損益計算書は売上だけを見ればいい

損益計算書は売上だけを見ればいい

社長が決算書を見るときに、もし、「損益計算書を上(売上高)から下(利益)まで眺めておしまい」という見方をしていたら。

損益計算書は売上だけを見ればいい、という見方もありますよ。というお話です。

目次

また、そんな乱暴なことを言う。

社長が決算書を見るときには、いったいどういう見方をするのがいいか? もちろん、自由に見ればいい。というハナシではありますが、もしも「こんな見方」をしている場合には、ちょっと見方を変えるのがよいかもしれません。

それは、「損益計算書を上(売上高)から下(利益)まで眺めておしまい」という見方です。これに対する、おすすめの見方は「損益計算書は売上だけを見ればいい」になります。

などと、言うと。また、そんな乱暴なことを言う。と、各方面(どの方面?)から叱られそうですが。わたしなりの「理屈」はありますし、「ひとつの見方」として、知っておくのもよいのではないでしょうか。

というわけで、「損益計算書は売上だけを見ればいい」の理由は次のとおりです↓

損益計算書は売上だけを見ればいい、の理由
  1. ほんとうにだいじなのはおカネだから
  2. モノサシとして売上が必要だから
  3. 利益よりも利益剰余金だから

【おまけ】利益は計画するもの

これらの理由と、具体的な決算書の見方について、順番に確認をしていきましょう。

損益計算書は売上だけを見ればいい、の理由

【理由1】ほんとうにだいじなのはおカネ

損益計算書を上(売上高)から下(利益)まで眺めるのは、「売り上げてナンボ、利益を出してナンボ」との考え方があるからでしょう。これを責める意図はなく、売上も利益もだいじなものです。

ところが、これよりももっとだいじなものがあります。それが、おカネです。売上や利益がいくらあっても、おカネがなくなれば会社はつぶれてしまいます。

いやいや、売上や利益があったら会社はつぶれないだろう? と、思われるかもしれませんが。世の中には、「黒字倒産」の言葉もあります。売上や利益があっても、おカネがなくなって、つぶれる会社はあるのです。

では、そのだいじなおカネは、決算書のどこを見ればわかるのか? 貸借対照表の「いちばんはじめ」に、「現金預金」として掲載されています。

ところで、なぜ、現金預金は貸借対照表の「いちばんはじめ」に掲載されるのか? ちょっとくわしい方だと「流動性(換金性)が高いからだ」とお答えになるでしょう。が、それではまだ遠い。

より正確な解答は、「流動性がだいじだから」です。

流動性、つまり、換金性の高さがだいじなのであり、だから、貸借対照表は「流動性が高い順」に掲載されている。だから、現金預金はおカネそのもの(換金性がMAX)なので、いちばんはじめに掲載されている、という結果論にすぎません。

ゆえに、損益計算書を眺めるよりもまず、貸借対照表の「いちばんはじめ」を確認するところからはじめるのがよいでしょう。おカネは会社の生命線。まずは、「どれだけの現金預金があるか」を確認です。

ちなみに。貸借対照表に掲載されている現金預金は、「決算日現在」の金額であることを忘れてはいけません。言い換えると、いま現在の金額ではないし、将来の金額でもないということです。

なにをあたりまえのことを言っているのか? と、思われるかもしれませんが。現金預金は、「先読み」が必要だということです。決算書にしても試算表にしても、現金預金の金額を確認するだけでは不十分。

この先、3ヶ月後、6ヶ月後に「いくらになりそうなのか」を把握することが大切になります。できれば1年後まで把握することができると、おカネがほんとうになくなる前に手が打てるでしょう。

で、おカネを先読みするためのツールが、「資金繰り予定表」になります。これをつくっている会社は、けして多くありません。つくれないのであれば、つくりかたから学んでいきましょう。そのあたりは、こちらの記事も参考にどうぞ↓

あわせて読みたい
銀行融資に必要な『資金繰り予定表』の作り方入門 会社が、銀行融資を受けるにあたって必要な「資金繰り予定表」の作り方についてのお話です。 【まだ資金繰り予定表つくってないの?】 会社が、銀行から融資を受けるに...

【理由2】モノサシとして売上が必要

いましがた、貸借対照表で「どれだけの現金預金があるか」を確認しましょう、という話をしました。でも、いったいどれくらいの現金預金があればいいのだろう? と、思われるはずです。

このとき、「モノサシ」になるのが、損益計算書に掲載されている「売上高」になります。結論として、現金預金は「最低でも平均月商の2ヶ月分以上、できれば3ヶ月分以上、理想は6ヶ月分以上」です。

平均月商とは、平均月間売上高のことであり、「年間売上高÷12ヶ月」で計算します。

どれだけの現金預金があるのか、どれくらいの現金預金があればいいのか、をはかるための「モノサシ」を得るためには、冒頭のとおり「損益計算書は売上だけを見ればいい」ということになります。

売上が掲載されている場所もまた、損益計算書の「いちばんはじめ」です。現金預金と同じく、ほんとうにだいじなものは「いちばんはじめ」に掲載されている。決算書は、ほんとうによくできたしくみです。

それはそれとして。

決算書や試算表の現金預金を見て、「平均月商の●ヶ月分ある」でおわらせてはいけません。「平均月商の●ヶ月分にしよう」といった、「現金預金目標」を掲げることが大切です。目安は、前述したとおり、「できれば3ヶ月分、理想は6ヶ月分」になります。

売上や利益の目標を掲げる社長は少なくありませんが、現金預金の目標を掲げる社長は多くありません。けれども、会社にとってほんとうにだいじなのは「現金預金」だったはずです。

なお、業績不調で売上が減少しているようなときには、売上は「モノサシ」として適しません。代わりに「販売費および一般管理費」の合計額を使うとよいでしょう。

そもそも、売上をモノサシにしているのは、「販売費および一般管理費」を負担できるだけの売上があることを前提にしているからです。

売上が減っても、会社は「販売費および一般管理費」の支払をしなければならず(コストカットしない限り)、「販売費および一般管理費」の3ヶ月分や6ヶ月分の現金預金が必要だ、と考えましょう。

[ad1]

【理由3】利益よりも利益剰余金

損益計算書はほどほどにして、貸借対照表に目を向けた場合。現金預金に加えて、もうひとつ。ここだけは見ておくべき、というものが「純資産の部」の合計額です。

純資産とは、「自己資本」とも呼ばれるものであり、「自己資本比率が高い会社は、安全な会社」などというハナシを、いちどは聞いたことがあるのではないでしょうか。

その「純資産の部」の合計額がマイナスになっていないかどうか? を確認します。もしマイナスになっていたら、それは「資産の合計<負債の合計」の状態にある、ということです。

資産よりも負債が多いだなんて、なんだかマズそうだな… と思いますよね。事実、危ないです。この状態を「債務超過」と呼びます。債務超過になると、銀行融資が極端に受けにくくなることを覚えておきましょう。

逆に、「純資産の部」の合計額がプラスで、大きければ大きいほど、会社は安全な状態となり、銀行融資も受けやすくなります。融資が受けやすくなれば、借りたおカネで、現金預金を目標に近づけることも可能です。

借金はイヤだ、と思われるかもしれませんが。使わずに現金預金として置いておく限り、返済に困ることはありません。利息の負担はありますが、いまは低金利です。それに、利息は経費ですから「節税効果」もあります。現金預金を増やすための借金まで、毛嫌いしないことです。

では、どうしたら「純資産の部」を大きくすることができるのか? ズバリ、利益です。

毎年の利益の金額を積み上げたものが、「純資産の部」のなかに掲載されている「利益剰余金」になります。よって、開業から現在までの利益の累計が「利益剰余金」の金額です。だとしたら、「利益剰余金」の金額を「期数」で割り算すれば、平均的な年間利益がわかります。

利益に関して言えば、損益計算書で「瞬間的」な利益を見るよりも、貸借対照表の「利益剰余金」から平均利益をみるほうが、「会社本来のチカラ」をつかみやすいとも言えるでしょう。

この点で、「税金を払うくらいなら、経費を使う」という社長もいますが、それは利益を減らす行為であり、利益剰余金を減らす行為であり、会社を弱くする行為であることは理解しておきましょう。

税金を払わなければ、利益剰余金を大きくすることはできないし、会社を強くすることもできない。これは意外と、知られていない・理解されていない部分です。

【おまけ】利益は計画するもの

損益計算書は売上だけを見ればいい、と聞いて。損益計算書の「利益」を軽視し過ぎではないか? と、思われたかもしれません。

たしかに、「ことばのアヤ」ということはありますから、損益計算書の利益も見たほうがいいです。要は、損益計算書ばかりではなく、貸借対照表も見ましょうよ、というのが話の本質になります。

加えて、もうひとつ。利益に関して言えば、損益計算書で「実績」を見るだけではなく、「計画」をすることが大切です。会社には、「出さなければいけない利益の金額」というものがあります。

少なくとも、費用を支払えるだけの利益、費用とは別に、借入金を返済するための利益が必要です。それだけの利益がなければ、おのずと手元のおカネを取り崩すことになりますから、それが続けば会社はつぶれてしまいます。

ですから、「出さなければいけない利益の金額」から逆算して、必要な売上高を計算する。これを、目標売上高として、実行状況を管理していくのがよいでしょう。

あわせて読みたい
会社が持続するために必要な売上=資金繰り分岐点売上高、というハナシ【前編】 会社にとって「持続」は大きな関心ごとです。 というわけで。会社が持続するために必要な売上、言い換えると「資金繰り分岐点売上高」についてお話をしていきます。 【...

もちろん、内部留保を増やすための利益や、設備投資をするための利益などを織り込んで、目標売上高を逆算することも考えられます。この場合には、当然、目標売上高はより高くなります。

利益を計画することで、現金預金を増やす、利益剰余金を大きくすることを実現していきましょう

まとめ

決算書を見るときに、「損益計算書を上(売上高)から下(利益)まで眺めておしまい」という見方をしている社長は少なくないようです。

そんなときには、「損益計算書は売上だけを見ればいい」という見方も、いちど試していただければと思います。

損益計算書は売上だけを見ればいい、の理由
  1. ほんとうにだいじなのはおカネだから
  2. モノサシとして売上が必要だから
  3. 利益よりも利益剰余金だから

【おまけ】利益は計画するもの

損益計算書は売上だけを見ればいい

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次