” 個人事業者は融資が受けにくいの?法人のほうが融資を受けやすいの? ”
よくある質問です。基本、受けやすさに変わりはないけれど、個人事業者に「特有」のポイントがることは押さえておくのがよいでしょう。というお話です。
ずばり、受けやすさに変わりはない。だけれども…
会社・事業における銀行融資について。よくある質問のひとつがこちらです ↓
” 個人事業者は融資が受けにくいの?法人のほうが融資を受けやすいの? ”
これに対して、「融資の受けやすさは同じ」が質問に対する答えになります。
なぜなら、個人事業者であっても、法人であっても、融資審査における「基本的な考え方に変わりはない」からです。
とはいえ。
融資審査で重視される「決算書」について。個人事業者の決算書には「特有」のポイントがあり、見方にはコツが必要です。
また、銀行(あるいは銀行員)によっては、法人の決算書は見慣れているが、個人事業者のほうはあまり(見たことがない)… ということもあるようで。
したがって、個人事業者の決算書に「特有」のポイントが、融資の受けやすさに影響することは考えられます。
そこで。銀行から質問をされても、きちんと回答ができるように。もっと言えば、質問をされなくても、こちらから説明・アピールができるように。
個人事業者の決算書に「特有」のポイントを押さえておくことにしましょう。次の3つです ↓
- 生活費がわからない…
- 元入金ってなに?
- サイフがごっちゃ…
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
個人事業者の決算書に「特有」のポイント
生活費がわからない…
銀行が決算書でチェックする重要項目のひとつに、「利益」が挙げられます。
借りたおカネは、「利益」がなければ返済することができないからです。
利益が大きいほど返済力がある、ゆえに融資は受けやすくなります。逆に、利益が小さいほど返済力がない、ゆえに融資は受けにくくなります。
その「利益」について、個人事業者に特有のポイントがあります。
それは、個人事業者の利益(青色申告決算書であれば、損益計算書の「差引金額」)には、「個人事業者自身の給料(生活費)が含まれている」ということです。
たとえば、利益が 500万円あったとしても。生活費が年間 360万円かかるのであれば、残る利益は 140万円です。
このとき、銀行に返済できるチカラは、利益の500万円ではなく、生活費を差し引いたあとの 140万円。と、銀行は見ています。
ところが。生活費がいくらかかるか? は、決算書のどこを見ても書いてあるものではありません。ゆえに銀行は、生活費を「想像」するか「質問」するしかありません。
銀行が想像できるのは「一般的な生活費」。一般的ではない、特殊事情(実家で同居していて家賃がいらない、など)があるのであれば、質問されなくても説明するのがよいでしょう。
似たようなこととして。配偶者が他の会社で働いていて給料があるという場合、同じ生活費でも、配偶者の給料がある分だけ「返済力」は上がります。
生活費の金額にしても、配偶者のことなどにしても。言わなければ銀行にはわからない、ということがいろいろあります。
説明するか否か、説明できるか否かで、銀行が見る「返済力」に差が生じる。結果として、融資の受けやすさに影響することを覚えておきましょう。
ちなみに。法人の決算書では、社長の給料は経費として処理されるため、利益のなかに社長の給料(生活費)は含まれていません。
個人事業者の給料は経費にできない、という税金のルールがあるために、個人事業者と法人とのあいだに「違い」が出るのです。
本文中で、個人事業者の返済力は、利益から生活費をマイナスする、と言いました。実際には、さらに税金や社会保険料も別途マイナスします。こちらの記事もどうぞ ↓
元入金ってなに?
個人事業者の決算書について。貸借対照表を見ると、「元入金(もといれきん)」という言葉が出てきます。
これは個人事業者に「特有」の勘定科目であり、法人で言うところの「資本金」にあたるもの。けれども、資本金ほど見慣れず・聞き慣れない… のが「元入金」です。
加えて、これまた個人事業者に「特有」の勘定科目として、「事業主貸(じぎょうぬしかし)」「事業主借(じぎょうぬしかり)」まで登場します。
最終的には、この三者(元入金、事業主貸、事業主借)がからみ合い、「元入金の額が変動する」という複雑怪奇ぶりです。
それはそれとして、資本金(正確には純資産)がマイナスの会社は、「債務超過」と呼ばれる危険な会社。銀行はそのような会社を嫌います。
かくして、元入金がマイナスの個人事業者もまた、銀行からは嫌われます。
かせいだ利益以上におカネを使って元入金がマイナスになる、というのが多いケースあり、銀行としては危険を感じるわけです。
ところが。元入金がマイナスになるのは、必ずしも危険なケースばかりではありません。
たとえば、事業用の普通預金から、個人名義の定期預金におカネを移した。いわゆる「貯蓄」であり、なんら危険はないのですが、実は元入金にマイナスの影響を与えます。
このあたりの「事情(例で言えば、貯蓄)」は、決算書を見ているだけではわからない・わかりにくいところですから、銀行に質問をされなくても説明をするのがよいでしょう。
説明するか否か、説明できるか否かで、銀行が見る「返済力」に差が生じるところです。
ただでさえわかりにくい元入金ではありますが、だからこそ、その理解に努めましょう。銀行(員)がすべてを読み取ってくれるとは限りません。
サイフがごっちゃ…
世間では、「個人事業者は融資を受けにくい」と言われることもあります。
その理由として、個人事業者は法人ほどにおカネの区分が明確でない、ということが挙げられるでしょう。
事実、個人事業者の貸借対照表に掲載されている「預金」を見てみると。
事業の入出金もあれば、プライベートの入出金もある、公私が一体の預金というのは決して珍しいことではないわけで。いっぽう、法人であれば、貸借対照表の預金は明確に法人のモノです。
したがって、ハタから見る銀行としては、「個人事業者はなんだかわかりにくいなぁ…」というのも無理からぬことと言えます。
また、預金に限らず。同様のことはほかにもあります。
たとえば、自宅兼店舗や自宅兼事務所を「所有」している場合(賃貸ではない場合)。店舗や事務所分だけではなく、自宅分も含めて「資産」として貸借対照表に掲載することがあります。
自宅分について言えば、「私物」が混じっているようなものですから、やはり「個人事業者はわかりにくいなぁ…」といえるポイントです。
そのように、銀行が貸借対照表を一見しただけでは、わからない・わかりにくいことがあると覚えておきましょう。
銀行からの質問に答えることはもちろん、質問されずとも積極的に説明をすることで、融資を受けやすくする効果が期待できます。
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まとめ
個人事業者は融資が受けにくい?法人のほうが融資を受けやすい?、という「よくある質問」についてお話をしてきました。
基本的には「融資の受けやすさは同じ」ではありますが。個人事業者の決算書に「特有」のポイントが、融資の受けやすさに影響することは考えられます。そのポイントは、押さえておきましょう。
- 生活費がわからない…
- 元入金ってなに?
- サイフがごっちゃ…