経常運転資金分のおカネを「毎月返済」の融資で借りていませんか? 資金繰りが厳しくなるので、そこは「短期継続融資」で借りましょう。
そんな短期継続融資で気をつけるべき注意点についてお話をしていきます。
そもそも短期継続融資とは?(少々長い前置き)
会社・事業における銀行融資について。
「短期継続融資(たんきけいぞくゆうし)」という借り方をご存知でしょうか?
短期継続融資とは、文字どおり、「短期で・継続的な融資」です。
ここで言う「短期」とは、「返済期限1年以内」のことであり、その短期の融資を期限が来たら更新して継続する。
つまり、「返済期限1年以内」の融資をずっと受け続ける。受け続ける限り返済は無し。それが、短期継続融資です。平たく言うと。
では、短期継続融資は、どのような場面でつかうべき融資なのか?
ずばり、「経常運転資金(正常運転資金などとも言います)」分のおカネを借りるときです。
ちなみに経常運転資金とは、「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」で計算される金額を言います。
上記算式中の「売上債権(売掛金・受取手形)」と「たな卸資産(在庫)」は、おカネが入金されるのを待っている状態のものです。
逆に、仕入債務(買掛金・支払手形)は、おカネを支払うのを待ってもらっている状態のものです。
結果、両者の差額である「経常運転資金」分のおカネが無いと、会社の資金繰りはもたない(経費の支払いなどができない)ことになります。
そこで、会社は経常運転資金分のおカネを用意するべく、銀行融資を受けるわけです。
この点で。経常運転資金分のおカネを「長期で・毎月返済の融資」で借りている会社がほとんどです。
すると、いちど経常運転資金分のおカネを借りても、毎月の返済により減っていきますから、資金繰りはどんどん厳しくなっていきます。
というのが、資金繰りに苦しむ会社の大きな特徴です。
これに対して、冒頭で触れた「短期継続融」ならどうでしょう?「短期で・継続的な融資」ですから、「長期で・毎月返済の融資」とは真逆の融資。
ずっと返済しないのが短期継続融資なのですから、常に経常運転資金分のおカネを借りている状態になり、資金繰りが厳しくなることはありません。
ゆえに、経常運転資金は短期継続融資で借りよ!をおすすめすることになります。
と、ここまでずいぶんと前置きが長くなりましたが。
そんな短期継続融資を借りるにあたって、気をつけるべき「注意点」をまとめてみました。というのがここからの本題です。
ぜひともお伝えしたい注意点は次の5つです ↓
- メインバンクに依頼する
- 保証協会付きにしない
- 黒字の決算がベストタイミング
- 不良資産の開示・説明をする
- 顧問税理士の声を聞きすぎない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
運転資金を借りるなら「短期継続融資」5つの注意点
《注意点1》メインバンクに依頼する
さきほどまでの「前置き」で、短期継続融資の対象は経常運転資金だと言いました。経常運転資金とは「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」でしたよね。
仮に、経常運転資金を計算してみたら 1,000万円だったとして。この1,000万円について、複数の銀行から 1,000万円ずつ借りたらおかしなことになります。
1,000万円を2重3重に借りるのでは「借りすぎ」です(銀行から見れば「貸しすぎ」)。
だから、短期継続融資を受けたいのであれば、「どこか1つの銀行」に依頼をすることになります。
では、どこに依頼をするか?
メインバンクです。自社のメインバンクにお願いをしましょう。
なお、ここで言う「メインバンク」とは、融資残高がもっとも多い銀行のことではありません。
自社のことをよくわかってくれっている、よくわかろうとしてくれている銀行です。
言い換えると、会社が少々厳しいときでも、そっぽを向いたりせずに話を聞いていくれる。いっしょに考えてくれる。そんな姿勢を見せてくれる銀行をメインバンクと定義します。
そういう意味では、信用保証協会付きでしか、信用保証協会の保証の枠内でしか融資をしてくれない銀行は… もちろん、メインバンクとは言えません。
それはそれとして。短期継続融資は、自社のことを考えてくれるメインバンクにお願いをしましょう。
実は、銀行業界の「長年の経緯」により、短期継続融資は銀行にとって「抵抗感」がある融資だと言えます。
その抵抗を押しのけてでも融資をしてくれる可能性が高いのは、やはりメインバンクです。
短期継続融資を依頼するならメインバンク。覚えておきましょう。
《注意点2》保証協会付きにしない
銀行は、「できるだけ安全に融資をしたい」と考えます。貸したおカネが回収できない、という事態は避けたいと考えます。当然でしょう。
そこで、重宝されるのが「信用保証協会付き融資」です。
銀行がする融資について、万一回収不能になったときには、全部あるいは一部を信用保証協会が保証をしてくれる。それが「信用保証協会付き融資」です。
したがって、銀行としては「信用保証協会付き融資」が貸しやすいのであり、会社としては「信用保証協会付き融資」が借りやすい。
ところが、この信用保証協会付き融資には「上限枠」があります(一般枠として 8,000万円が上限、ただし会社の状況により上限は下がる)。
上限がある以上、枠は「いざというとき(業績悪化時など)」のために空けておきたいところです。
翻って、短期継続融資の対象は「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」でした。
これを見てわかるのは、売上債権とたな卸資産は、いわば「担保」のようなものだということです。
売上債権もたな卸資産も、いずれ近々おカネに変わることが確かなのですから、保証をつける必要はないはず。もちろん、ほかに担保をとるなどもってのほかです。
このあたりの理屈を理解したうえで、短期継続融資は「信用保証協会付き融資」では借りないようにしましょう。
つまり、銀行単独の融資である「プロパー融資」で借りましょう。
《注意点3》黒字の決算がベストタイミング
いましがた、短期継続融資はプロパー融資で借りるのですよ。担保なんてもってのほかですよ。と、言いました。
とは言え。会社の決算書が大赤字… というのではそれもムリがあります。
売掛金の入金があっても、たな卸資産が売れても、そのおカネは「赤字の穴埋め」に回ってしまい、本来の運転資金にまでは回らない。
結果として、貸したおカネを回収しそびれるかもしれない。銀行はそのように考えるからです。
よって、短期継続融資を依頼するのであれば、決算が黒字のとき。会社の状態がよいときが狙い目となります。
赤字だから短期継続融資は絶対にムリだ、とまでは言いませんが。ベストタイミングは黒字の決算、と考えておきましょう。
《注意点4》不良資産の開示・説明をする
再三の繰り返しになりますが、短期継続融資の対象は、「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」です。
では、決算書に掲載されている「売上債権」について、回収できない売掛金が混じっていたらどうでしょう? いわゆる不良債権です。
銀行としては、不良債権についてまで融資をしたくはありませんから、短期継続融資を躊躇します。
ですから、短期継続融資を依頼する際には、売上債権の「中味を明瞭」にすることが大切です。
同業他社平均など一般的な水準よりも売上債権が多いような会社はとくに、銀行から不良債権を疑われます。もっと言えば、架空債権すら疑われる可能性があります。
売上債権の内訳や、得意先ごとの入金サイトを明示するなど、会社は銀行に対して積極的な情報開示・説明をすべきところです。
また、同じことが「たな卸資産」についても言えます。
決算書に掲載されている「たな卸資産」のなかに、不良在庫や架空在庫があれば、やはり銀行は融資を躊躇するでしょう。
たな卸資産が多いのであれば、在庫明細や入出庫表の提示、あるいは実際の在庫を見てもらうなどの対応が有効です。
短期継続融資を依頼する際には、売上債権・たな卸資産の情報開示・説明をじゅうぶんにしましょう。
《注意点5》顧問税理士の声を聞きすぎない
融資を受けるべきか否かを含めて、融資について顧問税理士に相談をする会社は少なくないものと想像します。
このとき、顧問税理士の声を聞きすぎることには注意が必要です。
本記事のテーマである「短期継続融資」について言えば、「短期で・継続的な融資」に否定的な考えの税理士もいます。
たとえば、「継続が途中で打ち切られたらどうするのか?だったら、毎月返済でも長期で借りておいたほうがいい」とか。
たしかに… と思わなくもありませんが、鵜呑みにはできません。
継続が打ち切られる「かもしれない」だけで、短期継続融資の前提はあくまで継続です。会社の業績が急激に悪化するなど、状況の変化があれば別ですが、継続が前提です。
また、業績が急激に悪化するようなケースでは、毎月返済の融資であっても銀行が回収をしようと動くことはあるわけで。
経常運転資金も「長期で・毎月返済の融資」が長らく定着していたこともあり、短期継続融資に対する否定的な見方は少なくないようです。
「否定的」であること自体に問題はありませんが、問題はそれを聞いて鵜呑みにすることにあります。
会社の資金繰りを決めるのは会社(社長)であって、顧問税理士ではありません。
顧問税理士の考えを聞くのはもちろんよいですが、さいごに決めるのは会社だということを忘れないようにしましょう。
そのために、短期継続融資の効果・注意点を、会社自身がよく理解しておくことが大切です。
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まとめ
「短期継続融資」の注意点についてお話をしてきました。
経常運転資金の融資を受けるのであれば、資金繰り改善の効果が高い短期継続融資がおすすめです。
いざ、短期継続融資を銀行に依頼するときのために、注意点を押さえておきましょう。
- メインバンクに依頼する
- 保証協会付きにしない
- 黒字の決算がベストタイミング
- 不良資産の開示・説明をする
- 顧問税理士の声を聞きすぎない