銀行から「事業計画」の提示を求められるケースが増えています。コロナで赤字が大きい会社はとくに、です。
というわけで。どのように事業計画をつくればよいのか? そのポイントについてお話をしていきます。
銀行はいま、会社に事業計画を求めている。
きょうは 2021年2月18日。いまだ緊急事態宣言下の地域はあるものの、国内のワクチン接種もはじまり、新型コロナは収束に向かいつつある状況です。
新型コロナの影響によりダメージを受けた会社も、いよいよ再起に向けて本格的に動き出すときがきた、と言ってよいでしょう。
そんななかで、まず押さえておきたいのは資金。つまり、おカネです。言うまでもなく、おカネが尽きればおしまいですから。おカネの算段はしておかなければいけません。
具体的には、銀行融資。銀行からの融資を受けておく、受けられるようにしておく。この点で、銀行から「事業計画」の提示を求められるケースが増えています。コロナで赤字が大きい会社はとくに、です。
銀行としては、「赤字を解消できるのか?」は関心ごと。そこに会社が応えるためには、事業計画が必要になります。では、どのように事業計画をつくればよいのか? そのポイントは、おもに次の3つです↓
- 費用を確実に削減する
- コロナ融資で借入返済を減らす
- 値上げ+事業領域の転換をはかる
これら3つのポイントを押さえた事業計画をつくることで、銀行からの理解が得やすくなります。結果として、銀行の支援(追加融資や、いざというときのリスケなど)が受けやすくもなるところです。
それではこのあと、3つのポイントを順番に見ていきましょう。
コロナで大赤字の会社が銀行から事業計画を求められたらどうつくるか?
【ポイント1】費用を確実に削減する
コロナで赤字が大きな会社がいま、事業計画をつくるときのポイント。1つめは、「費用を確実に削減する」です。
費用を削減するだなんて、あたりまえのことを… と思われるかもしれませんが。ポイントは「確実に」というところにあります。
そもそも。事業計画をつくるときに、売上を増やすことから考える社長は少なくありません。その「売上」は「お客さましだい」です。いくら良い商品があっても、いくら情熱があっても、売れるかどうかはお客さましだい。
結局、思ったとおりには売れなかった… というハナシはそこかしこです。大きな赤字で窮地に陥っている会社であれば「死活問題」でしょう。
そんなことにならないように。まずは、「会社しだい」で実現可能な「費用の削減」から取り組むことです。それも、確実にできるところから。
その最たるものが「役員報酬」になります。社長の給料を減らす、ということです。いちばん大変な思いをしている社長がなぜ…? との気持ちもわかりますが。
社長しだいで確実に実行できる費用削減と言えば、まずは役員報酬です。銀行は「役員報酬の減額」をもって、事業計画の本気度をはかろうとしているところがあります。
これだけの赤字があるのに役員報酬は以前のまま… では銀行も融資をしづらい。役員報酬を維持するためにおカネを貸しているようになってしまうからです。銀行が融資をするのは、あくまで「事業に対して」であることを覚えておきましょう。
また、「やればできるのにやっていない」という費用の削減もあります。よくあるのが、「仕入単価」や「家賃」です。これらは、相手先に交渉をすることで削減できることが少なくありません。
仕入単価や家賃について、値段交渉をしたことがないという会社は、意外とあります。人が良い社長ほど、交渉をしていなかったりもするものです。そういう会社の仕入単価や家賃には、「値下げ余地」が残っています。
仕入単価であれば、相見積もりをしてみる。家賃であれば、近隣相場を調べてみる(ネットで調べられます)。長年交渉をしていないと、仕入単価にしても家賃にしても、高止まりしていることは少なくありません。高止まりしていることがわかったら交渉です。
というように、「やればできるのにやっていない」ことも見逃さないようにしましょう。
[ad1]【ポイント2】コロナ融資で借入返済を減らす
コロナで赤字が大きな会社がいま、事業計画をつくるときのポイント。2つめは、「コロナ融資で借入返済を減らす」です。
赤字の会社にとって、資金繰りの大きな足かせになるのが「借入返済」でしょう。赤字のときはもちろん、黒字転換をはかる過程においても、既存の借入を返済するだけの利益が出ない… すると、資金繰りは厳しくなります。
ですから、現状であれば「コロナ関連の融資(以下、コロナ融資)」を活用することで、借入返済の金額を減らしておく。これが重要です。
コロナ融資。具体的には、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」や、民間銀行による「セーフティネット保証」などがあります。
これらコロナ融資を受けるときに、既存の融資をあわせてまとめる。つまり、既存の融資をコロナ融資で借り換えることが可能です。
借り換えることによって「据え置き期間」を設定できれば、返済がはじまるまでのあいだ時間をかせぐことができます。また、既存の融資よりも「返済期間」を長くすることができれば、毎月の返済額を少なくすることもできます。
既存の融資を借り換えられるかどうかは、既存の融資の「種類」にもよりますので確認は必要ですが。既存の融資をコロナ融資で借り換えることで、従来の借入返済を減らせることは覚えておきましょう。
これをやるかやらないかで、今後の借入返済額は大きく変わります。借入返済額が大きければ、当然、事業計画をつくるにも厳しくなる。返済できるだけの利益は出ない、資金繰りが回らない… となりがちです。
いっぽうで、借入返済額を減らすことができれば。より小さな利益でも、資金繰りは回るわけですから、事業計画もつくりやすくなります。
コロナ融資については、2021年3月をめどに「いったん終了」が予定されているところです。またあらたな融資制度は登場するのでしょうが、現状の融資制度ほどではない。現状の融資制度がピークだと、わたしは考えています。
コロナ融資の利用を検討するのであれば急ぎましょう。
[ad1]【ポイント3】値上げ+事業領域の転換をはかる
コロナで赤字が大きな会社がいま、事業計画をつくるときのポイント。3つめは、「値上げ+事業領域の転換をはかる」です。
事業計画のなかの「売上」について。「なんとなく右肩上がり」でつくられることがあります。5%ずつ売上アップ。ちなみに5%アップの根拠は無し、みたいな。これは、銀行から嫌われる事業計画のひとつです。
また、「コロナ前の売上」を前提につくられる事業計画もあります。まもなくコロナが収束して、売上も元通りに戻るだろうと。けれども、生活様式がすっかり変わったいま、「売上が元通り」に説得力はありません。
というように。根拠や説得力がない売上増加や売上回復では、事業計画の信頼性が下がってしまうことを理解しておきましょう。いくら事業計画をつくったところで、銀行から信頼してもらえなければ意味がありません。
では、どうするか?
売上に対する会社の「考え」と「行動」を明らかにすることです。「こう考えて、こう行動するから、このような売上を計画しています」と言えるようにすることです。
そんな「考え」と「行動」とを決めるにあたって、「値上げ+事業領域の転換」がひとつのヒントになります。
値段を下げて数を売ろうという「値下げ戦略」は、中小企業には不向きです。値下げは、経営資源が豊富な大企業であればこその戦略であり、大企業とて失敗をするような難易度が高い戦略でもあります。
ゆえに、値下げか値上げかで言えば、値上げです。長引くデフレによって、ただただ値下げをしたり、価格を据え置いてきた会社は少なくありません。そういう意味では、「とにかく値上げ」も選択肢のひとつです。
少々の客離れはあるかもしれませんが、値上げにより増加する利益で補える可能性があります。もちろん、値上げをする際に「付加価値」を乗せられるようであればベストです。
それからもうひとつ、「事業領域」を考え直す必要があります。コロナで生活様式が変わったことを受けて、市場が変化しているからです。
わかりやすい例で言えば。これまではイートインだけでよかった飲食店も、デリバリーやテイクアウトまで求められています。これまでどおりでは生き残ることができない、ということはあるわけです。
そのあたり、国も「事業領域の転換」を促しています。「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す企業の新たな挑戦を支援します!」と明言した「事業再構築補助金」がその証です↓
この「事業再構築補助金」のリーフレットを見ると、いろいろな「事業領域の転換」の例が掲載されています。イメージをふくらませるためにも、一読しておくとよいでしょう↓
というように、「値上げ+事業領域の転換」を前提にした売上計画であれば。単なる売上増加や売上回復とは違いますので、銀行からの理解・支援も得やすくなるはずです。
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まとめ
銀行から「事業計画」の提示を求められるケースが増えています。コロナで赤字が大きい会社はとくに、です。
のように事業計画をつくればよいのか? そのポイントを押さえておくようにしましょう。
- 費用を確実に削減する
- コロナ融資で借入返済を減らす
- 値上げ+事業領域の転換をはかる