銀行への『返済力』は答えられる?その計算方法と活かし方

銀行への返済力の計算方法

あなたの会社、銀行への返済力は? と聞かれたら。

答えることはできますか、ということで。「返済力」の計算方法と、その活かし方についてお話をしていきます。

目次

「返済力」を即答できない社長ではないか?

会社・事業における銀行融資について。もしも、次のようにたずねられたらどうでしょうか ↓

「あなたの会社、銀行への返済力はどれくらい?」

ウチの会社の返済力は〇〇です、と明確に答えることができるでしょうか。

意外にも、答えに窮してしまう… という社長は少なくないようです(わたしが知る限り、ですが)。

ところが。「返済力」は、銀行融資を受けるにあたり、だいじな要素のひとつですから。明確な回答ができるようでなければいけません。

そこで、銀行への返済力の計算方法について、お話をしていきます。計算方法を知っていれば、「ウチの会社の返済力は〇〇円です」と金額で明示することができます。

また、ただ計算できればいい、というものでもありませんので。計算結果としての「返済力」を銀行融資にどう活かすか、についてもあわせて押さえておきましょう ↓

このあとの話の流れ
  1. 銀行への返済力の計算方法
  2. 返済力から見る、借りすぎの確認
  3. 返済力から見る、借りすぎの見直し方

それでは、このあと順番に見ていきます。

 

銀行への返済力の計算方法

まずは結論から。銀行への返済力、つまり、「銀行から借りたおカネを返済するチカラ」の計算方法は次のとおりです ↓

銀行への返済力の計算方法

銀行への返済力 = 税引後利益 + 減価償却費

言われてみれば、「なぁんだ、そんなことか」と、思われるかもしれませんが。あらためて「返済力」などと言われると、そんなことが出てこなかったりもするものです。

それはそれとして。借りたおカネの返済原資は「利益から税金を払ったあとに残ったおカネ」ですよ、という意味で「税引後利益」が起点になります。

これはとてもだいじなことで、税金を減らす目的でおカネを使って経費を増やすと、返済原資がなくなることをあらわしています。言い換えると、融資が受けにくくなる。

その「税引後利益」に、減価償却費を足し戻します(減価償却費は税引後利益を計算する過程で、経費として、いちどマイナスされています)。

足し戻すのは、減価償却費はおカネの支出をともなわない経費だから。正確には、減価償却費の対象となる資産を買った時点で、おカネの支出は済んでいるからです。

減価償却はよくわからないなぁ… というのであれば、こちらの記事もどうぞ ↓

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なお、税引後利益も減価償却費も、決算書のうち「損益計算書」を見ればわかります。

税引後利益は、損益計算書の末尾にある「当期純利益」がそれに当たります。減価償却費は、販売費および一般管理費に並ぶ経費のなかにあるはずです。

具体例で確認をしておきましょう ↓

銀行への返済力の計算・具体例

次の会社の「銀行への返済力」を計算しなさい。

  • いちばん最近の決算書の「当期純利益」は 700万円
  • 同じく決算書の「減価償却費」は、300万円

銀行への返済力 = 税引後利益 + 減価償却費 = 700万円 + 300万円 = 1,000万円

上記例の会社で言うと、年間で 1,000万円の返済力がある。年間で 1,000万円のおカネが増えるので、年間 1,000万円までの返済ならば耐えられる、ということになります。

【参考】厳密にはキャッシュフロー計算書で

銀行への返済力は、厳密に言うと「キャッシュフロー計算書」によって計算をします。キャッシュフロー計算書とは、「おカネ(現金・預金)がどれだけ増減したか」を計算する書類です。

そのキャッシュフロー計算書に掲載される「営業キャッシュフロー」の金額が、銀行への返済力に当たります。

とはいえ、キャッシュフロー計算書の作成は、本文中の計算方法ほど簡単ではありません。したがって、銀行も含めて、簡便的に「税引後利益 + 減価償却費」の計算をよく利用しています。

 

返済力から見る、借りすぎの確認

返済力の計算方法をマスターしたところで。ここからは、計算結果としての「返済力」の活かし方を見ていきます。

具体的には、「借りすぎ」ではないか? の確認です。これを算式であらわすと次のとおりです ↓

返済力から見る、借りすぎの確認(中長期視点)

銀行への返済力(税引後利益 + 減価償却費)× 10 < 銀行借入金の残高

上記の不等式について。左辺(<の左側)は、さきほど見た「(年間の)返済力」を 10倍したものです。つまり、10年分の返済力。

対する右辺(<の右側)は、いま現在の銀行借入金の残高です。銀行借入金の残高は、決算書のうち「貸借対照表」から拾い出します。

そのうえで。不等式が問うているのは、「いま現在残っている借入金を 10年以内で返せそうか?」です。不等式が成り立てば、10年以内で返せそうもないので「借りすぎ」と見ます。

逆に、不等式が成り立たなければ。10年以内で返せそうなので、「借りすぎではない」と見ます。

この「(おおむね)10年以内」という考え方は、すべての銀行に共通して長く根付いているものです。覚えておきましょう。

では、具体例で確認です ↓

借りすぎの確認・具体例

次の会社が「借りすぎ」でないかを確認しなさい。

  • いちばん最近の決算書の「当期純利益」は 700万円
  • 同じく決算書の「減価償却費」は、300万円
  • 同じく決算書から「銀行借入金」は、11,000万円

(700万円 + 300万円)× 10 <  11,000万円

上記例の会社で言うと、左辺の「年間の返済力 × 10年」を、右辺が超えている。さきほどの不等式が成り立っているので「借りすぎ」です。

ということで。自社の「返済力」が計算できたら、「借りすぎ」ではないかな? の確認をするようにしましょう。

【参考】現金預金がたくさんある場合

現金預金をたくさん持っている会社の場合、本文中の不等式は次のように置き換えます ↓

(税引後利益 + 減価償却費)× 10 < 銀行借入金の残高 − 現金預金

手元におカネがあるのであれば、それで返済しようと思えばで返済できるのだから、借金はないのと同じだよね。という考え方です。

CHECK! 銀行融資の重要指標『債務償還年数』とは?算式・考え方などまとめ

 

返済力から見る、借りすぎの見直し方

前述した「借りすぎの確認」は、どちらかと言えば、中長期的な視点でのお話でした。

これに対して、もっと短期的な視点での借りすぎの確認についてを見ていきましょう。

結論として、算式であらわすと次のとおりです ↓

返済力から見る、借りすぎの確認(短期視点)

銀行への返済力(税引後利益 + 減価償却費)< 銀行借入金の年間返済額

上記の不等式について。左辺(<の左側)は、これまで見てきた「(年間の)返済力」です。

対する右辺(<の右側)は、銀行に年間でいくら返済をしているかです。それぞれの借入について、返済予定表から年間返済額(利息は含まず元金のみ)を拾い出します。

そのうえで。不等式が問うているのは、「いま現在の年間返済額を、年間の返済力でまかなえているか」です。

不等式が成り立てば、まかなえていないということで「借りすぎ」と見ます。この場合、手元の現金預金を取り崩して返済をしていることになります。

放っておけば、おカネが目減りをしていく状態ですから、返済についてすぐに見直しをしなければいけません。見直しをして、「銀行への返済力 > 銀行借入金の年間返済額」にしなければいけません。

方法は2つ。ひとつは、当然ながら「利益」を増やす算段をすること。おもに「売上を上げる、原価率を下げる、販売管理費を下げる」のいずれかに集約されます。

もうひとつは、返済額を引き下げる。利益を増やすことができない、という状況であれば、返済額を引き下げることになります。

返済期間を伸ばすようなかたちで他の銀行で「借り換え」をする。それすらできないほど状況が悪ければ、リスケジュールも検討しなければいけません。

返済力を計算したら、中長期視点・短期視点での「借りすぎ」の確認を必ずするようにしましょう。

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まとめ

銀行への「返済力」の計算方法と、その活かし方についてお話をしてきました。

意外にも、自社の返済力を即答できない社長は少なくないようです。しかしながら、銀行融資を受けるにあたって、返済力を知らずにはいれません。

返済力の計算方法はもちろん、計算結果としての返済力の活かし方(借りすぎの確認・見直し方)を押さえておきましょう。

銀行への返済力の計算方法

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