銀行融資は受けられる? という相談をするときに。決算書無しで相談をすることはできないし、相談を引き受けることもできません。
銀行融資の相談には「決算書が必要」である理由について、お話をしていきます。
決算書無しで相談をする人、決算書無しで相談を受ける人
日ごろ、わたしが銀行融資のお手伝いをしているなかで。「これはムリ、お手伝いをできない」というケースのひとつに「決算書無し」が挙げられます。
つまり、この場に決算書が無い・持ってきていない状態で「銀行から融資は受けられるか?」という相談。そのような相談をするのはよくないし、そのような相談を引き受けるのもよくありません。
なぜなら、銀行融資が受けられるか? の相談には「決算書が必要」だからです。決算書がなければ、融資が受けられるか(受けられそうか)の判断はできません。
というわけで。銀行融資が受けられるかの相談には、なぜ決算書が必要なのか? その理由についてお話をしていきます。具体的には、次の3点です ↓
- 決算書が融資審査の主要材料だから
- いいことばかりを言いがちだから
- 言っていることが事実とは限らないから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資は受けられる?の相談には「決算書」が不可欠である3つの理由
《理由1》決算書が融資審査の主要材料だから
銀行が融資の可否を判断する材料はいろいろあります。決算書はもちろん、事業の内容や経営者の資質、従業員のようす、などなど。いろいろです。
そのなかで、判断のおおむね 70%以上を占めるのが「決算書」になります。決算書の内容の良し悪しで、ほぼほぼ融資の可否は決まるのです。
だから、銀行融資の相談には「決算書が不可欠」なんだ、となります。
ではなぜ、銀行はそんなにも決算書を重視しているのでしょうか? それは、「貸したおカネを返済してもらえるかどうか」をたしかめるためです。
とはいえ。貸したおカネを返済してもらえるかどうかは「将来」のこと。「過去」である決算書を見ても答えは出ないのではないか? と思われるかもしれません。
けれども、種をまかなければ芽が出ないように。芽が出なければ花が咲かないように。将来は過去の延長線上にある、とも言えます。
そう考えると。「将来どうなるか、返済してもらえそうか」を、決算書から判断するのは合理的です。
銀行は、決算書に掲載されている「過去の数値」から、種はまかれているか、芽は出ているか、花は咲きそうかを見ている。
決算書が赤字の会社は、将来も赤字になりそうであり。決算書が黒字の会社は、将来も黒字になりそうである。端的に言えば、そういうことです。
にもかかわらず。赤字の決算書なので見せたくない、と言う社長がいます。ですが、赤字だろうとなんだろうと「過去」がわからなければ「将来」を判断する材料がないのは、いまお話をしたとおりです。
だったら、計画書を見せればいい。と、決算書を見せずに、計画書ばかりを見せて、融資の相談をしようという社長がいます。
ムリです。いくら計画書の内容が良くても(黒字でも)、それは絵に描いた餅に過ぎないかもしれません。やはり、過去である決算書を見たうえで、計画書の内容が実現できそうかを考えることになります。
いずれにせよ、決算書無しで相談をされても、融資の可否判断はできません。銀行にとって決算書が融資審査の主要材料だから、と理解をしておきましょう。
過去と将来のあいだに「現在」があります。だったら、現在の状態を示す「試算表」はどうなのか? 試算表を見て相談は受けられるのか?
結論として、それでもやはり決算書が必要です。試算表は「試算」にすぎないから、というのが理由になります。銀行もまた、そう考えています。
実際、精度が低い試算表も少なくありません。試算表を融資相談の材料として使いたいのであれば、精度を高めるようにしましょう。
《理由2》いいことばかりを言いがちだから
決算書無しの状態で、銀行融資の相談をしようとすると。相談者(社長)は、いいことばかりを言いがちだ、という傾向があります。
人間、良くないことや都合の悪いことはあまり話をしたくないものです。決算書についても例外ではなく、「良くない数字・都合の悪い数字」の話を積極的にしよう、とは考えにくいものでしょう。
結果として、いいことばかりを言うものですから、肝心の情報が伝え漏れることになります。相談をされるほうも正しい判断ができるはずもありません。
たとえば。直前期の決算は黒字でした、という話をされたとしても。その前は赤字続きで、貸借対照表は「債務超過(資産よりも負債が多い)」かもしれない。
債務超過は銀行融資を受けるにあたっての障害になりますから、相談をするうえではだいじな情報ですが。いいことばかりを言いがちだとすれば、そのだいじな情報は伝え漏れる可能性があります。
また、「特別利益はどのくらいでしたか?営業外収益はどのくらいでしたか?」とたずねると、とたんに黙ってしまう社長もいます。
いくら最終利益が黒字でも、その黒字が本業のチカラではなく、特別利益や営業外収益によるものだとすれば、銀行から融資を受けるのは難しいのです。社長はそれを知らないのか、いいことばかりに目を奪われているのか…
この点。決算書さえあれば、相談をされる側は見ればわかります。相談者がどれだけいいことばかりを言ったとしても、相談をされる側は決算書を粛々と精査するばかりです。
したがって、正しい回答を得ようとするなら、いいことばかりを言っているのでは無理。決算書無しでは無理であることを覚えておきましょう。
《理由3》言っていることが事実とは限らないから
決算書なんか無くったって、オレは(ワタシは)数字を覚えている! とおっしゃる社長もいます。
ところがこの場合、言っていることが「事実」かどうかはわかりません。と言っても、決して社長が口にする数字を疑っているわけではなく。
そのような社長が「売上は〇〇万円、利益は〇〇万円」などと言うのであれば、そのとおりなのでしょう。決算書に掲載されている数字とはおおむね一致しているはずです。
ただ、それとは別に。そもそもその数字は正しいのか?事実にもとづいている数字なのか? という疑問があります。
たとえば。売上は〇〇万円と言うけれど、そのなかには架空の売上があるかもしれません。いわゆる「粉飾」です。
同じように。利益は〇〇万円と言うけれど、ほんとうは掲載すべき費用を隠しているかもしれません。
このあたりのことは、「売上は〇〇万円、利益は〇〇万円」と聞くだけではわかりませんが、決算書を見ればわかる可能性があります。
たとえば、売掛金がミョーに多い、増えているとか。たな卸資産がミョーに多い、増えているとか。未払金がミョーに少ない、減っているとか。決算書を見ていくと、「粉飾の跡」はあるものです。
粉飾、粉飾って、失礼な。ウチは粉飾なんてしていない! と思われるかもしれません。
だからこそ、決算書はきちんと見せましょう。世の中には粉飾をして融資を受けようとする会社があります。実際に粉飾を会社がある以上、銀行としては警戒せざるを得ない、確認をせざるを得ない。
そのときに、決算書が必要なのです。
ちなみに。じぶんは粉飾をしていなくても、銀行から粉飾を疑われているということもあります。悪意なき粉飾、自覚なき粉飾にも気をつけましょう ↓
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まとめ
銀行融資が受けられるか?の相談には、決算書が必要です。
この場に決算書が無い・持ってきていない状態で「融資が受けられるか?」の相談をしないようにしましょう。また、そのような相談があっても引き受けないようにしましょう。
決算書がなければ、融資が受けられるか(受けられそうか)の判断はできませんし、判断してはいけません。
- 決算書が融資審査の主要材料だから
- いいことばかりを言いがちだから
- 言っていることが事実とは限らないから