事業性評価による融資を「進めるように」と要請する金融庁。いっぽうで、それをなかなか思うようには進められない銀行。
そこで、事業性評価による融資が進まない「銀行側の原因」を解消するために会社ができること、についてお話をしていきます。
借り手にメリットがある「事業性評価による融資」
会社・事業における銀行融資について。最近のキーワードとして「事業性評価による融資」が挙げられます。
事業性評価による融資とは?
財務データ(決算書)や担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の「事業の内容」や「成長可能性」を適切に評価することによる融資です。
これにより、決算書の内容が良くなかったり、担保・保証が無しであったとしても、融資を受けられる可能性があります。これは借り手にとってのメリットでもある、と言えるでしょう。
また、もともと融資を受けられるような会社でも。事業性評価によって、融資条件の改善(金利の引き下げ、保証人の解除など)につながることがあります。これも借り手にとってのメリットです。
その事業性評価による融資を「進めていくように」との金融庁からの要請があるいっぽう。なかなか思うようには進んでいない、という現状もあります。
では、なぜ進まないのか? この点、「銀行側の原因」としては、おもに次の3点です ↓
- ヒアリングをしようにも会社に嫌がられる
- 興味を持つのは業績が悪い会社ばかり
- 時間がかかるうえに、内容に自信が持てない
これらの原因を解消することができれば、借り手にメリットがある「事業性評価による融資」を進めることもできるはず。
そこで、事業性評価による融資が進まない「銀行側の原因」を解消するために会社ができること、についてお話をしていきます。
事業性評価による融資が進まない「銀行側の原因」を解消するために会社ができること
《原因1》ヒアリングをしようにも会社に嫌がられる
事業性評価による融資について、冒頭で次のようにお話をしました ↓
”借り手企業の「事業の内容」や「成長可能性」を適切に評価する”
これらの評価をするためには、銀行から会社に対しての「ヒアリング」が必要になります。決算書などの「数字」を眺めているだけでは、「事業の内容」や「成長可能性」をじゅうぶんに理解することはできないからです。
ところが。ヒアリングをされる会社のほうは、「なんかいろいろ聞かれてメンドーだなぁ」と嫌気します。結果として、きちんとしたヒアリングができません。
また、「ほかの銀行からはそんなこと聞かれてないし…」とヒアリングを拒否する会社もあります。
というわけで。銀行がヒアリングをしたくてもできない、会社に嫌がられてしまうから。というのが、事業性評価による融資が進まない原因のひとつめです。
これに対して、会社にできることはなんなのか?
それは、会社が「事業性評価による融資」のメリットを理解することです。自社にメリットがあることを理解できれば、少々メンドーでも「ヒアリングに応じよう」となるでしょう。
では、事業性評価による融資のメリットとは? 次のようなことが挙げられます ↓
- 決算書の内容が良くない、担保・保証が無いとしても、融資を受けられる可能性が高まる
- 融資条件の改善(金利の引き下げ、保証人の解除、当座貸越の設定など)につながる
これらは、会社にとって小さなメリットではないはずです。メリットを受けたいと考えるのであれば、銀行からのヒアリングにも応じるようにしましょう。
《原因2》興味を持つのは業績が悪い会社ばかり
さきほど、事業性評価による融資のメリットとして、「決算書の内容が良くないとしても、融資を受けられる可能性が高まる」を挙げました。
このメリットを求めて、決算書の内容が悪い会社、業績が悪い会社ばかりが「事業性評価による融資」に興味を持つ、との状況があります。
事業性評価とは言っても、業績が良いに越したことはありません。あまりに業績が悪い場合にまで、担保・保証を取らないわけではありません。あくまで、財務データや担保・保証に「必要以上に依存しない」だけです。
繰り返しになりますが。事業性評価と言えども、業績は良いほうがいいし、必要があれば担保・保証も取ります。
ということになると、融資できる会社は限られる。業績が悪い会社ばかりでは、事業性評価による融資もなかなか進まない… これもまた、事業性評価による融資が進まない原因のひとです。
これに対して、会社にできることはなんなのか?
業績が良いときほど、事業性評価による融資にチャレンジをすることです。
「いまでもじゅうぶんに借りられているから」と事業性評価による融資には興味を示さない会社もありますが。事業性評価による融資のメリットは、借りられるかどうかだけではないことは前述したとおりです。
事業の内容や成長可能性を、銀行により理解してもらうことで、融資条件の改善を期待することができます。金利の引き下げ、保証人の解除、当座貸越の設定など、やはり小さなメリットではありません。
また、会社の業績が落ち込んだときにも、銀行に話を聞いてもらえるというメリットもあります。
会社を続けていれば、いつも良いときばかりではありませんから、悪いときのことも考えておかなければいけません。
一般に、悪いときには銀行からの融資は受けにくくなるものです。銀行との関係性が希薄だと、業績が悪いとわかれば話も聞いてくれないことがありえます。
この点、事業性評価が進んでいれば。銀行は、より会社のことを理解できていることから、業績が落ち込んだときにも話を聞いてくれる余地があります。事業性評価には、銀行と会社の関係性を濃密にする効果もあるわけです。
業績が良い会社ほど、事業性評価による融資に取り組むことをおすすめします。具体的な取り組み方については、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
《原因3》時間がかかるうえに、内容に自信が持てない
再三のお話になりますが。事業性評価とは、「事業の内容や成長可能性を評価」することです。
事業の内容も成長可能性も、決算書などの「数字」を見ているだけでは理解できないので、「ヒアリング」も必要になります。
ところが。そのヒアリングも、いったいなにをどのように聞けばよいものか? 聞いた話をどう取りまとめればよいか、どう評価につなげればよいのか? というのが、銀行側の悩みでもあるようです(実際にそのように聞いています)。
いろいろと時間もかかるうえに、内容に自信も持てない。融資につながるかもわからない。だったら事業性評価はさておき、従来どおりの融資を進めたほうがいい。ノルマだってあるんだし… みたいな。
結果として、事業性評価による融資が進まない原因のひとつにもなっています。
これに対して、会社にできることはなんなのか?
言うまでもないことですが、会社の側から情報提供することです。必要な情報を、会社が自主的に取りまとめて銀行に提供する。これなら、銀行側の負担を軽減することができます。
第一段階としては、経済産業省が提供しているツール「ローカルベンチマーク」を使うのがおすすめです。事業性評価に必要な情報を、体系的に漏れなくまとめるのに適しています ↓
これを「たたき台」にして、銀行からのヒアリングを受ける。必要に応じて、ローカルベンチマークを書き換えていく、という流れがスムーズです。
注意をしたいのは、会社がつくったローカルベンチマークを銀行に渡しておしまい、にはしないこと。これでは銀行側の理解が深まらず、結局、事業性評価による融資も進みません。
ローカルベンチマークを銀行(の担当者)といっしょにつくりあげていく、という感覚が大切です。
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まとめ
事業性評価による融資を「進めるように」と要請する金融庁。いっぽうで、それをなかなか思うようには進められない銀行。
ならば、事業性評価による融資が進まない「銀行側の原因」を解消するために会社ができること、に取り組んでみましょう。
事業性評価による融資は、借り手にもメリットがありますから、取り組む価値はじゅうぶんにあります。