メインバンクは必要か? それとも不要か? という「議論」があります。銀行から融資を受けている社長にとって、無視はできないハナシです。というわけで、わたしのなりの考え方を示します。
議論になるくらいなのだから、いろいろある。
銀行から融資を受けている会社において。メインバンクは必要か? それとも不要か? という「議論」があります。
ちなみに、メインバンクとは。はっきりとした定義があるわけではありませんが、ここではひとまず、文字どおり「社長が、メインと考えてお付き合いしている銀行」としておきましょう。
議論になるくらいなので、考え方は人それぞれあるとは思いますが。わたしなりの考え方について、お話をしていこうかと思います。内容は次のとおりです↓
- 【必要論1】調子が悪いときには困る
- 【不要論】調子が良いときには要らないけれど
- 【必要論2】これからの融資では必要
- 【参考】メインバンクづくりの注意点
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
【必要論1】調子が悪いときには困る
冒頭、メインバンクとは「社長が、メインと考えてお付き合いしている銀行」だと定義しました。とはいえ、社長が一方的に思っているだけでは成り立たず、銀行のほうもまた「うちがメインだ」と考えている必要があります。
そのうえで、会社の調子が悪い場合。つまり、業績が振るわず、資金繰りも厳しい。いまを乗り切るためには、おカネが必要だ。そんなときに、メインバンクは「メインバンクの役割」として、また、「メインバンクの矜持」をもって、支援をしてくれることがあるものです。
いっぽうで、サブバンク以下の銀行となると。会社の調子が悪い場合には、「様子見」になります。まずは「メインバンクのお手並み拝見」です。
ここで、メインバンクに支援の姿勢が見えれば、サブバンク以下も「おおむね支援」の姿勢で追随します。逆に、メインバンクが支援を打ち切るようなことがあれば、サブバンク以下もいっせいに引いていく。
では、そもそもメインバンクがなかったら? 社長がとっかえひっかえ、いろいろな銀行から融資を受けている。銀行のほうでも「うちがメインだ」とは考えていない。そんな場合にはどうなるか?
会社の調子が悪い場合には、すべての銀行が「様子見」になります。「うちが先頭を切って助ける義理もなし」です。それでもがんばって融資をした挙げ句、回収できなくなったのでは「一人負け」です。
ということがないように、どの銀行も「様子見」になってしまう。どの銀行からも支援がえにくい。場合によっては、会社が潰れてしまう… これが、メインバンクがないことのデメリットです。
ゆえに、会社の調子が悪いときには困るから、というのが「メインバンク必要論・その1」になります。
【不要論】調子が良いときには要らないけれど
それならば、会社の調子が良いときはどうなのか? つまり、業績は好調、資金繰りも盤石。こういう会社に対しては、どの銀行もこぞって融資をしたがるものです。銀行は常に、良い融資先を探しています。
どの銀行からでも融資を受けやすい状況ですから、メインバンクがないからと言って、社長が困ることはありません。
それに、そもそも資金繰りが盤石なのであれば、融資を受ける必要すらないかもしれない。そうなると、メインバンクうんぬん以前のハナシです。
ゆえに、会社の調子が良いときには困らないから、というのが「メインバンク不要論」になります。もっとも、会社は調子の良いときばかりではない…というのが現実ですが。
ちなみに。バブル崩壊後、多くの会社の業績が低迷し、資金繰りが厳しい時期には、銀行のほうが「メインバンクにはなりたくない」と考えていたようです。
そんな折に「メインバンクの役割」として、いちばんに支援を求められたのでは、かなわないからですね。いくら社長が望んでも、銀行がイヤだと考えれば、メインバンクは成立しません。
そんな状況もあって、いっとき、メインバンク不要論が広がった背景もあります。
【必要論2】これからの融資では必要
時は流れて、いまは 2021年です。バブル崩壊から 30年になります。銀行は生き残りをかけて、変革を迫られている状況です。
人口減少にはじまる企業・起業数の低下、さらには低金利といった状況から、銀行の融資業務は低迷。オーバーバンキング(銀行の数が多すぎる)として、再編(提携・統合・合併)が促されてもいます。
そのなかで、銀行に求められているのが「伴走支援」です。具体的には、「事業性評価融資」と「本業支援」になります。
事業性評価融資とは、財務データ(決算書や試算表)や担保・保証に依存せず、融資先の事業内容や成長可能性まで評価して融資をしよう、という考え方です。
本業支援とは、融資先の本業利益を増加させる支援をしよう、という考え方になります。例を挙げると、経営計画への関与・モニタリング、ビジネスマッチングの提案、融資形態の見直しなど。
これまでは、「融資をしておしまい」との姿勢がほとんどだったという反省から、これからの銀行のあり方として考えられているのが「伴走支援(事業性評価融資+本業支援)」です。
伴走支援の言葉からもわかるとおり、今後は、会社と銀行との「距離」が近づいていくことが前提になります。会社と銀行との関係性が深まる、というのであれば「メインバンク」と同じといっていいでしょう。
にもかかわらず、社長が銀行との距離をとっている(コミュニケーションを怠っている・おっくうにしている)ようだと、銀行は伴走支援ができません。結果、銀行が会社から離れていく可能性があります。
融資が受けられずに、社長は困ってしまう… なんてことがないように、メインバンクはあったほうがいい、というのが「メインバンク必要論・その2」です。
【参考】メインバンクづくりの注意点
ここまで、メインバンク必要論と不要論についてお話をしてきました。わたし自身は、とくに「必要論・その2」の観点から、メインバンクは必要だと考えています。
そのうえで、メインバンクをつくるときの注意点について、参考にお話をしておきます。
注意点1・地域金融機関から選ぶ
年間売上高が数十億円以上の会社でない限り、メインバンクは地域金融機関から選びましょう。地域金融機関とは、地方銀行または、信用金庫・信用組合のことです。
これら地域金融機関は、「地域に根ざした商売」という点で共通しています。全国展開の都市銀行に比べると、地域貢献・地域還元の意識が強く、地元の中小企業にとっては心強い存在です。
また、目安として、年間売上高が1億円未満の会社は、地方銀行よりも信用金庫・信用組合を選ぶのがよいでしょう。銀行選びのコツは、自社の規模にあった銀行を選ぶことです。
会社が小さいうちに、規模が大きい銀行を選ぼうとしても、銀行のほうでは商売にならない(融資額が少なすぎる)ために、「相手にしてもらえない」という状況が起きやすくなります。
注意点2・預金取引を寄せる
銀行から「うちがメインだ」と考えてもらうためには、融資をたくさん受けているだけでは不十分です。ときに、メインバンクの定義は「融資残高がもっとも大きい銀行」とされますが、それだけではありません。
では、なにが必要かと言うと「預金取引」です。メインバンクと考えている銀行には、預金取引をできるだけ集めるようにしましょう。売上入金、仕入代金や諸経費の支払取引などです。
これによって、銀行には「手数料」の収入が増えます。収入が増えれば、その会社を支援する理由にもなるため、業績が厳しいときにでも融資が受けやすくなるものです。
さらに、預金残高を、他の銀行よりも大きくすることを意識しましょう。預金残高があれば、銀行は回収不能の心配が小さくなります。また、銀行にとって、預金があるということは、その分の融資はしていないのといっしょです。
たとえば、1,000万円の融資をしていても、預金が 700万円あれば、実質、300万円しか融資をしていないのと変わりません。にもかかわらず、1,000万円に対する利息収入をとれるのですから、銀行はよりもうかります。これもまた、銀行が会社を支援する理由になるところです。
注意点3・プロパー融資を引き出す
メインバンクと考えている銀行からは、信用保証協会の保証付き融資ばかりではなく、プロパー融資(信用保証協会の保証がない融資)を引き出すようにしましょう。
保証付き融資しかないということであれば、言い換えると、銀行はリスクをとっていないということです(会社が返済できないときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるので)。
ふだんからリスクをとっていない銀行が、会社の業績が厳しいときにリスクをとってくれるかと言えば、難しいものがあるでしょう。すでにリスクをとっているからこそ、いざというときにもリスクをとれるものです。
リスクをとるために、銀行は融資先のことをようく見ることが必要であり(つまるところ、事業性評価)、ようく見ているからこそ、メインバンクの役割を果たすことができます。
ですから、プロパー融資を受けていないうちは、その銀行はまだメインバンクとは言えない、と考えておくのがよいでしょう。プロパー融資を引き出すタイミングについては、こちらの記事をどうぞ↓
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まとめ
メインバンクは必要か? それとも不要か? という「議論」があります。銀行から融資を受けている社長にとって、無視はできないハナシです。
というわけで、わたしのなりの考え方についてお話をしてきました。今後の銀行融資・銀行対応のご参考になれば幸いです。
- 【必要論1】調子が悪いときには困る
- 【不要論】調子が良いときには要らないけれど
- 【必要論2】これからの融資では必要
- 【参考】メインバンクづくりの注意点