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中小企業の『メインバンク』の選び方 3つのポイント

中小企業の「メインバンク」の選び方 3つのポイント

いちどは崩壊したかに見えたメイバンク制ですが。いまはまた、復活したと言える状況です。

そこで、中小企業のメインバンクの選び方についてお話をしていきます。

目次

消えたメインバンク制、復活したメインバンク制

会社・事業における銀行融資について。「メインバンク(主力銀行)」の選び方のポイントをお話していきます。

と、その前に。

いっときメインバンクなんて耳にしなくなったし、「メインバンク制は崩壊した」などとも聞くけれど。そう思われたかもしれません。

そこで、「メインバンク選び」のお話をする前に。少しだけ、「メインバンクの歴史」について触れておくことにします。

その昔、バブル景気まっただなか 1990年前後のこと。「おカネを借りたい」と考えるたくさんの企業をめぐって、銀行間の融資争いが激化しました。

融資先を囲い込みたい銀行はこぞって、「うちがメインバンクになります。だからウチからどんどん借りてください(ほかの銀行では借りないで)」との主張をした時期です。

やがてバブルもはじけて1990年代後半になると。貸し過ぎたツケが回った銀行は不良債権処理に追われます。「これ以上は貸したくない」ということで、いわゆる「貸し渋り・貸し剥がし」がはじまりました。

このとき銀行は、「メインバンクを名乗ると融資をアテにされてしまう」ことから、「うちはメインバンクではありません。借りるならどうぞほかの銀行で」と態度を一転します。

以来、続く不景気・低成長という背景もあり、「メインバンク制」は息を潜めることとなりました。

ときは流れ、世の中は低金利・金余り。銀行も生き残りが厳しい時代を迎えたいま。客離れを避けたい銀行は、「借りるならどうぞメインバンクのうちから」と、ふたたび「メインバンク」の言葉を口にしています。

崩壊したかに見えたメインバンク制の復活です。

ゆえに、中小企業は「メインバンクの選び方」を考えなければいけません。そもそもメインバンクとはなんなのか? その定義もふまえて、ポイントは次の3つです ↓

中小企業の「メインバンク」の選び方 3つのポイント
  1. メガバンクを選ばない
  2. 融資残高いちばんで選ばない
  3. 銀行の将来性・方向性を見て選ぶ

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

中小企業のメインバンクの選び方 3つのポイント

《ポイント1》メガバンクを選ばない

自社のメインバンク(主力銀行)を、銀行の「ネームバリュー」や「規模」で選んでしまう中小企業があります。

結果、メガバンク(≒都市銀行)を選ぶ。間違いです。

いま現在、メガバンクの事業は「海外」に向いているから。というのがその理由になります。メガバンクは、稼げる海外に関心を持っています。

したがって、国内への関心は低く、ましてや、貸し出しにリスクがある中小企業への融資は眼中にない、と言えるでしょう。

そもそも。国内の企業に融資をするのであれば、中小企業に比べて安心・安全な大企業に融資をすれば済む話です。

わざわざリスクを負ってまで中小企業に融資をする必要はありません。

実際、メガバンクが中小企業に融資をするときには、ほぼほぼ「信用保証協会の保証付き融資」です(回収不能時には保証協会が肩代わりをしてくれるのでリスクが無い)。

にもかかわらず、「うちはメガバンクからだって融資が受けられるのだ」と胸を張る中小企業は間違っています。

これに気づかずにいると。メガバンクからの融資だけで、信用保証協会付き融資の「枠(無担保で8,000万円が上限)」を使い果たしてしまいます。

本来、その枠は地方銀行や信用金庫などに提供し、いずれプロパー融資(銀行が単独でリスクを負う融資)を引き出すきっかけとして使うべきです。

この先もプロパー融資を出すことを考えていないメガバンクに枠を使うのでは意味がありません。

よって、中小企業が融資を受けるのであれば、地方銀行や信用金庫です。上限のある信用保証協会付き融資ばかりではなく、上限のないプロパー融資も受けられるからです。

中小企業は、メガバンクをメインバンクにしない。むしろ、メガバンクとのお付き合いは必要ないと、考えておいてかまいません。

【注意】

例外として。海外事業を展開する中小企業については、海外展開のサポートを受けるためにメガバンクとお付き合いする必要があります。

また、年商10億円を超えるくらいの規模になると、融資金額も大きくなるので、メガバンクとのお付き合いも考えましょう(地方銀行や信用金庫では荷が重い)。

《ポイント2》融資残高いちばんで選ばない

「メインバンクはどの銀行?」と聞かれたときに、単純に「融資残高がいちばん大きい銀行」を答える中小企業があります。間違いです。

たとえば。融資残高が 5,000万円、すべて信用保証協会付き融資のA銀行と。融資残高が 2,000万円、すべてプロパー融資のB銀行と。

銀行がよりリスクを負って融資をしているのはどちらかと言えば、当然、全額プロパー融資のB銀行です。

リスクを負えるのは会社のことを信用しているからであり、信用するには会社のことをよく知らなければいけません。

したがって、B銀行は会社のことをよく知るために、会社とのコミュニケーションを深めようとしているはずです。

結果として、会社の業績が良いときも悪いときも話を聞く。プロパー融資を含めて、会社の状況に応じて、さまざまなかたちでの支援を検討する。その姿がメインバンクです。

いっぽうで、リスクを負わない(あるいはリスクが少ない)信用保証協会付き融資だけのA銀行は。

B銀行に比べれば会社とのコミュニケーションも少なく、会社のことをよく理解していません。会社の業績が悪くなれば、貸し渋り・貸し剥がし一辺倒です。

融資残高が大きいからと言って、メインバンクとは呼べない理由がここにあります。

というわけで。単純に「融資残高がいちばん大きい」だけでメインバンクとは考えないようにしましょう。

プロパー融資に限らず、担保・保証人無しの融資など、銀行がリスクを負った融資をしてくれているか。会社が良いときでも悪いときでも、話を聞いてくれるか・相談にのってくれるか、など。

銀行の「姿勢」まで確認をすることが大切です。

《ポイント3》銀行の将来性・方向性を見て選ぶ

冒頭、「銀行も生き残りが厳しい時代を迎えた」という話をしました。地方銀行については、「10年後に6割赤字」との試算もあります。

そのなかで、自社のメインバンクがつぶれてしまう。あるいは、どこか別の銀行に統合されてしまうとどうでしょう?

これまでのようには融資が受けられなくなってしまう、ということが考えられます。

そう考えると。「将来性」のある銀行とお付き合いをする、将来性のある銀行をメインバンクに選ぶことも重要です(選べるくらいの数の銀行がある場合に限りますが)。

たとえば。自己資本比率が高い銀行を選ぶ、不良債権比率が低い銀行を選ぶ。きちんと配当を出している銀行を選ぶなど。

銀行ごとのさまざまな指標は、インターネットや情報誌などから確認をすることができます。候補の銀行を見比べてみるとよいでしょう。

また、注目すべき指標として「預貸率」が挙げられます。預貸率とは、銀行が集めた預金をどれだけ貸し出し(融資)に回しているか、です。

例として 100の預金を集め、70の貸し出しをしているのであれば。預貸率は70%(=70 ÷ 100)になります。

そんな預貸率の全銀行平均は 70%前後です。うち、中小企業に最も身近でありメインバンクの候補である「信用金庫」の平均は50%前後。

選ぶのであれば、平均以上の 60%以上の信用金庫がよいでしょう。なぜなら、それだけ融資に積極的だと見ることができるからです。

逆に、10%〜30%台というような信用金庫もあります。平均を下回る場合には、銀行自体の業績に不安があり、融資ができないというケースも少なくありません。

このあたりの視点も踏まえて、メインバンクを検討してみましょう。

加えて、銀行の「方向性」についても確認をしておくのがおすすめです。具体的には「金融仲介機能のベンチマーク」を参考にします。

金融仲介機能のベンチマークとは、ひとことで言えば、金融庁が各銀行の取り組みを評価するための指標です。

この指標に対して、各銀行はどのように取り組むか、取り組みの成果はどうかをインターネットなどで公表しています。

自社の方向性に合ったメインバンク選びに役立つものですから、ぜひ「金融仲介機能のベンチマーク」を確認しておきましょう。くわしくはこちらの記事もどうぞ ↓

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まとめ

中小企業の「メインバンク」の選び方 3つのポイントについてお話をしてきました。

いちどは崩壊したかに見えたメイバンク制は復活した、と言えます。中小企業は、自社のメインバンクを選ばなければいけません。

誤った銀行を選ぶことがないように、選び方のポイントを押さえておきましょう。

中小企業の「メインバンク」の選び方 3つのポイント
  1. メガバンクを選ばない
  2. 融資残高いちばんで選ばない
  3. 銀行の将来性・方向性を見て選ぶ
中小企業の「メインバンク」の選び方 3つのポイント

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