銀行に決算書1年分だけを渡しておしまい、にしていませんか? だとしたら、もったいない話です。
というわけで、決算書をどのように渡せばいいのか、お話をしていきます。
決算書1年分だけを渡しておしまい。
融資を受けている会社は、毎年、税務申告が終わる時期になると、銀行から「決算書(コピー)をください」と言われることでしょう。
で、決算書を取りに来た銀行担当者に、今回の決算書(1年分だけ)を渡しておしまいにする。これはダメですよ、というお話をしていきます。
ところが、実際には、そういうケースが多いのではないでしょうか。
でも、どういう点でダメなのか? このままだと、せっかくの決算書を融資に活かすことができない。これはでもったいない… という点でダメです。
では、どう活かしたらいいのか? このあと順を追って、お話ししていきます。次のとおりです。
- 銀行担当者には感想を求めよ
- 1年分の決算書で貸借対照表は語れない
- そもそも取りに来てもらうのがダメ
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行担当者には感想を求めよ
銀行担当者が、決算書を会社に取りに来た。社長が決算書を渡す。銀行担当者は、なかみを見もせずにカバンのなかにしまいこむ。まず、これがいけません。
そもそも、見もせずにしまいこんでしまう銀行担当者に問題があります。その場でなかみの確認はすべきですし、決算書は1年の成果なのですから、労をねぎらうひとことがあってもいいでしょう。というのは、わたしの個人的な心情です。
それはそれとして。銀行担当者が、決算書をしまいこみそうになったら、社長のほうから感想を求めることをおすすめします。「なにか気になるところや、アドバイスがあればぜひ」と。
それでも、「持ち帰って、よく見てから」などと返されるようなら、残念ながら「心もとない銀行担当者」だと言わざるをえません。おそらく、決算書を見るチカラがない、ということになります。
とはいえ、そういう銀行員は少ないはずですから。なにかしらのコメントをもらえるケースのほうが、多いものと想像します。そのコメントを通じて、「会話」をすることが大切です。
銀行担当者が「気になるところ」を口にするのであれば、回答をする・説明をする。いま現在の取り組みや、今後の取り組みを伝えたり、アドバイスを求めるのもいいでしょう。
こうして会話を続けることで、銀行担当者は、会社に対する理解を深めることができます。
ところが、決算書をしまいこまれて帰られてしまうと、その機会は失われてしまう。これが、もったいないわけです。決算書を眺めているだけでは、どうしても表面的な分析にとどまります。
結果、融資審査は決算書の良し悪しばかりに依存するかたちとなり、業績が良いときにしか融資が受けられない、話を聞いてもらえない… というのでは、社長も困るはずです。
なので、ぜひ、銀行に決算書を渡すときには「会話」をだいじにしましょう。
1年分の決算書で貸借対照表は語れない
決算書を見た銀行担当者から、「前年の決算書も見せてもらえますか?」と言われたら。優秀な銀行担当者だと考えてよいでしょう。なぜなら、決算書を1年分だけ見てもわからない、と理解をしているからです。
とくに、貸借対照表。たとえば、売掛金や棚卸資産などは、前期の数字と比較をしてみないと、良いんだか悪いんだかわからないところがあります。
ですから、決算書が1年分だけとなると、どうしても損益計算書の話ばかりになってしまうものです。最終的には、黒字か赤字かに終始してしまいます。これでは、有意義な会話になりません。
損益計算書と貸借対照表、「両輪」あっての決算書です。貸借対照表についても、銀行担当者の気になるところやアドバイスを求めましょう。
そのためには、あらかじめ2年分の決算書を用意しておくとか、2期比較の資料を用意しておくのがおすすめです。これであれば、銀行担当者も話をしやすくなります。
ちなみに、貸借対照表に苦手意識を持つ社長は少なくないようです。すると、売上や費用、利益の話ばかりになってしまいます。ところが、銀行はむしろ、貸借対照表のほうにこそ関心があると言っていいでしょう。
なかでも、いちばんに目を向けるのが「現金預金」です。いま、いくらのおカネがあるのか? 極端を言えば、借金がいくらあろうが、赤字がいくらあろうが、おカネさえあればつぶれることはありません。貸しているおカネも返してもらえます。
が、逆はダメです。いくら借金が少なくても、いくら黒字でも、おカネがなくなれば会社はつぶれてしまいます。だから、銀行員は貸借対照表の「現金預金がどれくらいあるか、どれくらい増えているか」を気にしている。これを覚えておきましょう。
現金預金については、「予測値」や「目標値」を伝えられると、銀行担当者からは一目置かれるはずです。
たとえば、1年後の現金預金がいくらかの予測値がわかるということは、資金繰り管理(資金繰り表を作成している)ができている証になります。そのうえで、目標値まで決めている社長は少ないことから、「現金預金の重要性をよくわかっている社長だ」と見られることでしょう。
なお、現金預金の目安としては、最低でも、平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の2ヶ月分以上を維持。最終的には、6ヶ月分以上を目標にするのがおすすめです。
それから、もう1点。貸借対照表については「純資産(自己資本)」も押さえておきましょう。純資産の部の金額がいくらになっているか? です。
ここが大きければ大きいほど、その会社は黒字体質であり、銀行からすると安心・安全な会社になります。逆に、マイナスになるようだと「債務超過」と呼ばれ、銀行は融資を躊躇するところです。
純資産の増減は、基本的に、税引後利益の増減と一致します。社長は、「利益を出して、純資産を厚くする」という話ができると、銀行担当者からは「貸借対照表もわかる社長だ」と見られるでしょう。
[ad1]そもそも取りに来てもらうのがダメ
ここにきて、そもそもの話になりますが。決算書を、銀行担当者に「取りに来てもらう」のはやめましょう。決算書は、社長のほうから銀行まで持っていくのがベストです。
すると、銀行担当者以外にも、融資課長や支店長などと面識をつくれるチャンスがあります。面識ができれば、面識がないよりも、審査をしやすくなるはずです。融資が受けやすくなる効果があります。
また、銀行に行くときには、決算書とは別に、「決算報告」としてA4用紙1枚ていどに、要点をまとめておくのがおすすめです。
前期との比較や、差異の理由。問題点と対策。今後の受注見込みや、今期の見込みなど。これらを文書にまとめて、決算書といっしょに渡すようにします↓
こうしておけば、銀行との「会話」もスムーズになりますし、銀行も理解を深めることができます。
なお、前期との比較について、差異の理由は「ネガティブなのか・ポジティブなのか」を明確にすることが大切です。同じ差異でも、ネガティブな場合もあれば、ポジティブな場合もあるからです。
たとえば、売上高が前期よりも〇〇万円減少しました、というケース。競合商品の影響を受けての売上ダウンであればネガティブです。いっぽう、不採算商品から撤退しての売上ダウン(結果、利益率は上がっている)であればポジティブだと言えます。
同じように、費用にしても、資産にしても、負債にしても、前期との差異は「ネガティブなのか・ポジティブなのか」をあきらかにするようにしましょう。黙っていて、ネガティブと取られるようでは、もったいない話です。
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まとめ
銀行に決算書1年分だけを渡しておしまい、にしていませんか? だとしたら、もったいない話です。
というわけで、決算書をどのように渡せばいいのか、どのように渡すと決算書を活かすことができるのか。本記事を参考に、押さえておきましょう。