いつも保証協会付き融資ばかりで、いっこうにプロパー融資が受けられないんだよね… という会社があります。
そのような会社には「やむを得ず保証協会付き」と「そうでもないのに保証協会付き」の2つのパターンがありますよ。というお話です。
なぜウチの会社は保証協会付きばかりなのか?
会社・事業における銀行融資について。
民間銀行からの融資は、大きく2つに分かれます。「信用保証協会付き融資(以下、保証協会付き融資)」と「プロパー融資」の2つです。
保証協会付き融資とは、会社が銀行から融資を受ける際、信用保証協会の「保証(会社が返済できないときには信用保証協会が肩代わり返済する)」を付ける融資です。
ちなみに、信用保証協会とは。各都道府県に1つずつ、加えて横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市に1つずつ。全国にぜんぶで 51ある公的な機関です。
これに対して、「プロパー融資」とは。さきほどの信用保証協会の保証が無い融資。言い換えると、銀行がすべてのリスクを負う融資になります。
会社が返済できないときには信用保証協会に肩代わりをしてもらえることから、銀行は、保証協会付き融資のほうが貸しやすい。
ゆえに、保証協会付き融資は「借りやすい」というメリットがある反面、「保証料の支払負担が大きい」「上限額が決まっている」といったデメリットがあります。
だから会社は保証協会付き融資ばかりではなく、「プロパー融資も受けられることを目指すべき」です。
ところが。いつも保証協会付き融資ばかりで、いっこうにプロパー融資が受けられないんだよね… という会社も少なからずあります。
それはなぜなのか? どうしたらプロパー融資を受けられるのか? という点で。保証協会付き融資ばかりの状況には「2つのパターン」があることを覚えておきましょう。
自社がいずれのパターンにあてはまるのかを知ることが、保証協会付き融資ばかりの状況を脱するのに役立ちます。では、「2つのパターン」とは? こちらです ↓
- やむを得ず保証協会付き
- そうでもないのに保証協会付き
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
やむを得ず保証協会付き、のパターン
いつも保証協会付き融資ばかりになってしまう会社、1つめのパターンは「やむを得ず保証協会付き」です。
ここで言う「やむを得ず」とは。銀行から見て、保証協会付きで「やむを得ない」ということになります。
言い換えると。銀行から見て、「プロパー融資をできるような会社ではない」ということです。さらに言えば、決算書の内容が悪くて、プロパー融資はできない。
冒頭でお話をしたとおり、保証協会付き融資は「信用保証協会の肩代わり返済」がある融資です。いっぽうで、プロパー融資に肩代わりはありません。会社が返済できなければ、銀行が100%損をかぶります。
だから銀行は、プロパー融資には慎重なのです。決算書の内容が良い会社、がプロパー融資の対象だと考えています。では、プロパー融資が受けられるほど決算書の内容が良い会社とは?
具体的には、次の3つの要件を満たしているような会社です ↓
- 税引後利益 + 減価償却費 > ゼロ
- 資産の総額 > 負債の総額
- 借入金残高 ÷(税引後利益 + 減価償却費)< 10
これらの要件をすべてクリアしているのは当然として。いずれの要件も「余裕をもってクリア」できているほど、プロパー融資は受けやすくなります。
上記の要件について、「もっとくわしく知りたい」という方はこちらの記事もどうぞ ↓
ひるがえって、保証協会付き融資ばかりだという会社は、「3つの要件をクリアできていない会社」になります。そういう意味で、「決算書の内容が悪い会社」です。
したがって、いつも保証協会付きばかりで、プロパー融資が受けられない… というのであれば。まずは、自社の決算書の内容を確認してみましょう。
そのうえで、3要件をクリアできていないようなら、決算書の内容を良くすることです。端的に言えば、利益を出すこと・利益を出し続けることです。
すると、決算書の内容は必ず良くなります。
税金の支払いを惜しんで、利益を出すのを躊躇している会社もありますが。税金を減らすことができたいっぽうで、プロパー融資が遠のいていることは覚えておきましょう。
そうでもないのに保証協会付き、のパターン
いつも保証協会付き融資ばかりになってしまう会社、2つめのパターンは「そうでもないのに保証協会付き」です。
ここで言う「そうでもないのに」とは。前述した「やむを得ず保証協会付き」のハナシを受けて、「決算書の内容が悪いわけでもないのに」ということです。
実際、さきほどお話をした「3つの要件」をすべてクリアしているのに、プロパー融資を受けられない… という会社があります。
決算書の内容が良いのだから、銀行だって安心してプロパー融資ができるはずなのに。それでも、保証協会付きばかりなのはなぜなのか?
ひとつは、お付き合いする銀行として「分不相応」であることが挙げられます。
自社が中小企業(とくに小規模零細企業)であることを前提にすれば、都市銀行から融資を受けるのは「分不相応」の典型です。
都市銀行の融資対象は、基本的に大企業であり、中小企業ではありません。大企業に比べると決算書の内容が悪い中小企業に融資をせず、安心な大企業にだけ融資をしていれば商売が成り立つのが都市銀行です。
それでも中小企業に融資をするのであれば、「リスク(回収不能)」を避けるために保証協会付き融資。というのが、都市銀行の常套手段になります。
絶対にムリ、とまでは言いませんが。中小企業が都市銀行からプロパー融資を受けるのは難しいことは理解しておきましょう。
それから、もうひとつ。決算書の内容が悪いわけでもないのに、都市銀行でもないのに、プロパー融資が受けられない理由として「各銀行の方針」が挙げられます。
銀行にはそれぞれ融資に対する方針があり、「融資は基本、保証協会付き。積極的にプロパー融資はしない」という銀行もある。そういうことです。
したがって、いくら決算書の内容が良くても、なかなかプロパー融資を受けられない… ということはあるわけです。言うなれば、「銀行側の事情」によって。
そこで会社は、銀行側の事情によりプロパー融資が難しい場合には、お付き合いする銀行を再考することになります。でも、どうしたら、プロパー融資に積極的な銀行を見極めることができるのか?
そのヒントは「金融仲介機能のベンチマーク」にあります。
金融仲介機能のベンチマークとは。金融庁の検査において各銀行の取り組み評価するための指標です。指標はぜんぶで55。うち5つは全銀行に共通、残りの 50は各銀行が「選択」をして公表しています。
その「選択」のなかのひとつ、「中小企業向け融資のうち、信用保証協会保証付き融資額の割合、及び、100%保証付き融資額の割合」に注目をしてみましょう。
これはウラを返せば、「プロパー融資の割合」がどれだけあるか? です。保証協会付きを抑えて、積極的にプロパー融資をしている銀行は、この指標を選択しているはずです。
というわけで。自社のまわりにある銀行の「金融仲介機能のベンチマーク」を比較して、プロパー融資に積極的な銀行を探してみるとよいでしょう。
なお、金融仲介機能のベンチマークは、ネットで「〇〇銀行 金融仲介機能のベンチマーク」などのワードで検索できます。うまく見つからない場合には、銀行に「どこに公表されているか」を聞けば教えてくれます。
銀行融資におすすめのメニュー
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まとめ
いつも保証協会付き融資ばかりで、いっこうにプロパー融資が受けられないんだよね… という会社があります。
そのような会社には「やむを得ず保証協会付き」と「そうでもないのに保証協会付き」の2つのパターンがあることを覚えておきましょう。
自社がいずれのパターンにあてはまるのかを知ることが、保証協会付き融資ばかりの状況を脱するのに役立ちます。