返せないようなおカネを借りてはいけない、という話がありますが。
返せるかどうか? を考えなくてもよい借金もある、というお話をしていきます。
返せるかどうか?を考えなくてもよい、という暴論。
本記事は、会社・事業における借入・借金に関する記事です。個人のローン・借金に関する記事ではありません。
返せないようなおカネを借りてはいけない、という話があります。返済能力を超えてまで借金をしてはいけない。そういう話です。
これに関連して。返せるかどうかわからない、返せるかどうか不安だから借金はしない、という話があります。返済能力に不安がある。そういう話です。
このように、「返せるかどうか?(返済能力)」を考えることはだいじなことではありますが。いっぽうで、「返せるかどうか?」は将来の話でもあり、考えてもわからないことでもある、というのが現実です。
この点で。実は、「返せるかどうか?(返済能力)」を考えなくてもよい借金があることは、理解をしておいたほうがよいでしょう。
中小零細企業の社長、あるいは、個人事業者であればとくに、です。
先に結論をお話しておくと。「返せるかどうか?(返済能力)」を考えなくてもよい借金とは、銀行からの「余裕資金の借入」です。
余裕資金とは文字どおり、「余裕をもつため」に手元に置いておくおカネを言います。そのための借金であれば、「返せるかどうか?(返済能力)」を考える必要はない。
この「余裕資金」について、このあと次のようなお話をしていきます ↓
- 返せるかどうか?を考えなくてもよいのはなぜか
- そもそも余裕資金を借りる必要はあるのか
- 余裕資金なんて借りることはできるのか
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
返せるかどうか?を考えなくてもよいのはなぜか
冒頭、「返せるかどうか?」を考えなくてもよい借金がある、という話をしました。具体的には、銀行からの「余裕資金の借入」です。
とはいえ。返せるかどうかを考えないなんて、危ないのではないか? とんだ暴論ではないのか? と、思われるかもですが。
決して危ないものでも、暴論でもありません。
なぜならば、余裕資金の借入は「借りたおカネで返済をすればよいから」です。これは言われてみれば当たりまえのことなのですが、意外と多くの人が見落としていることでもあります。
借金をすると、借金ばかりが増えているかのように錯覚をしているのです(借金が必要以上に嫌われている原因でもある)。
余裕資金の借入に限らず、借金をすると「借金が増える」と同時に、それと同じだけの「おカネ」も増えます。たとえば、1,000万円の借金をすると、同時に 1,000万円のおカネが増える。当たりまえのことですが、再認識をしておきましょう。
あとは、その借りたおカネを使うか使わないか? です。
日ごろの仕入や経費の支払いに充てる、なにかしらの設備投資に充てるなどして、借りたおカネを使う場合。この場合には、返済するためのおカネを稼ぐ必要があります。
つまり、「返せるかどうか?(返済能力)」を考えなくてはいけない、ということです。
これに対して、なにに使うこともなく、借りたおカネを手元に置いている場合はどうでしょう。手元に置いてあるおカネをそのまま返済に充てればよいのですから、「返せるかどうか?(返済能力)を考える必要がありません。
もちろん。がまんがならずに、ムダ使いをしてしまった… などという場合には、返せるかどうかを考えなければいけなくなりますが。
がまんができているうち、使わずにいるうちは、返せるかどうかを考えなくてよいのが「余裕資金の借入」なのです。
借入をしたら利息を支払わなければいけません。したがって、利息分のおカネは別途用意する必要はあります。
とはいえ、銀行融資を前提にする限り、そして、低金利の現状を見る限り、利息支払のインパクトは元金返済ほどに大きなものではないはずです。
そもそも余裕資金を借りる必要はあるのか
余裕資金の借入が、「返せるかどうか?(返済能力)を考える必要がないことはわかった。
けれども。そもそも、余裕資金を借りる必要があるのか? 利息を払ってまでおカネを余分に持つ必要などあるのか? と、考えるのであれば。
余裕資金が必要だと言える3つの場面を想像してみるとよいでしょう。
まず1つめは、「ピンチ」です。会社・事業を続けていると、「不測の事態」「想定外」などと呼ばれるピンチが起こりえます。
そのときにおカネが無いとどうでしょう? 言うまでもなく会社はつぶれてしまいます。そのときに借入をするのはひとつの方法ですが、銀行はつぶれそうな会社におカネを貸したがりませんし、借入をするにも時間がかかることは理解をしておきましょう。
結果として、もともとおカネが無いばかりに、ピンチを乗り切れませんでした… ということはあるわけです。ではもしも余裕資金を持っていたとしたら? ピンチを乗り切ることができたかもしれません。
ゆえに、ピンチに備えて余裕資金を持つ、という考え方があります。
続いて、余裕資金が必要だと言える2つめの場面は「チャンス」です。会社・事業を成長させるにあたって、設備や人材に投資をすべきタイミングがあります。
そのときにおカネが無いとどうでしょう? 無い袖は振れませんから、チャンスを見送ることになります。そのときに借入をするのはひとつの方法ですが、借入できるかは銀行しだいです。
また、借入できたとしても時間がかかりますから、そのあいだにタイミングを逸している… ということもあるでしょう。
ゆえに、チャンスに備えて余裕資金を持つ、という考え方があります。
加えて、余裕資金が必要だと言える3つめの場面は「自転車操業」です。手元のおカネがいつもカツカツで、社長が資金繰りに日々奔走をしているというケース。
この会社はいったいだれが「経営」をするのでしょうか? 会社の明日をだれが考えればよいのでしょうか? 経営をすべき人は社長しかいないのですから、その社長が資金繰りという後ろ向きな仕事をしていたのでは会社に明日はありません。
日々奔走しないまでも、近い将来の資金繰りに不安を感じていることもストレスとなって社長を拘束することになります。社長が経営を考える・実行するためには、おカネの不安からできるだけ解放されることがベストです。
ゆえに、自転車操業から逃れるために余裕資金を持つ、という考え方があります。
余裕資金なんて借りることはできるのか
余裕資金の借入が、「返せるかどうか?(返済能力)を考える必要がないことはわかった。そして、余裕資金の必要性もわかった。
ところで、余裕資金の借入なんてできるのか? との疑問もあるでしょう。
なにしろ、銀行から借入をするには「資金使途」と呼ばれるものが必要になるからです。資金使途、つまり、「おカネの使いみち」が必要なのに、余裕資金という「使わないおカネ」は借りられるのか?
結論としては、借りられます。
資金使途には、大きく「設備資金」と「運転資金」とがあり、余裕資金は「広い意味での運転資金」に含まれる、と考えます。
運転資金とは、日ごろの仕入や経費の支払いに充てられるおカネを言いますが、ギリギリの運転資金による資金繰りでは「いつおカネが足りなくなるか」が不安でしかたありません。
実際におカネが足りなくなってしまえば、会社はつぶれてしまうのですから、「運転資金+α」のおカネを持つことが資金繰りには欠かせません。このときの「+α」に当たるのが「余裕資金」です。
銀行も、会社が余裕資金を持つことの必要性はわかっていますから、「運転資金+α」のおカネを借りることができます。
月商の1ヶ月分くらいの余裕資金をイメージして、運転資金とあわせて融資を受けるようにするとよいでしょう。
そのあたりについて、詳しくはこちらの記事もどうぞ ↓
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まとめ
「返せるかどうか?」を考えなくてもよい借金がある、などと言うと。それは暴論だ! とのお叱りを受けそうなところでもありますが。
それでも、銀行からの「余裕資金の借入」という借金のしかたがあることを知っておいて損はありません。
必要になってからでは難しいのが銀行融資です。必要なくても借りておく、借りられるときに借りておく「余裕資金」という選択肢を持ちましょう。