銀行は「決算書を見せてくれ」と言うけれど、いったいなにを見ているのだろう?
というわけで。銀行が融資先の決算書を見る 5つのポイントについてお話をしていきます。
銀行は決算書のなにを見ているのか?
会社・事業における銀行融資について。
銀行は「決算書を見せてくれ」と言うけれど、いったいなにを見ているのだろう? との疑問は少なくないようです。
銀行が決算書のなにを見ているかがわかれば、スムーズに融資を受けるのにも役立つはずなのに… といったところでしょうか。
そこで、「銀行が融資先の決算書を見るポイント」をお話していきます。そのポイントとは、次の5つです ↓
- 主要3指標はどうか?
- 現金預金があるか・銀行借入金があるか?
- 役員報酬・交際費は多すぎないか?
- おかしな資産がないか?
- 過去の決算書の推移はどうか?
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
融資先の決算書、銀行はここを見る!5つのポイント
《ポイント1》主要3指標はどうか?
1つめのポイントは、決算書に掲載されている数字が良いかどうか。つまり、業績が良いかどうか、です。
もちろん、業績が良い会社ほど融資が受けやすく、業績が悪い会社ほど融資が受けにくくなります。
では、「業績が良い」とは具体的にどのような状態を言うのでしょう? これについて、銀行はいろいろなチェックをしているわけですが、次の3つの指標に集約されます ↓
- 税引後利益+減価償却費 >0
- 資産の総額 > 負債の総額
- 借入金残高 ÷ 簡易キャッシュフロー < 10
これらの指標について、くわしい説明は別記事にゆずるとして。端的に言うと、「利益を出しているかどうか」です。
利益を出していれば、上記の3指標はおのずと良くなります。3指標のほかにも、ナンタラ比率などのいろいろな財務指標もありますが。それらもまた、利益を出すことでやはり良くなります。
したがって、業績を良くするためには「利益を出すこと」です。などと言うと、「なにをそんなあたりまえのことを」と思われるかもしれません。
ところが、決して少なくはない会社が「出せるはずの利益」を出していないのです。具体的に言うと、「税金はできるだけ払いたくない」というやつですね。
利益を出すほど税金が高くなるので、利益を抑えて(=経費を増やして)税金を安くしようとする。結果として、業績を悪くしています。銀行融資を受けにくくしています。気をつけましょう。
《ポイント2》現金預金があるか・銀行借入金があるか?
2つめのポイントは、現金預金があるか・銀行借入金があるか。つまり、現金預金や銀行借入金が決算書に掲載されているかどうか、です。
まずは現金預金の話から。
前述したとおり、銀行は「利益を出している会社」を好みます。これとは別に、銀行は「現金預金を持っている会社」も好みます。
なぜなら、おカネを持っている会社は安全だからです。極端を言えば、どれだけ赤字で利益が出ないとしても、おカネを持ってさえいれば会社がつぶれることはありません。
逆に、どれだけ黒字で利益を出していても、おカネが足りなくなれば会社はつぶれてしまいます。いわゆる「黒字倒産」です。
ゆえに、銀行は現金預金が潤沢である会社を好みます。決算書に掲載されている現金預金が多ければ多いほど、銀行としては融資がしやすい。貸したおカネが回収できなくなる可能性は小さいからです。
いっぽうで、現金預金が平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月にも満たないようだと、資金繰りが厳しく、貸したおカネを回収できない可能性が高い会社として嫌われることとなります。覚えておきましょう。
続いて、銀行借入金の話。
銀行借入金が無い会社、言い換えると、無借金の会社を銀行は警戒します。えっ、無借金っていいことじゃないの? と思われるかもですが。融資を受けるにあたってはそうとばかりも言い切れません。
無借金の会社を見て銀行が考えるのは、「もしかして、この会社は借りたくても借りられないのではないか?」です。
たとえ、利益が出ている会社でも。なにかブラックな事情などがあって(それが銀行にも知れていて)、融資をしてもらえないのではいかと考える。そういうことです。
だから借金をしたほうがいい、などと言うつもりはありませんが。ムリをして無借金をしていると(現金預金がカツカツとか)、いざというときに融資が受けにくくなることは理解をしておきましょう。
《ポイント3》役員報酬・交際費は多すぎないか?
3つめのポイントは、役員報酬・交際費は多すぎないか。決算書に掲載されている役員報酬や交際費の金額が多すぎないか、です。
たとえば、同業他社と比べて社長の役員報酬が多すぎる。それが赤字の一因になっていると考えられる。
このようなケースだと、「(社長が)会社と社長個人とを混同している」と銀行からは見られます。公私混同です。
もちろん、社長がとれるときに役員報酬をとって、会社のいざというときに備える。社長個人で貯蓄しておく、ということはあるでしょう。それもだいじなことです。
ただそうは言っても「多すぎ」はよくない、ということですね。
交際費が多すぎる、も似たような話です。交際費は「冗費(=ムダ使い)」のイメージがつきまとうものであり、その交際費が多いと「社長がムダ使いをしているのはないか、公私混同しているのではないか」と見られます。
役員報酬にしても交際費にしても、会社の利益を悪くするほど赤字にするほど多すぎないかに注意しましょう。多すぎれば融資は受けにくくなってしまいます。
また、銀行は独自に同業他社のデータを持っています。そことの比較で「多すぎないか」をチェックしていることも覚えておきましょう。業種別平均などの統計データはネットで探すこともできますから、自社でも比較をしてみるのがおすすめです。
《ポイント4》おかしな資産がないか?
4つめのポイントは、おかしな資産がないか。決算書におかしな資産が掲載されていないか、です。たとえば、仮払金や役員貸付金など。
ほんとうは費用にすべきものを「利益を水増し」するために仮払金や役員貸付金としていたり。経理がいいかげんでおカネをなにに使ったがかわからず、ひとまず仮払金や役員貸付金としていたり。
いずれにせよ、これらはおかしな資産です。このままでは決算書の数字を信じることができません。よって、銀行は決算書を正しい姿に修正しています。
《ポイント1》で3つの指標を挙げましたが、これは、会社がつくった決算書の数字そのままで見るのではなく、銀行は修正をした決算書の数字で見ている、ということです。
さきほどの仮払金、貸付金のほかにも。すべき減価償却をしていないとか。架空の売掛金、回収不能の売掛金があるとか。架空在庫や不良在庫があるとか。著しく値下がりした不動産や株式があるとか。
いろいろな修正があります。銀行がどのような見方をしているのかは、いちど確認をしておくのがよいでしょう ↓
そのうえで、銀行が修正をしていそうな資産(おかしな資産)については、必要に応じて「事情」を説明することが有効です。
おかしな資産に対する会社の対応・対策を伝えることで、得られる理解というものもあるでしょう。そもそも、誤解をされていること(架空在庫ではないのに架空だと疑われていたり)もありえます。
したがって決算書については、銀行にただ渡すばかりではなく、あらためて説明をするのがおすすめです。
《ポイント5》過去の決算書の推移はどうか?
5つめのポイントは、過去の決算書の推移はどうか、です。
銀行は、1年分の決算書だけではなく、過去数年分の決算書で「推移」も見ています。たとえば、利益の推移はどのようか? など。
もしもここ数年、赤字が続いているとしたら、「来期も赤字なのかなぁ」と見て、融資をためらいます。赤字でなくとも、ここ数年の利益が減少傾向であれば、やはり融資をためらうところでしょう。
銀行にとってだいじなのは、貸したおカネをこれからも返してもらえるか、つまり「これから(将来)」です。ゆえに、過去からの「推移」を見ることで、「将来」を予測するうえでのよりどころにするわけです。
この点で。赤字続きの会社が、「右肩上がりの計画書」をつくったとしても、銀行からは疑いの眼が強いことを理解しておきましょう。理由はさきほど言ったとおり、推移で将来を見ているからです。
そう考えると、やはり「出せる利益をきちんと出す」のがいかに重要であるかがわかります。
ところで。ここ数年の決算書が、毎期ずっと「ちょっとだけ黒字」という推移であった場合はどうでしょう? 銀行は「ほんとうに?」と疑います。
ほんとうはずっと赤字なのだけれど、融資を受けたいので利益を水増ししているのではないか? と、銀行は疑うわけです。
あるいは、ほんとうはもっと黒字なのだけれど、税金も高くなるので「ちょっとだけ黒字」に利益を調整しているのではないか? という疑い方もあります。
利益の水増しにしても、利益の調整にしても。そこには「社長の姿勢・資質」があらわれている、と言えます。
銀行は、過去からの「推移」によって、将来を予測するばかりではなく、「社長の姿勢・資質」まで見極めようとしていることは知っておくとよいでしょう。
まとめ
銀行が決算書のなにを見ているかがわかれば、どうしたら融資が受けやすくなるか、どうしたら融資が受けにくくなってしまうかがわかります。
結果として、スムーズに融資を受けるのに役立ちます。銀行が融資先の決算書を見るポイントを押さえておきましょう。
- 主要3指標はどうか?
- 現金預金があるか・銀行借入金があるか?
- 役員報酬・交際費は多すぎないか?
- おかしな資産がないか?
- 過去の決算書の推移はどうか?