましょう。同じ金額ではないはずです。

さきほど、税引後利益は「1年のあいだに増やしたおカネ」だと言いました。けれども、貸借対照表の「現金預金が増えた額」とは一致していない。これはどういうことなのか?

たとえば、決算日に 100万円の売上があったとして。損益計算書では、売上として記載されて、税引後利益にも反映されます。その売上代金の入金は、決算日後だとしたらどうでしょう。

決算日現在の貸借対照表の現金預金には、100万円は含まれませんよね(売掛金に含まれます)。

というようなことがいろいろあって、損益計算書の税引後利益と、貸借対照表の現金預金増加額とは一致しない。社長は、ここを理解しておくことが重要です。だから、現金預金の動きを確認できる「資金繰り表」が必要なんだ、とも言えます。

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純資産

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目、3つめ。それは、「純資産」です。具体的には、貸借対照表の「純資産の部」の金額になります。厳密には、勘定科目ではありませんが。

その「純資産」は、「資産の総額ー負債の総額」と一致します。言い換えると、いまある資産をすべて売却して現金化したとして、いまある負債を返済したあとに残る金額です。

したがって、もしいま、会社をやめようと考えた場合に、純資産の金額がプラスであれば問題はありませんが、マイナスであれば負債が残ってしまい、やめるにやめられないことになります。

これは、会社を売却しようと考えた場合にも同じことです。純資産の金額がプラスであれば、買う人はいるかもしれませんが、マイナスであれば負債をしょってまで買う人はいませんよね。

最近では、中小企業どうしでも売却(M&A)は増えていますから、売却も視野に純資産を考えるのはだいじなことだと言っていいでしょう。

ただし、純資産がプラスでありさえすればいいか、と言えば。そういうわけでもありません。貸借対照表に記載されている資産に、実は価値がない場合にはどうでしょう?

たとえば、たな卸資産として 500万円が記載されている。ところが、そのうち 400万円は不良在庫であり、二束三文にもならないというケース。だとしたら、純資産からは 400万円を除いて見るべきです。

またもしも、貸借対照表に記載すべき買掛金 300万円が漏れていたら。やはり、純資産からは 300万円を除いて見るべきです。

というように、貸借対照表に不正確なところがある場合には、単純に貸借対照表の純資産の額を見ればいい、というわけにはいきません。

言い換えると、貸借対照表に不正確なところがあると、社長自身が会社の状況を見誤る、ということです。決算書はきちんとつくりましょう、間違いやウソがないようにつくりましょう、と言われるのは社長のためでもあります。

ちなみに。純資産を増やすにはどうしたらいいのか、と言うと。前述した「税引後利益」を増やすことです。

貸借対照表で純資産の部のなかみを見ると、「利益剰余金」という勘定科目が見つかります。その利益剰余金は、過去の税引後利益の累積額です。

よって、毎年、税引後利益があるほど利益剰余金が増える、利益剰余金が増えるほど純資産が増える。純資産が増えると、会社の安全度も高まるし、価値も高まる。ということを覚えておきましょう。

この点で、銀行は「純資産がプラスかどうか」に注目をしています。純資産がマイナスの会社は、危ない会社と見て、極端に融資が受けにくくなることも、あわせて覚えておくとよいでしょう。

まとめ

決算書は、いったいどこを見ればいいのやら… と悩む社長は少なくないようです。

であるならば、まずはだいじなところに的をしぼって、3つの勘定科目を見ていきましょう。たった3つだけでも、ポイントを押さえることができます。

社長が決算書で見るべき3つの勘定科目
  1. 税引後利益
  2. 現金預金
  3. 純資産
社長が決算書で見るべき3つの勘定科目

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