コロナによって、環境が大きく変わりました。「変化の状況」を整理して、その変化によって、会社は今後どのように進んでいくのか「計画」を立てることが大切です。
そこで。コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイント、についてお話をしていきます。
環境が変わったのだから、会社も変わらなきゃ
会社経営の場面では、「事業計画書をつくりましょう」という話はよく聞かれるところです。
けれども実際には、事業計画書をつくっているという中小企業は決して多くありません。
つくったほうが良さそうだとは思うけれどつくっていない… そんな社長もいるのではないでしょうか。
事業計画書をつくっていない理由は、いくつか考えられます。
単純につくるのがメンドーだ、とか。そもそもつくり方が分からない、とか。どうせつくっても計画どおりにはいかないし、とかとか。いろいろです。
それはそれとして。新型コロナウイルスを経た今(2020年8月17日現在)、事業計画書の重要性はより高まっていると言って良いでしょう。
コロナによって、社会環境・経営環境が大きく変わりました。環境が変わったことで、業績が悪くなった会社もあれば、良くなった会社もあります。
いずれにせよ、「大きく変わった」わけですから。まずは「変化の状況」を整理して、その変化によって、会社は今後どのように進んでいくのか「計画」を立てることが大切です。
計画が無く、場当たり的な対応となると、どうしても経営判断の精度が落ちてしまったり、対応が後手にまわることが多くなります。結果として、業績が悪くなる。
ということがないように。コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書について、そのポイントをお話ししていきます。ポイントはぜんぶで3つ、こちらです↓
- 弱みを強みに、強みをより強みに
- 必要な利益から売上を逆算する
- 予測貸借対照表をつくる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイント3選
《ポイント1》弱みを強みに、強みをより強みに
コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイント、1つめ。それは、「弱みを強みに、強みをより強みに」です。
冒頭で、「コロナによって、社会環境・経営環境が大きく変わった」という話をしました。
これにより、それぞれの会社の「強み・弱み」も変化をしているケースは少なくありません。
たとえば、立地が悪い場所(駅・繁華街から離れている)で洋菓子店を営む会社があったとします。コロナ前には、「集客」という面で弱みがありました。
けれども、コロナ後は。いわゆる「3密」を避ける動きから、立地が悪い場所にも人が流れるようになる。郊外なので駐車場のスペースも取りやすく、車で来店してもらえる。
また、駅・繁華街から離れていることで、店舗の家賃や駐車場の地代といった固定費も少なくて済む。
というように。「立地が悪い」が弱みであった会社でも、コロナを経て、「立地が悪い」が強みになることはあるわけです。
したがって、まずは、コロナ前とコロナ後とで、自社の強み・弱みがどう変化したかを書き出してみましょう。
書き出すにあたっては、 「コロナ前の弱みを、コロナ後の強みにできないか」という視点を持つことです。
加えて、「コロナ前の強みを、コロナ後にはより強みにできないか」という視点も重要になります。
たとえば、「ぜいたくな空間でのワンランク上の食事・接客(高単価・低回転)」を強みにする飲食店があったとして。
コロナ後は、3密(座席・テーブルの間隔が狭いなど)を避ける客の来店を促すことができれば、「強み」は「より強み」に進化します。
事業計画書をつくるにあたっては、まず、自社の強みと弱みを整理する。その強みと弱みを「根拠」にして、事業計画書をつくっていきましょう。
逆に、根拠がない状態でつくられる事業計画書は「絵に描いた餅」になりがちです。絵に描いた餅では、会社の持続・成長には役立ちません。
また、銀行から融資を受ける際には、銀行の理解を得るために、会社が事業計画書を提示することもあります。
ところが、そのときに、「根拠なき事業計画書(強みと弱みを説明できない事業計画)」では逆効果です。銀行からは、会社の持続・成長を疑われてしまいます。
事業計画書をつくるにあたっては、「強み・弱み」の整理から。と、覚えておきましょう 。
[ad1]《ポイント2》必要な利益から売上を逆算する
コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイント、2つめ。それは、「必要な利益から売上を逆算する」です。
コロナを経て、業績が悪くなった、赤字になってしまったという会社は少なくありません。
そのような会社はとくに、事業計画書の売上高は、必要な利益から逆算をするようにしましょう。
ここで言う「必要な利益」とは、最低でも「1円」以上です。つまり、少しでも黒字になる利益です。
コロナの影響によって、現状の赤字はしかたがないにしても。いつまでたっても赤字、というわけにはいきません。
また、銀行から融資を受けている、あるいは融資を受ける必要がある会社であれば。ずっと赤字のままで融資を受けることは困難です。
よって、最低でも1円以上の利益が必要だと言えます。
さらに言うと。現状、借入金の返済がある会社については、 返済額分の利益も必要になります。返済の原資は利益だからです。
そう考えると、「必要な利益」は、最低でも「1円 + 借入返済額」以上ということになります。
その「必要な利益」の金額を決めたところで、そこから逆算で売上高を計算していきましょう。結論として、次のような計算式になります↓
- 売上高 =(必要な利益 + 固定費)÷(1ー売上原価率)
上記の計算式によって求められた売上高を実現することができれば、必要な利益を確保することができます。
ここで、計算式で求められた売上高を、さらに「単価 × 客数 × 頻度」に分解してみましょう。分解をしたときに、現実的な数字であれば OK です。
けれども、現実的ではない、実際には難しいということであれば。固定費を減らす、売上原価率を下げる、といった検討が必要です。
それでもなお難しいようであれば、「借入返済額の減額(借り換えやリスケ)」も検討しなければなりません。
いずれにせよ。事業計画書では、売上高から先には考えないことです。売上高は利益から逆算することです。
売上高から先に考えると、得てして売上高な「楽観的」になります。
「これくらいは売れる」「これくらいは売りたい」との思いから、現実離れした売上高になりがちです。気をつけましょう。
《ポイント3》予測貸借対照表をつくる
コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイント、3つめ。それは、「予測貸借対照表をつくる」です。
事業計画書をつくっている会社でも、「損益計算書」の計画に加えて、「貸借対照表」の計画までつくっている会社はほとんどないでしょう。
損益計算書が「売上 − 費用 = 利益」を計算するのに対して、貸借対照表は「資産 − 負債 = 純資産(自己資本)」を計算する書類です。
損益計算書で「利益」を計算することも大事ですが、貸借対照表で「純資産(自己資本)」を計算することも大事になります。
たとえ利益が出ている会社であっても、おカネが足りなくなれば会社が潰れてしまう。純資産が少ない会社は、「現状のおカネ・将来のおカネ」に不安があるものです。
だから、会社は損益計算書だけではなく、貸借対照表も確認しておかなければいけません。
また、銀行も、融資の審査をするときには「純資産の大きさ」を重視しています。純資産の金額が大きいほど融資はしやすく、小さいほど融資はしにくい。
もしも、純資産がマイナス(資産よりも負債のほうが多い)となれば、銀行は融資を躊躇します。
銀行としては、融資を検討するうえで、いま現在の貸借対照表に加えて、将来の貸借対照表も見たいところです。
将来の貸借対照表、つまり、予測貸借対照表を銀行に提示することができれば、銀行としては有効な融資の判断材料になります。
その予測貸借対照表で、純資産がプラスであり、今後も純資産が増えていくことを示せれば、融資を受けやすくもなるでしょう。
融資が受けやすくなれば、会社の資金繰りも安定します。資金繰りが安定すれば、社長は経営に集中できますから、会社の持続・成長の可能性が高まります。
利益はあるけどおカネがない、ということにはならないように。銀行から融資を受けやすくできるように。事業計画書をつくるときには、予測貸借対照表もつくりましょう。
ただし、予測貸借対照表は、予測損益計算書に比べて難易度が高いものです。自社での作成が難しいようであれば、顧問税理士に相談をしてみると良いでしょう。
自社で作成をする場合には、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
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まとめ
コロナによって、社会環境・経営環境が大きく変わりました。
「変化の状況」を整理して、その変化によって、会社は今後どのように進んでいくのか「計画」を立てることが大切です。
コロナを経た今だからこそつくるべき事業計画書のポイントを押さえておきましょう。
- 弱みを強みに、強みをより強みに
- 必要な利益から売上を逆算する
- 予測貸借対照表をつくる