銀行から「試算表を見せてほしい」と言われている。でも、試算表が赤字…
だけど融資を受けたい、というときの対応方法についてお話をしていきます。
おおむね決算書で決まり、ではあるけれど
決算から数ヶ月以上がたったあるとき。銀行に融資の相談をしたら「試算表を見せてほしい」と言われた。でもいまは赤字… どうしよう…
と、悩んでいるのなら。
そもそも、銀行融資は「決算書でおおむね決まる」ものです。それに対して、試算表は「決算書の補足的な位置づけ」だと言ってよいでしょう。
結局のところ、試算表は「試算」に過ぎず。銀行としても、その試算をアテにはしていないところがあります。
決算ほど精度が高い数字でもないだろう、とか。もしかしたら、利益操作をしているかもしれないし、とか。試算表はアテにならない。
したがって、銀行がその会社に融資をするかどうかは「決算書でおおむね決まる」と言えるのです。つまり、決算書の良し悪しがだいじ。
とはいえ。試算表も良いに越したことはありません。決算書と同じく、試算表も黒字であるに越したことはありません。
試算表が赤字となると、「こんどの決算は赤字なのかなぁ」とのイメージになるからですね。
そこで。試算表は赤字だけれど、銀行融資を受けたい… というきの対応方法についてお話をしていきます。次の5つです ↓
- 費用をならす
- 特別損失を切り出す
- 決算予測をつくる
- 黒字決算の根拠を示す
- 早く提出する
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
試算表は赤字だけど銀行融資を受けたい…ときの対応方法
《方法1》費用をならす
年払いの保険料を、支払日に全額経費として経理している会社があります。
たとえば。3月決算の会社が、年払いで 60万円の保険料を6月に支払いました。60万円全額を6月の費用にすると、6月は他の月よりも費用が大きくなります。
ところが、60万円は各月が負担すべき費用を「まとめ払いしただけ」にすぎません。よって、各月5万円ずつ費用にするのが、より正しい経理だと言えます(60万円÷12ヶ月)。
この点で。もし、6月末現在の試算表を銀行に提出しようとした場合。6月にまとめて 60万円を費用にすると赤字だけれど、各月に5万円ずつ費用にすると黒字になる、ということがありえます。
保険料に限らず、年会費や年間利用料、年間保守料など、同じような考え方ができるものはいろいろです。費用を各月にならすことで黒字にならないか? 検討をしてみましょう。
試算表が赤字だ… と言うけれど、実はそうでもない。というケースはあるものです。
《方法2》特別損失を切り出す
同じ試算表の赤字でも。営業利益や経常利益が赤字なのと、税引前当期純利益が赤字なのとでは、銀行の評価に違いが出ます。
たとえば。営業利益、経常利益、税引前当期純利益のすべてが赤字… これは正真正銘の赤字であり、銀行からの評価は厳しくなります。
いっぽうで。営業利益は黒字だけれど、特別損失があって、税引前当期純利益は赤字… これは一時的な赤字であり、銀行からの評価はそれほど厳しいものではありません。
固定資産を売却した際の「損」などの特別損失は、たまたま・今回だけの損なのであって、これから先はないはずの損です(不動産業の会社は除く)。
ゆえに銀行は、税引前当期純利益も重要ではありますが、特別損失が混じっていない営業利益や経常利益をより重要なものとして見ています。
このことから、会社は「ほんとうは特別損失なのに販売管理費として経理している」ようなことがないかに気をつけなければいけません。
たとえば、今年たまたま大きな修繕費があった場合には、販売管理費の「修繕費」とするのではなく、特別損失の「修繕費」とする。
結果として、税引前当期純利益は赤字でも、営業利益や経常利益が黒字になる可能性があります。
特別損失については、販売管理費からきちんと切り出して経理をするようにしましょう。
《方法3》決算予測をつくる
《方法1》をほどこしても赤字、《方法2》をほどこしても営業利益や経常利益が赤字だと言うのなら。
次に考えるべきは、「決算は黒字」にできるかどうかです。
具体的には、決算予測をつくります。もし、試算表が6ヶ月分できている状況であれば、残りの6ヶ月の収入・費用を予測する。そのうえで、決算での利益が黒字になるかどうかです。
試算表が赤字でも、最終的に決算で黒字になる予測を提示できれば、銀行へのアピールになるでしょう。
それが予測も無しに、ただただ「いまは赤字ですががんばります」では、説得力もないものです。
銀行融資以前に、ずっと赤字では困るのですから、決算予測自体が会社にとっては欠かせないものでもあります。赤字を解消するための足がかりとして、決算予測をつくりましょう。
また、決算予測とあわせて、予測資金繰り表をつくることも大切です。
決算予測は「収入 − 費用 = 利益」の計算であるのに対して、予測資金繰り表は「入金 − 出金 = 残金」の計算です。利益と残金とは必ずしも一致しませんので、別に考える必要があります。
銀行から融資を受けようとするときには、予測資金繰り表のなかで「借りたおカネを滞りなく返済できる」ことを表現する。
つまり、返済(出金)しても、おカネ(残金)はだいじょうぶだと示すことで、銀行は安心をして融資ができるようになります。
《方法4》黒字決算の根拠を示す
いましがた、決算予測をつくる、というお話をしました。そのポイントは「いまは赤字でも、決算は黒字になる」でした。
ところが、決算予測を見た銀行が考えることは「ほんとうかなぁ?」でもあります。ほんとうに予測どおりになるのか、あやしんでいるわけです。
そこで、会社としては「できるだけの根拠」を示すようにしましょう。
決算予測をつくり、それを提出するだけではなく。予測した数字の根拠になるものもいっしょに提示・提出するのです。
たとえば。売上については、受注一覧や受注書などを提示できると、売上予測の根拠になります。
また、経費についてコスト削減を考えているのであれば、削減計画を提示するのもよいでしょう。削減の内容、時期、担当者などを明記した計画であれば、より具体性がありますから説得力が出ます。
いずれにせよ。決算予測が「絵に描いた餅」だと思われないように、できるだけの根拠を示す、ということです。
《方法5》早く提出する
試算表の提出は早くしましょう。ここで言う「早く」とは、「タイムリー」と同義です。
何ヶ月も前の試算表を出すのでは遅すぎます。そこまでひどくなくても、できるだけ早く、タイムリーに提出できるかどうかが大切です。
試算表が赤字のときは、とくに。
なぜなら、業績が悪い会社は「粉飾(利益の水増しなど)」を試みることが多いからです。
粉飾をするには、検討・処理するにあたって時間がかかります。ゆえに、試算表を提出するまでに時間がかかるということは、粉飾をしようとして時間がかかっているのではないか? と誤解をされる可能性があるのです。
すると、試算表の赤字以上の赤字を疑われることにもなりかねません。実はもっと赤字があるのを粉飾しているのではないか? と。
もっとも、黒字・赤字にかかわらず、試算表はできるだけ早くが基本です。
粉飾以前に、試算表の作成・提出が遅いだけで、銀行からの評価が下ることを覚えておきましょう。この会社の管理能力・管理意識は低いのだろうなぁ、ということです。
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まとめ
そもそも、銀行融資は「決算書でおおむね決まる」ものです。それに対して、試算表は「決算書の補足的な位置づけ」だと言えます。
ただ、それでも試算表もまた黒字であるに越したことはありません。試算表が赤字だ… というときの対応方法を押さえておきましょう。
- 費用をならす
- 特別損失を切り出す
- 決算予測をつくる
- 黒字決算の根拠を示す
- 早く提出する