コロナ下の銀行融資は、受けやすい状況にあります。
ところが、コロナ後の銀行融資は受けにくくなる。と言える理由についてお話をしていきます。
融資は受けやすい、なんて言っているのは誰?
会社・事業における銀行融資について。本投稿日現在(2020年6月1日)においては、「融資は受けやすい」状況にあると言えます。
やや下火になったとは言え、世の中は「まだまだコロナ下」です。多くの会社・個人事業者が厳しい資金繰りを強いられています。
よって、国や地方自治体が主導のもと、「緊急」かつ「大規模」な融資が実施されているところです。ゆえに、通常よりも「かなり」、融資は受けやすい。
では今後、WithコロナやAfterコロナと言われる時期を迎えたときに、銀行融資はどうなるのか?
融資は受けにくくなる、というのがわたしの考えです。いまの受けやすさがあたりまえだと思っていると、「かなり」受けにくくなる。融資を受けるのに苦労する。そういうレベルです。
というわけで。コロナ後の銀行融資は受けにくくなる!と言える理由について、お話をしてみます。
理由を理解することで、「今後どのように銀行対応すればいいか?」も見えてきますので。ぜひ、押さえておきましょう ↓
- コロナの反動
- 信用保証協会付き融資の変化
- 事業性評価の加速
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
コロナ後の銀行融資は受けにくくなる!と言える3つの理由
《理由1》コロナの反動
コロナ後の銀行融資は受けにくくなる。その理由の1つめは「コロナの反動」です。
冒頭で触れたとおり、コロナ下においては、国や地方自治体が主導のもと、「緊急」かつ「大規模」な融資が実施されています。
誤解を恐れずに言えば、かなりの「大盤振る舞い」です。平時であれば融資が難しいであろう会社・事業でも融資を受けられている現状があります。
コロナ後には、この「反動」があるでしょう。大盤振る舞いの反動として、「締め付け」が起こるはず。
まず、コロナ下では、国・地方自治体の要請によって、銀行は積極的な貸出を余儀なくされています。
そのうえで。コロナによる融資先の業績悪化は著しく、将来の回収不能に備えた費用を見込まねばなりません(いわゆる「貸倒引当金」)。
この費用は、コロナ関連の融資ばかりでなく、既存の融資に対しても影響するものであり。銀行の「与信コストの増加による業績悪化」は報道にもあるとおりです。
また、コロナ関連の融資は、 貸出の期間や据置期間が長く、銀行の手元資金が減少するという一面もあります。
これに、実際の回収不能が加われば、銀行としては「締め付け」ざるを得ないでしょう。というのが「コロナの反動」です。
とはいえ。ただただ締め付けていたのでは、銀行も「商売(融資による利息収入)」になりませんから。融資先を「これまで以上に選別」することで、融資をしていくものと考えられます。
では、なにを基準に選別するのか? ひとつは「利益」です。
「利益=返済原資」と考える銀行は、これまで以上に「利益の有無」を重視します。コロナ下はもちろん、コロナ後も利益が出にくい状況は続くでしょう。
結果として、利益が出る会社・出ない会社は「二極化」します。利益が出る会社は融資が受けやすく、利益が出ない会社は融資が受けにくい。
利益が出にくい状況のなかでも利益を出すために、会社はどう考えればよいのか? 売上至上主義から離れることです。とにかく売上を大きく、という考えをやめる。
商品・サービスの価値を高め、利益率が上がれば、これまでほどの売上は必要ありません。コストを見直すことができれば、やはり、これまでほどの売上は必要なくなります。
コロナを経て、これまでと同じ方法では売上があがらなくなりました。コロナを経て、これまで必要だと思われていたコスト(家賃・交通費など)も、実は不要かもしれないということがわかりました。
そのような変化に対応することで、利益を出す・利益を増やすことにこだわりましょう。コロナ後の融資が受けやすくなるはずです。
[ad1]《理由2》信用保証協会付き融資の変化
コロナ後の銀行融資は受けにくくなる。その理由の2つめは「信用保証協会付き融資の変化」です。
コロナとは別の話になりますが。2018年、中小企業信用保険法という法律が見直されました。
その見直しの内容について端的に言うと、「なんでもかんでも信用保証協会付き融資にはするな」ということです。
それまで(いまもなお残ってはいますが)、貸す側の銀行は「まずは信用保証協会付きで貸します」という姿勢であり、借りる側の会社も「信用保証協会付きだったら借りられる」という姿勢でした。
実際、信用保証協会付き融資は貸しやすく、また、借りやすく。
貸しやすければ、銀行は信用保証協会付きに依存し、銀行としての「目利き」が失われます。借りやすければ、会社も信用保証協会付きに依存し、財務改善・経営改善の努力を怠ることになりかねません。
というように。長らく、信用保証協会付き融資に「依存」する体質が続いたことを受けて、中小企業信用保険法の見直しが行われました。
以来、徐々にではありますが、信用保証協会付き融資は「プロパー融資(信用保証協会付きではない融資)とのバランス」が取られるように変化しています。
そのようすは、保証件数や保証債務残高の減少、プロパー融資との協調商品(プロパー融資との組み合わせでなければ保証が付かない商品)の増加などにあらわれているところです。
コロナ下では、いったん緩んだ「信用保証協会付き融資の変化」ではありますが。コロナ後はふたたび、もとの変化の流れに戻っていくでしょう。
すると、銀行融資を受けるにも、これまでのように「信用保証協会付きばかり」ではなくなります。会社は、プロパー融資も受けられるようにしなければいけません。
そのプロパー融資を受けるのに必要なもののひとつは、さきほども触れた「利益」です。
いまも昔も変わらず、銀行融資を受けるにあたって「利益」はだいじなのですが。コロナ後はよりいっそう「利益」の重要性が高まるものと考えておきましょう。
そして、もうひとつ。利益のほかにも必要となるものがあります。それが、次のお話です。
[ad1]《理由3》事業性評価の加速
コロナ後の銀行融資は受けにくくなる。その理由の3つめは「事業性評価の加速」です。
銀行融資において「事業性評価」という考え方があります。事業性評価とは、「決算書の良し悪しや担保・保証の有無に依存しない。会社・事業の将来性まで評価をしよう」という考え方です。
この「事業性評価」による融資を、金融庁は銀行に要求するようになりました。したがって、各銀行は「事業性評価による融資」に取り組まねばならない状況にあります。
ここで勘違いしてはいけないのが「決算書の良し悪しや担保・保証の有無に依存しない」という部分です。これを見て、「決算書が悪くてもいいのか、担保・保証がなくてもいいのか」と考えるのは違います。
あくまで「依存しない」という話であって、「重要でない」とは言っていません。よって、依然として決算書の良し悪しはだいじだし、利益が出ているほうが良いのに変わりはないのです。
事業性評価の正しい理解としては、「決算書の良し悪しや担保・保証の有無、そこにプラスして、会社・事業の将来性も見ましょう」ということになります。
コロナ後は、銀行が「融資先をこれまで以上に選別する」と前述しました。選別をする際の基準のひとつが「利益」であり、もうひとつが「事業性評価」だと理解しておきましょう。
では、銀行が取り組まねばならない「事業性評価」について。会社としてはどう対応すればいいのか?
「協力」です。銀行が取り組もうとしている事業性評価に、会社が「協力」できるようにすることです。なにより、事業性評価に必要な「材料」を持っているのは会社のほうなのですから。
事業性評価に必要な材料とは、ひとことで言えば「非財務」の情報になります。非財務の情報について、具体例を挙げると次のとおりです ↓
- 経営理念
- 後継者の有無
- 事業の強み・弱み
- 業界動向・競合他社との比較
- 主要取引先と取引状況
- 従業員の定着率、人材育成、組織構成
- 事業計画の有無と進捗管理の状況
- 研究開発の体制と状況
- 業務フロー(バリューチェーン)
- 商流(ビジネスモデル)
などなど。これらの非財務情報は、つまるところ「数字以外の情報」です。だから銀行は、数字が羅列された決算書や試算表を見ているだけでは事業性評価ができません。
なので、会社のほうから積極的に情報提供することが大切になります。銀行は事業性評価を求められているのですから、事業性評価に協力してくれる会社に対して、より積極的に融資をすすめることでしょう。
また、同じ黒字の会社だとしても。事業性評価に協力してくれる会社と協力してくれない会社があれば、協力してくれる会社のほうを選ぶはずです。
というわけで。コロナ後に受けにくくなる融資への対策として、事業性評価への協力を進めていきましょう。
事業性評価に協力をするための「ツール」もいろいろあります。コロナ後を見据えて、それらツールの使い方も押さえておくのがおすすめです ↓
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まとめ
コロナ下の銀行融資は、受けやすい状況にあります。
ところが、コロナ後の銀行融資は受けにくくなる。その理由を押さえておきましょう。理由を理解することで、「今後どのように銀行対応すればいいか」も見えてきます。
- コロナの反動
- 信用保証協会付き融資の変化
- 事業性評価の加速