いざというときになってから資金繰りで慌てないですむように、日ごろから備えておきましょう。
というわけで。備えておくための「考え方」として、「資金繰り心得」をまとめてみます。
いざとなってからでは、遅かりし由良之助。
会社・事業を続けていると、「いざ」というときはあるもので。
本投稿日現在(2020年7月10日)、最近ではなんと言っても「新型コロナウィルス」による影響が挙げられます。
感染の広がりを抑えるために、日本中(世界もですが)に「自粛」が広がりました。多くの会社が事業活動の縮小を迫られて、売上が減少、利益が減少しました。
結果、手元のおカネ(現金預金)が少なくなり、資金繰りに窮している… ということが、いまもなお続いています。
コロナに限らず、地震、台風、豪雨、雪不足など。会社の資金繰りに「いざ」をもたらす要因はいろいろです。
したがって。いざというときになってから資金繰りで慌てないですむように、日ごろから備えておきましょう。備えておくための「考え方」として、「資金繰り心得」をまとめてみました。こちらです ↓
- 現金預金〇万円維持、を決める
- 銀行とのつきあいを切らない
- 資金繰り予定表を備える
- 運転資金の増減を理解する
- 社長個人の貯金を増やしておく
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
いざというときに慌てないための資金繰り心得5箇条
《その1》現金預金〇万円維持、を決める
会社のおカネ、つまり、会社の現金預金について。〇万円の残高を維持しよう! と、明確に決めている会社は少ないようです。
結果としてどうなっているか? と言えば。当然、成り行きです。成り行きの残高になっている。
そして、ほとんどの場合、成り行きの現金預金残高は「少なすぎ」です。会社の「いざ」を考えたときには少なすぎる。
具体的には。現金預金残高が、平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の「1ヶ月〜2ヶ月分未満」という会社がほとんどです(わたしの肌感覚でも統計でも)。
その証左として、コロナの「直後」に多くの会社が、コロナ関連の融資に殺到しました。このままではすぐにでもつぶれてしまう…! ということです。
では、どのくらいの現金預金残高を備えておくのがよいか?
「平均月商の6ヶ月分以上」というのが、いまのわたしの考えです。そのくらいのおカネがあれば、いざというときにも「大慌て」はしなくてすむでしょう。
融資を受けるにしても、落ち着いて行動ができるはずです。
いっぽうで、おカネが無ければ。社長は、融資を含めた「カネ繰り」に縛られることになります。身も心も縛られます。
すると、中長期で事業の方向性を考えたり、中長期で社員のことを考えたりすることが、どうしても難しくなってしまう。それらが後手に回れば、回復が遅れるばかりか、状況はより悪化することも少なくありません。
そのようなことを避けるためにも。いざというときのために、おカネを備えておきましょう。
「平均月商の6ヶ月分以上」かどうかはともかく。日ごろから「現金預金〇万円を維持する」といった、明確な指標を持つことです。
《その2》銀行とのつきあいを切らない
いましがた、現金預金残高について明確な指標を持ちましょう、とのお話をしました。ひとつの参考として、「平均月商の6ヶ月分以上」という指標も提示しました。
とはいえ。そんな金額のおカネをどうやって持つんだ? と思われたかもしれません。
そこで、「銀行融資」です。そもそも資金力に乏しく、資金調達手段にも幅が小さい中小企業にとって、銀行融資は「おカネを備えるため」には欠かせない手段になります。
「現金預金〇万円を維持する」といった明確な指標について、自己資金では厳しいというのであれば。銀行融資を受けることで、おカネを備えることを考えましょう。
この点で。現金預金残高について明確な指標が無い、つまり、成り行き任せにしていると、「銀行融資を受けておカネを備える」という考え方が欠如します。
結果として、会社のおカネが「少なすぎ」になりますから。ここはじゅうぶんに注意をすべきところです。
ところで。日ごろから銀行融資を受けていると、当然、銀行との「つきあい」ができます。融資を受け続けていると、「つきあい」も深まっていきます。
すると、「いざ」というときにも、銀行融資が受けやすくなることも覚えておきましょう。
いっぽうで、日ごろからの「つきあい」がないと。「いざ」というときに、融資を受けるのにも苦労します。つきあいがない分、銀行は「どこのだれだか」もわからず、対応に慎重にならざるをえないからです。
したがって。会社は、日ごろから銀行との「つきあい」を切らないことも考えておきましょう。いざというときにも慌てずにすみます。
[ad1]《その3》資金繰り予定表を備える
資金繰り予定表をつくっていない、という会社があります。ここで言う「資金繰り予定表」とは、向こう1年ていどの「入出金・現金預金残高」の予定を記載した表です。
資金繰り予定表があれば、会社は向こう1年のあいだの入出金状況、現金預金残高の推移をイメージすることができます。
逆に、資金繰り予定表がなければ。会社は向こう1年のイメージがつかないままに資金繰りを強いられることになります。どちらが良いかは、言うまでもないでしょう。
にもかかわらず。資金繰り表を備えていない理由のひとつは、「予定は予定であってアテにならない」との思いがあるからです。未来のことなどわからないのだから、考えてみたところでしかたない。みたいな。
たしかに、それも一理ありますが。資金繰り予定表を「動かしてみる」ことで、いくつかの未来をイメージするのに役立ちます。
たとえば、売上が現状のまま続いたときの資金繰り表をつくってみて。仮に、売上が 50%減少したらどうなるか? 資金繰り表の数字を動かしてみる。すると、数カ月後には資金繰りが破たんしてしまうことがわかった…
このように、売上が 50%減少したとき資金繰りをイメージできれば、早めに対策に動くきっかけにもなるでしょう。
資金繰り予定表は、「(予定が)当たるか当たらないか」が重要なのではありません。来たるべきさまざまな未来をどれだけイメージできるか、未来に備えておけるかが重要になります。
資金繰り予定表を1つだけつくってみるのではなく。その1つをもとにして、数字を動かしてみるようにもしましょう。資金繰り予定表を備える、とはそういうことです。
《その4》運転資金の増減を理解する
会社の資金繰りを大きく左右するものに、「運転資金」があります。
ここで言う「運転資金」とは、いわゆる「経常運転資金(正常運転資金とも呼ばれます)」のこと。算式であらわすと「売上債権 + たな卸資産 − 仕入債務」です。
入金サイトや支払サイト、商品の品ぞろえなどが変わらない限り。運転資金は、売上の増減に比例することになります。売上が増えれば、運転資金は増える。売上が減れば、運転資金は減る。
この点で。売上が急増するような会社は、運転資金も急増することを忘れてはいけません。
運転資金とは、会社が資金繰りを問題なくまわすにあたって必要なおカネです。増加する運転資金分のおカネを手当てしておかないと、売上が増えたのにおカネが足りず… 「黒字倒産」はその典型です。
いざ、売上が増えたときに慌てることがないように。売上の増加によって、どれだけの運転資金が必要になるのかを押さえておきましょう。
くわしくはこちらの記事を参考にどうぞ ↓
《その5》社長個人の貯金を増やしておく
社長は会社から役員報酬を受け取ります。受け取ったあとのおカネは、社長の自由です。
けれども。「いざ」というときのために、社長は「貯金」をしておきましょう。
そんなの余計なお世話、と思われるかもしれません。言われなくったってわかっている、とも思われるかもしれません。
ところが実際には、役員報酬の増額にともなって、生活水準が上がる(贅沢が増える)というのはよくあることです。生活水準が上がれば、おのずと貯金は少なくなります。
もちろん、生活水準を上げること自体に問題はありません。それができるのであれば、良いことだと言えます。ただ、「貯金とのバランス」はとりましょう。そういうことです。
会社が「いざ」というときを迎えれば、資金繰りのピンチを迎えれば。社長はいちばんに、じぶんの役員報酬を削らなければいけません。
そうしなければ会社はやっていけないし、また、周囲(社員や銀行など)からもそれを求められます。そのときに、社長に貯金がなければ、社長が生活をできなくなってしまいます。
また、役員報酬を削るだけでは足りなければ。こんどは、社長が会社におカネを貸し付ける必要もあるでしょう。そのときに、社長に貯金が無ければ、貸し付けることはできません。
会社は銀行からおカネを借りればいい。そう考えている社長もいらっしゃいますが、借りたいときに必ずしも借りられるわけではありません。借りられなければ、最後の砦は「社長の貯金」であることは忘れないようにしましょう。
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まとめ
いざというときになってから資金繰りで慌てないですむように、日ごろから備えておきましょう。
というわけで。備えておくための「考え方」として、「資金繰り心得」をまとめてみました。「へぇ」と納得できるものがあれば、取り入れていただけましたら幸いです。
- 現金預金〇万円維持、を決める
- 銀行とのつきあいを切らない
- 資金繰り予定表を備える
- 運転資金の増減を理解する
- 社長個人の貯金を増やしておく