おカネを借りるのはよくない。無借金経営がいちばん。
ほんとうに?
おカネをあえて余分に借りることのメリット・デメリットについてをお話します。
おカネを借りることのデメリットはわずかな利息
融資を受ける、借入をする、ということについて。世の中には、次のような考え方があります。
【 世の中に広まっている借金に対する考え方 】
- おカネを借りるのはよくない
- 無借金経営がいちばん
もっともらしい考え方ではありますが。そこには、ある種の危険が潜んでいます。
おカネを借りるのはよくない、つまり、「(かたくなに)おカネを借りない」という考え方には危険が潜んでいる。というお話をしていきます。
借入の利息を計算せよ
おカネを借りないことによる「危険」についてお話をする前に。おカネを借りることのデメリットについて触れておきます。
借金はよくない、と言う人の多くが語るデメリット。それは、利息の支払いです。
おカネを借りたら、その代償として利息を支払う。この利息がもったいない、ムダじゃないかという主張があります。
ムダかどうかについては異議がありますが、ここはひとまず受け入れて。たしかに利息の支払いは必要である、という点に着目してみることにします。
具体的な数字を使って、利息についてイメージしてみましょう ↓
- A社の決算内容 ・・・ 年商は4,800万円、年間利益は240万円
- B銀行からA社への融資提案 ・・・ 融資金額 400万円、金利 3%(年利)、返済期間 5年
さて、A社がB銀行の提案を受け入れる場合の利息はいくらでしょう? A社の決算内容に与える影響はどのようなものでしょう?
とくに難しい計算は要りません。回答をまとめると次のとおりです。
- A社がB銀行に支払う利息 ・・・ 年 12万円(400万円 × 3%)、月あたり 1万円
- A社の利益率に与える影響 ・・・ 融資前 5%(240万円 ÷ 4,800万円)、融資後 4.75%((240万円-12万円)÷ 4,800万円)
(注)返済が進み、融資残高が減少すれば、上記の利息は当然減っていきます。よって、上記で挙げている利息額は「最大」を表します
さぁ、これをみてあなたはどう感じますか?
400万円のあんしん vs スタバのコーヒー1杯分の利息
さきほどの具体例で言えば。400万円の借入、つまり、A社からすれば「月商1か月分の借入」をすることによる利息は月1万円です。
借入をすることによるデメリットは、月1万円の利息。そして、利益率に与える影響は0.25%(5%-4.75%)です。
ところで、月1万円の利息額を1日分に換算すれば「333円(10,000円 ÷ 30日)」。これは、スターバックスのドリップコーヒー・トールサイズ1杯分(税別 320円)ていどです。
少々不適切な表現かもしれませんが。毎日、スタバのコーヒー1杯をあきらめれば、400万円の借入に対する利息は負担できることになります。
「スタバのコーヒーなんて飲まんっ!」というあなたは、もちろん別ななにかでもかまいません。
とにかく、1日あたり「333円」のコスト(利息)を受け入れることで、400万円のおカネを余分に手元におくことができるわけです。
ここで冒頭の話に戻ります。400万円を借りるにあたって1日あたり333円の利息負担は、ほんとうにデメリットだと言えるのでしょうか?
おカネを借りないときのデメリットは社長不在
さきほどまでの具体例について、もう少し話を続けます。
月商の1か月分のおカネ 400万円を借りるときのデメリットは、1日あたり 333円の利息負担でした。
では、いっぽうで。その 400万円を借りないときのデメリットはなんでしょうか?
現預金月商比率は「じゅうぶん」か?
おカネを借りないことのデメリットは、借りない分のおカネが手元に無いことです。400万円の借入をしなければ、手元にその 400万円は当然ありません。
もともと手元に「じゅうぶんなだけのおカネ」があればそれもよいでしょう。ところが、世の中の多くの会社は、「じゅうぶんなだけのおカネ」を持ってはいないのです。
とくに、小規模零細事業者にあっては、その傾向が顕著であるとの各種統計データがあります。じゅうぶんなおカネが手元にない。
それでは、手元にじゅうぶんなおカネがあるかどうかの指標とはなにか、というと。「現預金月商比率」というものがあります ↓
【 手元にじゅうぶんなおカネがあるかどうかの指標 】
現預金月商比率 =( 現金+預金 )÷ ( 年商 ÷ 12ヶ月 )
この「現預金月商比率」について、最低でも「1以上」というのが、「じゅうぶんなおカネ」の条件と言えます。
つまり、月商に対して、1ヶ月分以上の現金・預金を手元に持っているかどうか、です。
仮に、売上代金の全額が翌月末日入金である場合。先行して出ていくコスト(原価・経費)を支払うには手持ちのおカネが必要になります。
そういうことを考えると、月商1ヶ月分以上のおカネを持っておきたいのですが、そこまでの余裕がないという小規模零細事業者は決して少なくないのです。
結果として、社長がいつもいつも資金繰りに追われる。カネ繰りに時間を奪われる、心労で心を奪われる。
社長が経営にたずさわることができなくなる。いわば、社長不在の会社。これでは、会社を良くすることできません。
社長の価値 vs 1日あたり333円の利息
社長がカネ繰りにとられる時間、心労でストレスを抱える時間を考えた場合。その時間により生じる金銭的損失はいかほどか?
1日あたり 333円の利息よりははるかに大きいことでしょう。社長の報酬(給料)を時間給に換算したらどうなりますか?
なにより、社長の仕事はカネ繰りに奔走することではなく、経営そのものにかかわることです。社長は社長にしかできない仕事をすべきであって、おカネの心配ばかりをしていてはいけません。
そう考えることができるのであれば。具体例のA社のように、月商1か月分のおカネを余分に借りておくことです。
月商1ヶ月分以上のおカネが手元にあれば、日繰り(1日単位でカネ繰りをすること)の必要性はなくなるはずです。
自社が月商1か月分のおカネを借りるときの利息を計算してみましょう。その利息額と社長自身の価値とを比べてみましょう。
月商1か月分のおカネを余分に借りる、という選択肢が生まれるはずです。おカネが無い、いつも資金繰りに苦労するのは「あたりまえ」でも「しかたない」でもないのです。
世の中にある「おカネを借りるのはよくない」「無借金経営がいちばん」との考えはまちがいではありません。
ただし。それらは、手元にじゅうぶんなおカネを有するだけのチカラがあるときにのみ、通用する考え方であることを覚えておきましょう。
まとめ
月商1ヶ月分のおカネをあえて余分に借りることのメリット・デメリットについてお話をしてきました。
記事中の話をさらに進めれば。おカネはもっと借りたほうが良い、ということになります。
なぜならば、事業に「まさか」はつきものだからです。明日、何が起きるかはわからず。そのときにおカネが無ければ、事業は危機に瀕します。
そのときに借入ができるという保証はないし、できたとしても時間がかかることでしょう。
であれば。借入ができるときに借入ができるだけ借りておく。そういう考え方もあります。
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きょうの執筆後記
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