「決算書はどこから見たらいいの?」という質問は少なくありません。
その質問に対する答えとして、決算書で一番重要な勘定科目と、その理由をお話していきます。
そんな勘定科目あったっけ?
会社の決算書を見るときに、もしも、「たったひとつだけしか勘定科目を見れない」としたら。いったい、どの勘定科目を見るか?
もちろん、そんな奇妙な状況は実際にはありえないのですが。いっぽうで、「決算書はどこから見たらいいの?」という質問は少なくありません。
その質問に対する答えが、「たったひとつだけしか見られない」場合の勘定科目だと言えます。では、その勘定科目とは何なのか?
ずばり、「利益剰余金」です。
えっ、利益剰余金? なにそれ? そんなのあったっけ? と面食らったかもしれませんが。利益剰余金は、貸借対照表の「純資産の部」に含まれる勘定科目になります。
あまり見たことがないなぁ、ということであれば。この機会に見るようにしてみましょう。
その利益剰余金が、どうしてもっとも重要な勘定科目だと言えるのか。その理由は3つあります。こちらです↓。
- 収益力がある会社か?がわかる
- 利益を出せる社長か?がわかる
- 財務的に安全な会社か?がわかる
これら3つの理由について、このあと順番に確認をしていきましょう。
決算書で一番重要な科目は利益剰余金だ、と言える3つの理由
《理由1》収益力がある会社か?がわかる
決算書で一番重要な科目は利益剰余金だ、と言える3つの理由。1つめは、「収益力がある会社か?がわかる」からです。
冒頭でお話しをしたとおり、利益剰余金は、貸借対照表の「純資産の部」に含まれる勘定科目になります。
その利益剰余金の金額が増減する「おもな要因」は、「毎年の利益」です。
つまり、損益計算書の末尾にある最終利益(税引後利益)が「プラス(黒字)」であれば、利益剰余金の金額は増加します。
逆に、最終利益が「マイナス(赤字)」であれば、利益剰余金の金額は減少します。
結果として、貸借対照表に記載されている利益剰余金の金額は、その会社が開業してから、いま現在までの「利益の累積金額」をあらわします。
ということは。貸借対照表の利益剰余金の金額がプラスであれば、その会社は黒字体質である。「収益力がある会社」だと言えるでしょう。
逆に、利益剰余金の金額がマイナスであれば、その会社は赤字体質である。「収益力がない会社」だと言えるでしょう。
具体的にどれくらいの収益力であるかを知るためには、利益剰余金の金額を「期数(その会社が何期めか?)」で割り算してみます。
たとえば、利益剰余金の金額が 5,000万円、その決算書が5期めだとしたら。「5,000万円 ÷ 5期」で、毎年だいたい 1,000万円の利益を出せる会社だ、と想像できるわけです。
言うまでもなく、会社は利益を求めるものですし、求めなければいけないものでもあります。「もうけは二の次三の次」というのでは、お客さまも、社長・社員も幸せにはなれません。
そう考えると。収益力がある会社かどうか? は重要なことであり、収益力を測ることができる「利益剰余金」もまた重要な勘定科目であることがわかります。
《理由2》利益を出せる社長か?がわかる
決算書で一番重要な科目は利益剰余金だ、と言える3つの理由。2つめは、「利益を出せる社長か?がわかる」からです。
利益を出せる社長か、と言われると。それはさっき見た「収益力がある会社か」と同じではないのか、と思われるかもしれません。
違います。「収益力がある会社」と、「利益を出せる社長」とはイコールではありません。
会社に収益力があったとしても、つまり、高い商品力サービス力があったとしても、最終的に利益が出るかどうかはわからない。利益を出せるかどうかは社長しだい、ということです。
たとえば、「1,000万円の利益を出せそうだ」という会社があったとします。もし税率が 30%だとすると、納める税金は 300万円になります(1,000万円 × 30%)。
これを見た社長が、「300万円も税金を納めるのはイヤだ。税金を納めるくらいなら経費を使う」と、追加で 1,000万円の経費を支払った場合はどうでしょう?。
飲み食いをしたり、ぜいたくなモノを買ったり。そんな感じです。
すると。もともと 1,000万円の利益であったところが、1,000万円の経費によって、利益はゼロになります。これで、税金はゼロ。社長は「しめしめ」です。
けれども、この社長の考え方・行動には「大きな問題」があります。
もし、1,000万円の利益をそのまま出していれば。税金を 300万円納めたとしても、そのあと手元に 700万円残ります(税引後利益 700万円)。
いっぽうで、1,000万円の経費を使ってしまうと。税金はゼロになるものの、手元には何も残りません(税引後利益 ゼロ)。
はたしてどっちが良かったのか? は、 火を見るよりも明らかです。手元に何も残らないのでは、会社の持続・成長に支障をきたしてしまいます。
中長期的に持続・成長するための原資として、会社は毎年、手元に利益を残さなければいけません。
その「手元に残した利益」が、損益計算書の「最終利益(税引き後利益)」であり、貸借対照表に加算される「利益剰余金」です 。
したがって、利益剰余金の金額が積み上がっている会社は、「利益を出せる社長」がいることの証だと言えます。
目先の税金を嫌って、出せる利益を出し惜しむ社長の会社では、「利益剰余金がゼロに近い(あるいはちょっとマイナス)」ということがあるものです。
ちなみに。そういう会社は、銀行融資が受けにくくなることも。デメリットとして押さえておきましょう↓
《理由3》財務的に安全な会社か?がわかる
決算書で一番重要な科目は利益剰余金だ、と言える3つの理由。3つめは、「財務的に安全な会社か?がわかる」からです。
繰り返しになりますが。利益剰余金は、貸借対照表の「純資産の部」に含まれる勘定科目です。その利益剰余金の金額が大きくなると、当然、純資産の部の金額も大きくなります。
貸借対照表には、「資産の部 = 負債の部 + 純資産の部」という関係があることから、純資産の部が大きくなるほど、資産の部も大きくなる。
結果として、「資産の部 > 負債の部」になることがわかります。
資産が負債よりも大きいというのは、とてもだいじなことで。会社はその気になれば、いまある負債を、資産を換金して完済できることをあらわしています。財務的に安全。
逆にもし、資産よりも負債が大きければ。会社は負債を完済できない状態にあることを表しています。財務的に安全とは言えない、危険です。
損益計算書の最終利益がマイナスという状態が続くと、貸借対照表の利益剰余金もマイナスになります。マイナスの金額が大きくなると、純資産の部もマイナスになります。
その結果、「資産の部 = 負債の部 + 純資産の部」という関係から、「資産の部 < 負債の部」ということが起こりうる。
会計チックなところなので、ちょっとわかりにくいかもしれませんが。
要は、利益を出し続ければ「資産の部 > 負債の部」になり、利益のマイナスが続くと「資産の部 < 負債の部」になってしまう。そういうことです。
「資産の部 < 負債の部」は「債務超過」と呼ばれ、その危険さゆえに、銀行からも嫌われて融資が受けにくくもなります。
融資を受けることができなければ、資金繰りが不安定になり、ますます財務的安全が遠のいてしまう。債務超過を避けるためにも、利益を出し続けることです。
利益を出し続ける会社、利益を出し続けて「利益剰余金」がじゅうぶんにある会社は、財務的に安全な会社だと理解しておきましょう。
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まとめ
「決算書はどこから見たらいいの?」という質問は少なくありません。
その質問に対する答えとして、決算書で一番重要な勘定科目と、その理由をお話してきました。
一般には見慣れないであろう「利益剰余金」ですが。これを機会に、今後は注目してみましょう。
- 収益力がある会社か?がわかる
- 利益を出せる社長か?がわかる
- 財務的に安全な会社か?がわかる