会社が銀行から融資を受けるにあたっては、銀行からの「信用」が大切になります。その信用は、「担保<利益<返済」の順で重視されることを覚えておきましょう。
銀行からの信用は「担保<利益<返済」の順
会社が銀行から融資を受けるにあたっては、銀行からの「信用」が大切になります。では、信用の「対象」はなんなのか?
細かいことを言えばいろいろありますが、「担保・利益・返済」の3つに絞った場合、それらに優先順位をつけるとしたらどうなるかを考えてみましょう。
答えは、「担保 < 利益 < 返済」の順です。つまり、銀行からもっとも信用されるには「返済」が重要であり、次いで「利益」、さいごに「担保」となります。
というわけで、「担保・利益・返済」について、それぞれに対する銀行の見方を確認していきましょう。
銀行からの信用の対象それぞれの見方
担保
銀行から融資を受けるときに、「担保を提供すると融資が受けやすくなる」というハナシがあります。担保とは、たとえば不動産や定期預金、有価証券などです。
担保があれば、銀行は万一のとき(会社が返済できないとき)にも、担保を処分して貸したおカネを回収することができます。そういう意味ではたしかに、担保を提供すれば融資が受けやすくなるといえるでしょう。
ところが、「担保さえあれば融資を受けられる」わけではありません。言い換えると、「返済できる利益があってこそ」の担保だ、ということになります。
その昔は、担保さえあれば融資を受けられる時代もあったようですが、いまは違うことを理解しておきましょう。まずは利益、それでも足りなければ、足りない分を担保で補うという考え方です。
ゆえに、銀行からの信用の優先順位は「担保 < 利益」となります。
なお、銀行から言われたからといって、安易に担保を提供しないように気をつけなければいけません。いちど担保にとられてしまうと、担保を解除するのは困難だからです。
もし、A銀行は「担保がなければ融資はできない」と言っていても、B銀行では担保がなくても融資を受けられることはあります。ほんとうに担保がなければ融資を受けられないのか? ほかの銀行にも相談をしながら検討するようにしましょう。
その結果、不動産を担保に提供する場合、「抵当権(普通抵当権とも)か根抵当権か」の違いにも注意が必要です。このうち、根抵当権をいちど設定すると、やはり解除するのが困難になります。
さらには、既存の融資や将来の融資にも影響する可能性があります。くわしくは、こちらの記事もどうぞ↓
また、定期預金については、実際に担保に提供しなくても、融資を受けている銀行にあずけていると解約が困難になります。銀行にとっては、担保のようなものだからです。
したがって、担保を提供するときや、定期預金をあずけるときには、じゅうぶん注意しなければいけません。
利益
銀行からの信用として、担保よりも優先されるのが利益だという話をしました。では、利益がどれくらいあればよいのか?
目安になるのが、「税引後利益 + 減価償却費 > 年間返済額」を満たせるだけの利益です。「税引後利益 + 減価償却費」は簡易キャッシュフローと呼ばれ、銀行は「返済原資」と見ています。
よって、簡易キャッシュフローは年間返済額を上回るべき、との考え方を理解しておきましょう。
ただし、返済をするのに必ずしも簡易キャッシュフロー(利益)が必要になるわけではありません。手元の余裕資金や経常運転資金として融資を受けた場合には、簡易キャッシュフローを必要とはしないからです。
このあたり、くわしくはこちらの記事に書きました↓
なお、銀行からの信用の対象である「利益」は、厳密に言えば、「将来の利益」だといえます。なぜなら、これから先も返済できるかどうかは、将来の利益によるところが大きいからです。
そう考えると、会社は「将来の利益」を銀行に対してアピールすることが重要だとわかるでしょう。それも、口先だけではなく、根拠のあるアピールでなければいけません。
具体的には、「経営計画書」が根拠にあたります。経営方針の明文化、現状の分析にはじまり、数値計画・行動計画を文書にまとめた経営計画書を作成し、銀行に提示・説明できるのがベストです。
では、「過去の利益」といえる、決算書の利益は気にしなくてもよいのか? といえば、そんなことはありません。多くの社長が知っているとおり、決算書の利益も重要です。
この点で、銀行は「過去の利益(=決算書の利益)」を、「将来の利益(=経営計画書の利益)」の根拠と見ています。つまり、「過去の利益がロクロクないのに、経営計画書の利益は右肩上がり」のようだと、「その経営計画書は信用できない」ということになるわけです。
したがって、将来の利益をアピールするためにも、決算書の利益はだいじであることを忘れてはいけません。これは、社長が黒字にこだわるべき理由でもあります。
返済
さいごに、返済について。ここでいう「返済」とは、「返済実績」を指します。融資を受けたあと、どれだけのあいだ、約束どおり返済することができたか? ということです。
銀行は、その「返済実績」をとても重視しています。逆に、返済実績がない会社の信用は小さくなる(あるいは、なくなる)ものです。
たとえば、毎月返済の約束なのに、返済日に支払いがなかったら? それが何回も続いたら? 最終的には、銀行からの信用を失って「全額一括返済」を要求されることになります。利益が出ていたとしてもです。
もちろん、きちんと利益が出ている会社は、約束どおりに支払いができるだろう? といわれればそのとおりです。だからこそ、「約束どおりに支払いできない会社 = 資金繰り・業績が悪い会社」と見られて、やはり信用を失います。
いずれにしても、会社は融資を受けたら、約束どおりに返済し続けることが大切です。すると、赤字のときにも、過去の返済実績が考慮されて、融資が受けやすくなることはあります。
ちなみに、返済期間を決めるにあたっては、「据置期間」という選択肢があります。返済期間のうち、元金の返済を据え置く(利息だけを払う)期間が、据置期間です。
据置期間を設定すると、そのあいだは元金の返済がないため資金繰りがラクになります。ゆえに、できるだけ据置期間を長くとろう、というのは1つの考え方です。
ただし、据置期間中は返済をしていないのですから、返済実績ができません。返済実績ができないということは、その分の信用も増えないということです。融資残高も減りませんから、次の融資を受けられるまでの期間が長くなることも覚えておきましょう。
意外と盲点ですから、注意が必要なところです。
まとめ
会社が銀行から融資を受けるにあたっては、銀行からの「信用」が大切になります。その信用は、「担保<利益<返済」の順で重視されることを覚えておきましょう。
どうしてそれら3つの要素が重視されるのか、どうしてその順序で重視されるのかを理解することが、銀行融資の受けやすさにつながります。