事業性評価による融資において。「動産・債権」「知的資産」を銀行に説明できる会社は融資が受けやすくなるものです。
というわけで。それぞれの「内容」と、銀行に伝えるべき「ポイント」についてお話をしていきます。
ウチの会社には関係ない、なんて言わないで。
会社が銀行融資を受けようとするうえで、忘れてはいけないものとして「事業性評価」が挙げられます。
事業性評価とは、「決算書の良し悪しや、担保・保証の有無に依存せず、事業の内容や成長可能性を評価」することです。この事業性評価による融資を、金融庁は銀行に求めています。
したがって、「決算書の良し悪し」や「担保・保証の有無」ばかりではなく、「事業の内容や成長可能性」にも銀行は目を向けているのです。
会社としては、そのあたりの情報を銀行に提供できるかどうかで、今後の融資の受けやすさが変わってくる。ということを覚えておきましょう。
とはいえ、事業の内容や成長可能性と言われても。いったい、どういう情報を銀行に伝えればいいのだろう? と迷われるかもしれません。
実際、伝えるべき情報はいろいろありますが。本記事では、「動産・債権」と「知的資産」についてお話をしてみます。
「動産・債権」にしても「知的資産」にしても、「お固い言葉」であることから、「ウチの会社には関係ないかな?」と思われるかもですが。
決して、そんなことはありません。大小問わず、すべての会社に関係のあるハナシになります。それぞれの「内容」と、銀行に説明をするときの「ポイント」とを押さえておきましょう。
実は、多くの会社がうまく説明できていないところですから。説明ができれば、他の会社との「差」がつきます。結果として、融資が受けやすくなる。
というわけで。このあと、「動産・債権」と「知的資産」についてお話をしていきます。
動産・債権とは? 銀行に説明をするポイントは?
動産・債権とは
そもそも「動産」とは。ひとことで言うと、「不動産」以外のすべての資産を言います。ちなみに「不動産」とは、土地や建物のことです。
つまり。動産とは、土地や建物以外の資産、ということになります。
具体的には、現金・預金、売掛金、受取手形、たな卸資産、機械装置、車両運搬具、器具備品などなど。
これらの「動産」は、事業性評価で必要になる「事業の内容」や「成長可能性」と深い関わりがあるものです。どういうことかと言うと、
原材料を仕入れる(たな卸資産)→ 製品をつくる(機械装置) → 製品を売る(売掛金)→ 売掛金を回収する(現金・預金)
という具合に、会社の商売そのものに深く関わる資産が「動産」です。こららの「動産」について、銀行が内容を理解できるかどうか? が事業性評価のカギになります。
なお、「債権(売掛金や受取手形など)」も「動産」の一部です。動産のなかでも、いろいろな意味で重要性が高いことから「債権」としてクローズアップされる機会が多い。と、理解をしておきましょう。
動産・債権を銀行に説明するポイント
では、「動産・債権」について。会社は銀行に対して、なにを・どのように説明をしたらよいのか? そのポイントは、おもに3つです ↓
- 売上先の状況と売上見込み
- 売上債権・たな卸資産の推移
- 不良資産・架空資産
それでは、順番に見ていきましょう。
売上先の状況と売上見込み
かんたんなところで言えば、どのような売上先があるか。売掛金・受取手形といった「債権」の内訳を一覧にすることで説明できます。
このとき、売上先の数が少なく、一定の売上先に金額が集中していれば。その売上先になにかあったときには、大きな売上減少が考えられます。
逆に、売上先の数が多く、金額が分散していれば。売上見込も安定的であり、安心だと考えることができるでしょう。
また、売上先数の増減も、将来の売上見込につながるところです。売上先が増えていれば、将来性が感じられます。減っていれば、だいじょうぶかなぁ…? と将来に不安を感じます。
そのあたりを銀行は見ているし、知りたいんだ、ということを理解したうえで、説明をするようにしましょう。
売上債権・たな卸資産の推移
融資には大きく2つ、「運転資金」の融資と、「設備資金」の融資とがあります。
このうち「運転資金」の融資は、その対象が「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」です。対象の金額分だけ、運転資金として融資をしよう、と銀行は考えています。
ところが。運転資金の金額は常に一定ではありません。常に変動しています。売上債権もたな卸資産も、常に金額は動いていますよね。
ですから、会社としてはその「動き」を、銀行に説明することが大切です。つまり、「売上債権(売掛金・受取手形)」と「たな卸資産」の金額推移を明らかにする。
そう考えると。一定時点の「売上債権」や「たな卸資産」の内訳だけでは不十分です。たとえば、決算日時点の内訳は、決算書に付属する「勘定科目内訳明細書」を見ればわかります。
けれども、その前後の「推移」まではわからないのですから。別途、推移を明らかにするための資料を作成することが必要です。
メンドーだ、ということかもしれませんが。そのひと手間によって、銀行は「運転資金の変動」をつかむことができます。
変動をつかむことができれば。一定時点の運転資金の金額に限らず、「もっとも運転資金が大きくなる金額」の融資を受けられるようにもなるでしょう。会社としては、メリットがあるところです。
不良資産・架空資産
「運転資金」の融資は、その対象が「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」だという話をしました。
であるならば。もしも、「売上債権」や「たな卸資産」のなかに、不良資産や架空資産があれば、除いて考えなければいけません。
不良資産などと言うと。「そんなものはウチには無い!」と思われるかもですが。多かれ少なかれ、あるものです。
たとえば、回収ができない、あるいは回収が危ぶまれる売掛金があるとか。値下げをしないと売れないであろう商品在庫があるとか。
銀行は、そのあたりを知りたいのです。決算書や試算表に載っている数字には、不良資産が含まれているのではないか? と、銀行は考えています。すると、運転資金の融資もしにくくなる。
また、架空資産についても銀行は懸念をしています。それこそ、「そんなものはウチには無い!」と思われるかもですが。それでも、世の中には架空資産による粉飾が絶えないことから、銀行の懸念はしかたのないことです。
会社にできることは、不良資産を明らかにすること。そして、架空資産が無いことを明らかにすることです。
具体的には、これまでお話をしてきたとおり。「売上債権」や「たな卸資産」の内訳と推移を説明しましょう。内訳と推移がわかれば、不良資産や架空資産の存在を明らかにすることにつながります。
なお、たな卸資産については、「現物」を見てもらう。というのもよいでしょう。現物を見ることで、存在の有無を確認できるのと同時に、「なにを売っているのか?」を銀行が理解できるからです。
言うまでもなく、「なにを売っているか?」は、「事業内容や成長可能性」に大きく関わります。実は、意外と銀行は「なにを売っているか?」をよくわかっていなかったりもしますから、気をつけましょう。
知的資産とは? 銀行に説明をするポイントは?
知的資産とは
知的資産とは、数字であらわすことができない資産。決算書や試算表を見ても掲載されていない、けれども価値があると思われる資産のことです。
具体的には、人材・組織力、技術力、知的財産(特許権やブランドなど)、経営理念・経営戦略などなど。
いずれも会社の価値や企業競争力に貢献する資産であり、「事業内容や成長可能性」に関わるものだとわかります。知的資産は、事業性評価には欠かすことができないものなのです。
にもかかわらず、決算書や試算表には掲載されず、目にも見えない(あるいは見えにくい)ことから、銀行としては「よくわからん…」というのが知的資産でもあります。
よくわからんのですから、会社のほうから説明をしてあげることが大切です。説明できれば、その分だけ融資は受けやすくなります。
知的資産を銀行に説明するポイント
知的資産の「範囲」は、とても広く。具体例となると、会社それぞれであり「無数」に及ぶと言えます。
会社としてはまず、自社の知的資産について具体例を挙げる。その具体例を銀行に伝えるところからはじめてみましょう。
意外と、伝えていない・伝えられていないという会社は少なくありません。
その理由として、「自社の知的資産に気づいていないから」というものがあります。どういうものが知的資産に当たるのかがわからない、ということです。
ヒントして、知的資産にあたるものをいくつか列挙してみると、
- ノウハウや技術(特許権、商標権、意匠権など含む)
- 人材(個々の能力、モチベーション、給与水準など)
- 社長の人脈
- 経営理念、経営戦略、社風
- 各種のデータベース
- 業務上のしくみやルール
- 売上先、仕入先、外注先、銀行などとの関係性
ときおり、「銀行担当者と会ってもなにを話してよいかわからない」と言われる社長もいらっしゃいます。そのときにはぜひ、上記のようなことについて話をしてみるとよいでしょう。
また、銀行担当者のほうでも、事業性評価の観点から上記のようなことを質問してきたりするものです。そのときには、メンドーがらず・嫌がらずに回答をするようにしましょう。融資の受けやすさに関わるところです。
先日、テレビを見ていたら。ある小売店のスタッフさんが「お店・商品が好きすぎて入社しました!」と言っていました。こういう「エピソード」を銀行に伝えるだけでも、社員のモチベーションや社風、ブランド力などが伝わるかと思います。
また、知的資産を銀行に説明するときには、「数字に結びつけられるものは結びつける」のもポイントになります。
たとえば、特許権や商標権、意匠権などを所有している会社の場合。それはそれでひとつの価値ですが、数字に結びついていなければ意味がないとも言えます。
つまり、売上に結びついているかどうか? です。特許権や商標権、意匠権などがあるのであれば、それぞれがどの商品に活かされ、いくらの売上につながっているのか。あるいは、今後の売上見込みはどうなのか。
知的資産は、「数字に結びつけられるものは結びつける」ということも覚えておきましょう。具体的な数字によって、銀行はより理解を深めることができるはずです。
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まとめ
事業性評価による融資において。「動産・債権」「知的資産」を銀行に説明できる会社は融資が受けやすくなるものです。
というわけで。それぞれの「内容」と、銀行に伝えるべき「ポイント」とを押さえておきましょう。
多くの会社がうまく説明できていないところですから。説明ができれば、他の会社との「差」がつきます。結果として、融資が受けやすくなるところです。