メインバンクをもつことをおすすめします。メインバンクが有るか無いかで、会社の「資金繰りの安定」には差が出るからです。
というわけで、メインバンクのつくりかたについてお話していきます。
「メインバンク=融資残高がいちばん」ではない
会社・事業における銀行融資について、メインバンクをもつことをおすすめします。その理由は次の3つです ↓
- 困ったとき(業績不振、資金繰り難など)にも相談できる
- 融資条件を交渉できる
- 結果、資金繰りが安定する
会社・事業を続けていれば良いときばかりでもありません。そんなときにでも、話を聞いてくれるのがメインバンクです。
また、金利や担保・保証をはじめ、融資条件の交渉に応じてもらいやすいのもメインバンクです。
そんなメインバンクの有無によって、会社・事業の「資金繰りの安定」には大きな差が出る、と言えます。
ではどうしたら、メインバンクを持つことができるのか?
一部には「メインバンク=融資残高がいちばんの銀行」との理解もありますが。たくさんの融資を受けたからといって、必ずしも「資金繰りの安定」に貢献するメインバンクをもてるわけではありません。
たとえば。融資残高はいちばんだとしても、いつも信用保証協会付きとか、いつも担保をガチガチにとられるとか。
そのうえ、困ったときの相談や、融資条件の交渉にはそっぽを向かれる。これでは、会社・事業の資金繰りはなかなか安定しないでしょう。
というわけで。資金繰りを安定させるためのメインバンクのつくりかたについて、お話をしていきます。こちらです ↓
- 決算報告をする
- 定期的に試算表を提出する
- 担当者と「商売」の話をする
- 現場(店舗、工場、商品)を見せる
- 営業をムゲにしない
- 預金をする・口座で取引をする
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
資金繰りを安定させるための「メインバンク」のつくりかた
決算報告をする
1年に1度の決算が終わったら、銀行に対して「決算報告」をしましょう。
ただただ決算書を銀行に手渡すだけではなく、決算のポイント、課題や問題点とその対策、今後の見通しなどを口頭で説明するようにします。
銀行は「状況がよくわかる融資先」には、融資を検討しやすいものです。いっぽうで「状況がよくわからない融資先」には、融資を躊躇します。
よくわからない相手にはおカネを貸したくない・貸しにくい。これは銀行に限ったハナシでもありませんよね。
ところが。ほとんどの会社は「決算報告」をすることもなく、ただただ決算書のコピーを銀行に渡しているだけ、というのが現状です。
したがって、決算報告をすることで、他社よりも自社のことを銀行によくわかってもらえるチャンスになります。
よくわかってもらえれば、業績が振るわないときにでも話を聞いてくれる可能性が高まり、融資条件の交渉にも応じてもらえる可能性も高まります。
決算が終わったら銀行に報告、を習慣にしましょう。
定期的に試算表を提出する
1年に1度の決算書は銀行に提出しているという会社でも、毎月の試算表も提出している会社となるとほとんどありません。
よって、銀行に試算表を提出することで、他社よりも自社のことを銀行によくわかってもらえるチャンスになります。
決算書が黒字にせよ赤字にせよ、1年に1度だけ結果を見せられるよりも、途中経過を試算表で見せられるほうがよくわかりますよね。
すると、業績が振るわないときにでも話を聞いてくれる可能性が高まり、融資条件の交渉にも応じてもらえる可能性も高まることは前述したとおりです。
銀行も「融資先の状況(の変化)は把握しておきたい」と考えていますから、試算表の提出は大歓迎といったところでしょう。
これからはじめるのであれば、まずは四半期にいちどのペースで試算表を提出してみるのがおすすめです。
ただし、試算表の「精度」には気を付けておきましょう。減価償却費を毎月計上していない(決算でまとめてドン)、たな卸を毎月していない(決算でまとめてドン)など ↓
いい加減な試算表であれば逆効果もありえます。
担当者と「商売」の話をする
銀行の担当者と、自社の「商売」についてお話をしていますか? と聞くと、「あまりしていない」と答える会社は少なくありません。
結果、銀行担当者は、その会社が「なにを商売にしているのか」がわからない… ということが少なくないのです。
最近では、金融庁が銀行に対して「事業性評価による融資」を押し進めています。
事業性評価とは「決算書や担保・保証に依存しすぎず、会社の将来性を評価すること」であり、そのためには「商売を知る」ことは欠かせません。
よって、銀行担当者と商売の話をあまりしていないとなると、今後、事業性評価による融資は受けにくくなります。
決算書や試算表など「数字」を見ているだけでは「商売」を深く理解することはできません。
たとえば、なんの商品・サービスをどのように売っているか、競合他社と比べたときの強み・弱みはどこにあるかなどは、決算書・試算表を眺めていてもわからないからです。
銀行に対してはあらためて、自社の「商売」について話をする機会が必要です。
この点で、前述した「決算報告」や「試算表提出」は、よい機会だと言えます。数字のことばかりではなく、商売についても話をするとよいでしょう。
話をするときには、各種のツールも便利です。とくに「ローカルベンチマーク」はおすすめです ↓
現場(店舗、工場、商品)を見せる
いましがた、銀行とは「商売」の話をしましょう、と言いました。それに関連して、銀行に「現場」を見てもらうのがおすすめです。
ここで言う「現場」とは、自社の店舗、工場、倉庫、事務所など。あるいは、商品やサービスを体験してもらうなどの「現物」まで。
これらの現場・現物をとおして、銀行はより融資先の商売について理解を深めることができるはずです。
競合他社とのちがいや自社の強みなどがわかれば、「会社の将来性」を検討するにあたっての参考になります。さきほど触れた「事業性評価」に役立つわけです。
したがって、「現場」は積極的に見せるようにしましょう。
あわせて会社案内や商品カタログ、サービスメニューなど、書類として渡すことも有効です。
とくに、銀行担当者が異動などで変わったときには、あらためて「現場」を見せることをおすすめします。銀行内部の引き継ぎだけでは伝わらないこともあるはずなので。
営業をムゲにしない
銀行担当者が「営業」に来る、ということもあるでしょう。
「融資を受けませんか」のお願いばかりではなく、預金のお願いやクレジットカード作成のお願い、などもあるかもしれません。
これらの営業に対して、ムゲにしたりはしていませんか?
もちろん、必要がないのに融資を受けたり、ムリをして預金をしたり、クレジットカードをつくることもないでしょう。
そういうことではなく、銀行担当者からの会話をけんもほろろに突き放したりはしていないか、ということです。
「そんなこといったって、こっちだってヒマではない。忙しいのだ」との気持ちもわかります。
けれども、銀行対会社とは言っても、結局は人対人(銀行担当者対社長)です。人対人のお付き合いのなかで「けんもほろろ」にされて気分が良い人はいませんよね。
にもかかわらず、こちらがおカネに困ったときは一方的に融資のお願いをする、というのでは銀行から嫌われるのもいたしかたなしです。
そうなれば当然、融資は受けづらくなりますし、融資条件の交渉も難しくなるでしょう。結果、資金繰りの安定は遠のきます。
というわけですから、銀行担当者の営業をムゲにはしないようにしましょう。
銀行担当者からの営業も、銀行と会話をするよい機会だととらえて、まずは話を聞きつつ、自社の状況や商売の話などをしてみるのがよいかと考えます。
預金をする・口座で取引をする
融資を受けているばかりで、預金はまったくしていない。ということになると、その銀行としてはおもしろくないものです。
逆に、預金があれば、銀行としては万が一返済が滞ったときのよりどころになります。加えて、預金があると「実質金利」が上がるため、銀行としては旨味があります。
すると、こちらが困ったときにも話を聞いてくれる可能性が高まり、また、融資条件の交渉にも応じてくれる可能性が高まります。
そう考えると。融資を受けていない・融資を受けるつもりもない銀行に定期預金をしている会社などもありますが、あまりおすすめできることではありません。
メインバンクをつくるのであれば、預金は有効に使いましょう。
また、融資を受けている銀行の預金口座で取引(売上入金や仕入・経費の支払など)すると、銀行からの「理解」が深まります。
たとえば、入金が増えていれば売上増の傾向を、入金が減っていれば売上減の傾向をうかがい知ることができるからです。
そのように口座内の取引を通じて、銀行は会社の状況を把握しやすくなりますから、「融資の実行」や「融資条件」の検討もしやすくなります。
逆に、取引をまったくしていないということになれば、会社の状況を把握するにあたって「裏付け」がなくなるため、各種の検討が難しくなるものです。
預金取引をメインバンクにしたい銀行の口座に集める、ということもメインバンクづくりには有効であることを覚えておきましょう。
まとめ
メインバンクが有るか無いかで、会社の「資金繰りの安定」には差が出ます。メインバンクのつくりかたを理解し、メインバンクを持てるようにしましょう。
このとき、必ずしも「メインバンク=融資残高がいちばんの銀行」ではない点に注意が必要です。
- 決算報告をする
- 定期的に試算表を提出する
- 担当者と「商売」の話をする
- 現場(店舗、工場、商品)を見せる
- 営業をムゲにしない
- 預金をする・口座で取引をする