創業融資を受けるにあたって大事なことってなんですか?
と聞かれたら。もっとも大事なことは、「自己資金」と「経歴」の2つだ、とお答えします。これがまた奥深く… というお話です。
創業融資を受けたければ気を付けるべき「自己資金」と「経歴」のこと
事業をはじめる際に利用することができる「創業融資」。代表的なものには、日本政策金融公庫の新創業融資制度が挙げられます。
ほかにも、民間の銀行・金融機関による創業融資、地方自治体による制度融資なども存在します。
そんな「創業融資」について。融資を受けるためにもっとも大事なことはなんですか? と聞かれたら。
創業融資に大事なことは、「自己資金」と「経歴」の2つです。と、お応えします。
これら2つについては、その言葉ほどにカンタンではなく。誤解や不注意により、融資不可となるケースも少なくありません。
そこで今回は、創業融資を受けるための「自己資金」と「経歴」について、知っておくべきポイントをまとめました。
自己資金について
創業融資で言う「自己資金」とは、「創業者みずからが、これからはじめる事業のために準備したおカネ」のことです。
金融機関は「自己資金」で何を判断しようとしているのか?
創業融資を行っている銀行・金融機関が、自己資金の金額を見て考えているのは次のことです ↓
- 計画性のある人だろうか?
- 経営者としての自覚がある人だろうか?
ですから、極端なハナシ、もしも自己資金がゼロだというのなら。銀行・金融機関は、こう思うでしょう ↓
- おカネも用意できないほど行き当たりばったりの創業っぽくて、なんか無計画だよなぁ
- 自分のおカネも用意せずに、他人のおカネ(=融資)だけで事業をはじめようだなんて、経営者の自覚が足りないんじゃないか
よって、自己資金が無い人や自己資金が少ない人というのは、銀行・金融機関からのナットクが得にくくなります。創業融資を受けられる可能性が低くなります。
そう考えると、自己資金はあればあるだけいい。自己資金の金額が大きいほど、創業者としての計画性・自覚をアピールできるわけです。
「自己資金の金額」と「融資金額」との関係性
自己資金は多ければ多いほどよいとして。実際のところ、どれだけの自己資金を準備すればよいのか? これについては、次のように考えておきましょう ↓
創業融資を受けることができる金額 = 自己資金の2倍~4倍ていど
つまり、用意できる自己資金が 100万円であれば、融資の金額は 200~300万円くらいだということです。
この点、たとえば「日本政策金融公庫の新創業融資制度」では、自己資金の9倍まで融資を受けることができるような説明がされています。
しかしこれは、あくまで「限度額」であり、理屈でしかありません。そうではなく、現実的な運用を見た場合にどうかというのが「2~4倍ていど」になります。
制度の「限度額」を見て、過度に期待をし過ぎないように気をつけましょう。
【注意点】ほんとうに自分のおカネであることを示す
創業融資の申込をするにあたり、「自己資金の証明」を求められます。つまり、次のことが必要です ↓
その自己資金は「ほんとうに自分のおカネなのか」を証明する
たとえば、創業者名義の預金通帳に、自己資金の金額以上の残高がある。これで、「ほんとうに自分のおカネである」ことは証明できるのでしょうか?
それは、ケースバイケースです。その通帳のおカネが、コツコツ貯めてきたものであることが取引履歴からわかれば、自分のおカネだと言えるでしょう。
ところが、もしも、急に入金されているようなおカネであったとしたら。どこからか一時的に借りてきたおカネ(いわゆる、見せ金)だと疑われます。
いずれ返済しなければいけないようなおカネを、自己資金とは呼べません。銀行・金融機関は、そういうところをチェックします。
このように、「自己資金の証明」とひと口に言っても、かんたんな話ではないのです。詳しくはこちらの記事もどうぞ ↓
経歴について
創業融資を受けようとする際、自己資金と並んで大事になるのが「創業者の経歴」です。
金融機関は「経歴」で何を判断しようとしているのか?
創業融資を行っている銀行・金融機関が、創業者の経歴を見て考えているのは次のことです ↓
- 事業をはじめるに足る能力があるだろうか?
- 起業の熱意はホンモノだろうか?
これからはじめようとしている事業に必要な能力を創業者が持っているかどうかを、これまでの経歴に求めています。
たとえば、パン屋をはじめようとしているのであれば、パン屋に勤めた経験や、パン作りの経験がチェックされます。
これについて、「一般企業で営業の仕事をしていました」というような経歴では、いきなりパン屋なんてムリだろうということになります。
また、ほんとうにパン屋を成功させるつもりならば、パン屋に勤めてみたり、パン作りの修行をしてみたりするものでしょう。
そういったことが経歴に表れないのであれば。起業の熱意も疑わしい、という見方になってしまうのです。
よって、はじめようとする事業に関する経歴が多いほど・長いほど、創業者は自身の能力・熱意をアピールできることになります。
「経歴の長さ」と「融資可否」との関係性
経歴が多いほど、長いほどよいとして。具体的に、どれだけの経歴があればよいのか?
この点、「日本政策金融公庫の新創業融資制度」では、「はじめる事業と同じ業種に6年以上の勤務経験が必要」などの説明がされています。
ただ、制度上はこれを代替できる要件(たとえば、人を雇う事業であるなど)が定められており、必ずしも「6年以上の勤務経験」を要するわけではありません。
とはいえ前述したとおり、創業者の能力・熱意をアピールするうえでは、はじめる事業に関する経歴が多いほど・長いほど良いことに変わりはありません。
【注意点】職歴の羅列ではなく、ストーリーを描く
創業融資を受けようとする際に銀行・金融機関に提出する創業計画書には、経歴・職歴の記載欄があります。ここで注意すべきは、
これまでの職歴から、創業する事業につながるストーリーを描く
たとえば。パン屋に勤務した経験が無く、一般企業の営業勤めだったとしても。パン屋をお客さまにするような企業であれば、経歴としてはプラス材料です。
「いつかはパン屋という夢があり、勉強も兼ねて、パン屋をお客さまにもつ会社に就職しました」というストーリーはありえます。
また、「配属も営業部であり、パン屋の現場をたくさん見て、オーナーとたくさんの話をしてきた」というようなストーリーもよいでしょう。
このように、直接的な経歴がなかったとしても、創業する事業につながるようにストーリーを持たせることが大切です。
実際、「まったくなんのストーリーもなく、創業にいたりました」という人のほうが少ないものです。
あまり大きな声では言えませんが、経歴と見てもらえるように「作文」することも必要だということ(もちろん、ウソはいけません)。
創業計画書の職歴・経歴欄は、ただ列挙するのではなく。ストーリーも含めて記載をしましょう。
まとめ
創業融資にもっとも大事な「自己資金と経歴」について知っておかねばいけないことをお話してきました。
自己資金と経歴でつまづくと、創業融資は非常に難しいものとなります。
創業融資で言う「自己資金」とはなにか? 創業融資で言う「経歴」とはなにか? をしっかりと押さえておきましょう。
これらをなんとなくで考えてしまうと、創業融資は遠のきます。
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きょうの執筆後記
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