自己資金で設備投資をしよう! と考えているのであれば気をつけましょう。
それは「自己資金で設備投資」には3つのデメリットがあるから、というお話です。
手持ちのおカネでモノを買う、その前に。
会社・事業における設備投資について。つまり、あたらしい店舗を出店するとか、工場の機械を買い換えるとか、営業車を導入するとか、について。
自己資金で設備投資をしよう! と考えているのであれば気をつけましょう。なぜなら、自己資金での設備投資には3つのデメリットがあるからです ↓
- 手持ちのおカネが減る
- あとになってから「設備資金の融資」は受けられない
- 利益が増えないと思いのほかおカネが不足する
上記はいずれも「おカネ」に関するデメリットになります。端的に言うと、「おカネが無い」で困るデメリット。当然、「おカネが無い」は会社・事業の死活問題に関わります。
したがって、まずはこれらのデメリットを、忘れずに確認するようにしましょう。自己資金で設備投資をするならそのあとです。
それでは、3つのデメリットについて、このあと順番にお話をしていきます。
忘れちゃいけない「自己資金で設備投資」3つのデメリット
《デメリット1》手持ちのおカネが減る
たとえば、1,000万円の生産設備(機械)を購入する、という設備投資について。
購入代金 1,000万円を手持ちのおカネで支払えば、その分、手持ちのおカネが減ることになります。あたりまえです。
これに対して、銀行から 1,000万円の融資を受けて購入代金を支払うのであればどうでしょう? ひとまず、手持ちのおカネが減ることはありません。
その後、受けた融資の「返済」はありますが。それにともなうおカネの支払いはゆるやかです。仮に、返済期間が 10年だとすれば、毎年 100万円の返済になります。いちどに 1,000万円、とは大きな差です。
(※ 別途、利息の支払いは必要ですが、返済額に比べてのインパクトはちいさいため、ここでは考慮外としています)
会社・事業を続けていれば、いつなんどきおカネが必要になるかはわかりません。売上不振をしのぐためにおカネが要るときもあれば、ビジネスチャンスをつかむためにおカネが要るときもあるでしょう。
そう考えると、「手持ちのおカネが減る」のはデメリットだと言えます。ひとつの目安として、「平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の3ヶ月分の現金預金」は手元に置いておきたいところです。
自己資金での設備投資を考えるのであれば、支払い後にもそれだけの現金預金が手元に残せるかどうか? 確認をするようにしましょう。
設備投資にあたっては、銀行借入か、リースか、それとも割賦購入か? という論点があります。
これについては、金利、返済期間(支払期間)、手数料、メンテナンス費用、などを総合的に勘案して検討することが必要です。
本記事では、その検討が済んでいる(リース、割賦購入は選択しない)ものとして、「銀行借入」と「自己資金」とを対比させるかたちで話を進めていきます。
《デメリット2》あとになってから「設備資金の融資」は受けられない
さきほど、手持ちのおカネが減るのはデメリットだ、という話をしました。このデメリットへの対応として、次のようなことを考える人がいます ↓
「じゃあ、おカネが足りなくなったら借りる」
つまり。ひとまずは自己資金で設備投資をしてみて、あとでおカネが足りないとなったら「やっぱり貸して」と言う。そういう考え方です。
ところが、「おカネが足りなくなった」という状況で、銀行から融資を受けるのは難しいものがあります。銀行からすれば「貸したおカネを返してもらえる」可能性が低いからですね。
借りる側からすれば「おカネが無いから借りるんだろう」との思いでしょうが、それは借りる側の理屈であって銀行の理屈とは相反するものです。
銀行はあくまで「貸したおカネを返してもらえる相手」に貸すところ。おカネが無くて困っている相手に貸すところではありません。
ということをふまえると。どうせ借りることになるのであれば、借りられるときに借りておくほうがいいわけです。
設備投資で言えば、「設備投資をするとき」がそのベストタイミングになります。
銀行から融資を受けるには「資金使途(=借りたおカネの使いみち)」が重要です。使いみちがないおカネを貸すわけにはいかない。ゆえに、借りたおカネをなにに使うのかが重要なのです。
この点で、設備投資にはきわめて明確な資金使途があります。設備投資をするため、という資金使途ですよね。このような資金使途のことを「設備資金」と言います。
資金使途が明確である、という点では融資を受けやすい「設備資金」ではありますが。それはあくまで、設備投資をするタイミングでのみの話です。
自己資金で設備投資をしたあとしばらくしてから、「あのときの設備投資、やっぱり設備資金の融資を…」は、できません。
あとになってから「設備資金の融資」は受けられない。デメリットとして押さえておきましょう。
《デメリット3》利益が増えないと思いのほかおカネが不足する
設備投資をする際の「前提」として。設備投資によって「利益が増える」がだいじになります。
設備投資をしたことで売上が増える、あるいは経費削減につながる。いずれにせよ、設備投資が「利益が増える」に貢献することを見込んでいるはずです(というか、見込むべきです)。
でなければ、設備投資をした分だけおカネが無くなっておしまい… になってしまいます。
たとえば、1,000万円の機械を設備投資するとして。極端なケースで、機械で生産した製品がまったく売れないとしたら? 1,000万円のおカネが手元から失くなることになります。タイヘンなことです。
(※ 節税効果を考えるのであれば、1,000万円×税率分の税金は減るだろう、ということではありますが。製品がまったく売れない状況では利益があがらず、節税効果は期待できないとの想定です)
したがって、投資額 1,000万円を回収するための利益を計画することになります。ところが、計画は計画であって、そのとおりになるかどうかはわかりません。
このとき、自己資金で設備投資をしていると。計画どおりに利益が増えない分、おカネもまた増えないことになります。結果、資金繰りは思いのほか厳しくなる。
いっぽう、銀行から融資を受けて設備投資をしていれば。計画どおりにいかない場合にも、手持ちのおカネがある分だけ時間をかせぐことができます。
設備投資の効果(利益)が計画どおりであるに越したことはありませんが、必ずしもうまくいくことばかりではないでしょう。
その場合、事態の改善をはかるのにも時間が必要であり、そのあいだをしのぐにはおカネが必要だ、という場面は少なくありません。
自己資金による設備投資には、「利益が増えないと思いのほかおカネが不足するデメリット」があることを理解しておきましょう。
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まとめ
会社・事業における設備投資の際、「自己資金で設備投資」は選択肢のひとつです。
ただし、「おカネが無い」で困る3つのデメリットがあることにじゅうぶん気をつけましょう。
いずれも死活問題に関わる、忘れてはいけないデメリットです。
- 手持ちのおカネが減る
- あとになってから「設備資金の融資」は受けられない
- 利益が増えないと思いのほかおカネが不足する