”これ以上はおカネを借りないほうがいい、ってどんなとき?”
との疑問に対して。会社がこれ以上の融資を受けてはダメな「とき」と「その対応」についてお話をしていきます。
さすがに「これ以上の融資を受けてはダメ」なときはある
会社・事業における銀行融資について。
かねてよりわたしは、「銀行融資を受けるべし」といったことを一貫して言い続けています。
おカネを借りる(借りすぎる)デメリットよりも、おカネを借りない(借り足りない)デメリットのほうが多く・大きいからです。
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とはいえ。さすがに、「これ以上の融資を受けてはダメ」なときもあります。算式であらわすと、次のようなときです ↓
借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費
借りたおカネの返済原資は「税引後利益 + 減価償却費」であるため、それよりも返済額のほうが大きい状態(上記算式の状態)になると、手元のおカネは目減りを続けることになります。
そのような状態で、さらに融資を受けるとなると。それはもう「借金が膨らむだけ」ですから、さすがにもう借りてはいけません。
もっとも、融資を受けたくとも受けにくいわけですが(借金が膨らむだけの相手に銀行は融資しない)。そこをなんとか、無理くり借りようとしたりしてはいけませんよ、ということです。
ではもしも、前述した「借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費」に陥ってしまったら? そのときの対応について、お話をしていきます。考えられる対応は次の3つです↓
- 利益を増やす(売上↑・原価率↓・販売管理費↓)
- 返済額を減らす(一本化・借り換え)
- 返済額を無くす(リスケジュール)
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
余裕資金としての借入がある場合。その分の返済額は、「借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費」の「借入金返済額」から除いて考えてOKです。
余裕資金、つまりは、借りている金額と同じだけのおカネを手元に置いているわけですから、利益がなくても手元のおカネで返済をできる。という理屈です。
これ以上の融資を受けてはダメなときの3つの対応
利益を増やす(売上↑・原価率↓・販売管理費↓)
冒頭で提示した「これ以上の融資を受けてはダメなとき」の算式を再掲します ↓
借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費
この状態を脱するために、まず取るべき対応は「利益」を増やすことです。
算式の右辺(右側)にある「税引後利益」を増やして、不等号の「>」を「<」にひっくり返す。ということになります。
そんなんあたりまえじゃないか、と思われるかもしれませんが。利益を増やす方法は3つある、ここがポイントです。その3つとは、
- 売上を上げる
- 原価率を下げる
- 販売管理費を下げる
上記のいずれか、もしくは組み合わせによって、利益を増やすことができます。
したがって。ただただ「利益を増やそう」と考えるのではなく、「どうやって利益を増やすか?」を具体的に考え、実行に移すことが大切です。
①について言えば、商品・サービスの「値上げ」をするとか。②について言えば、仕入先に「単価交渉」をするとか。③について言えば、事務所家賃の「値下げ交渉」をするとか。
できるけれどやっていない、ということは意外とあるものです。
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繰り返しになりますが、「利益を増やそう・増やしたい」ではなく、「利益を増やす方法を考え・実行する」という対応をしましょう。
使っていない土地や、運用目的の有価証券など。いわゆる「遊休資産」を売却することでも、利益を増やすことはできます。
ただし、その利益増はあくまで一時的なものであり、その場しのぎに過ぎません。継続的に利益を増やす方法は、やはり「売上↑・原価率↓・販売管理費↓」の3つです。
返済額を減らす(一本化・借り換え)
「借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費」について。左辺(左側)の「借入金返済額」を減らすことでも、不等号をひっくり返すことは可能です。
というわけで、2つめの対応は「返済額を減らす」。具体的には、「一本化」や「借り換え」などと呼ばれている方法になります。
たとえば、A銀行から3口の融資を受けている。それぞれの返済額は毎月、10万円、15万円、20万円。合計で 45万円が毎月の返済額です。
これら3口をひとつにまとめて、返済期間も延ばすことで、毎月の返済額が 30万円になりました。これが「一本化」です。
また、A銀行からの3口の融資について、こんどはB銀行で融資を受けて完済する。以後は、B銀行に対して毎月返済します。これが「借り換え」です。
このとき、B銀行への返済額が、A銀行に返済していた額よりも少なくなれば「一本化」と同じ効果が得られます。
これはイイ!と思われるかもしれませんが、注意点があります。
ひとつは、「一本化」をすると、基本的には銀行(上記の例で言えばA銀行)からの評価が下がること。
当初の予定どおりに返済ができなくなった会社、として見られてしまいます。結果として、以後の融資を受けることは厳しくなります。
2つめの注意点は「借り換え」をすると、元の銀行(上記の例で言えばA銀行)との関係が悪化すること。
借り換えは、元の銀行からすると、いわば「裏切り行為」です。じぶんのお客さんを他の商売ガタキに奪われる。おもしろくない。関係が悪化する。最悪は、関係が切れて、以後の融資はできなくなります。
さいご、3つめの注意点。「返済額を減らす」という対応は、前述した対応「利益を増やす」とのセットで実行すること。
そもそも返済が厳しいから「一本化」なり「借り換え」をするわけですから、銀行も警戒をすることでしょう。
ゆえに、いまは厳しいけれど、今後はだいじょうぶ。利益は増やすし、少なくとも、いま以上に利益が減ることはない。というハナシができなくてはいけません。
ハナシだけではなく、経営改善計画書や予測資金繰り表などの「書類」を提示することも大切なポイントです。口だけでは信じがたい…というのは銀行に限ったことではありませんよね。
返済額を無くす(リスケジュール)
さきほど、2つめの対応として「返済額を減らす」を見てきました。
これについて、減らすだけではどうにもならない。やはり「借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費」の状況は変わらない、と言うのであれば。
さいごの手段、「返済額を無くす」しかありません。返済額をゼロにする。いわゆる「リスケジュール(以下、リスケ)」です。
ちなみにリスケとは、「当初の返済条件を変更する」ことを言います。
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したがって、必ずしも「リスケ=返済額ゼロ」ではありませんし、むしろ、銀行からは「(リスケしても)できるだけの金額を返済してくれ」と言われることでしょう。
けれども、大変に厳しい状況ゆえにリスケをするのですから、「1円たりとも」返済をすべきではありません。
返済をゼロにすることで、より確実に再起をはかる。これは、銀行にとっても望ましいことです。中途半端にリスケをして、結局ダメでした… で困るのは銀行なのです。
リスケをするなら断固として「返済ゼロ」にこだわりましょう。銀行になんと言われようとも、返済ゼロです。
ここで注意点。銀行に対して、ただただ口で「返済ゼロ」を言うのでは、さすがに銀行も納得ができません。
ですから、説得材料としての書類が必要になります。具体的には、「経営改善計画書」です。
その経営改善計画書のなかで、会社・事業が再起する姿を描き、それには「返済ゼロ」が必要である、ということを示す。これでやっと、銀行の納得も得られることでしょう。
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事が事だけに簡単にはいかないことは覚えておきましょう。リスケには、銀行への説明・銀行の承認に時間もかかりますから、「早め」に動くことも大切です。
リスケはある意味「さいごの手段」ではありますが、さいごのさいごでは遅すぎる・間に合わない、という理解も忘れずに。
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まとめ
会社がこれ以上の融資を受けてはダメな「とき」と「その対応」について、お話をしてきました。
これ以上の融資を受けてはダメな「借入金返済額 > 税引後利益 + 減価償却費」というときを見極め、そのときには取るべき3つの対応を検討するようにしましょう。
- 利益を増やす(売上↑・原価率↓・販売管理費↓)
- 返済額を減らす(一本化・借り換え)
- 返済額を無くす(リスケジュール)