銀行と長く取引をしていれば融資が受けやすくなる、と言われたら。そんなのあたりまえ、と思われるかもしれませんが。
その「理由」まで押さえておきましょう、というお話です。
「あたりまえ」の先にあるモノ。
会社が、銀行からの融資を受けやすくするコツはいろいろありますが。銀行と「長く取引をする」のは、コツのひとつです。ちなみに、ここで言う「取引」とは、「融資取引(おカネを借りる)」になります。
長く取引をしていれば融資が受けやすくなるなんて。そんなのあたりまえだろう、と思われるかもですが。もう1歩ふみこんで見てみると、もう少し深い理由があることに気がつきます。
その気づきはきっと、今後の銀行融資・銀行対応に役立つはずです。
というわけで。銀行との取引が長いと融資が受けやすくなる理由について、お話をしていきます。具体的には、次の3つです↓
- 分析精度が上がる
- 返済実績が積み上がる
- ほかの銀行は安心をする
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
銀行との取引が長いと融資が受けやすくなる3つの理由
【理由1】分析精度が上がる
銀行が融資の可否を判断する材料として、もっとも重視しているものは「数字」です。なんだかんだ言っても、融資の可否をもっとも左右するものは「数字」だと言っていいでしょう。
ところで、「数字」とは? 具体的に言えば、決算書や試算表です。これらに掲載されている数字をもとに、銀行は融資の可否を判断しています。
その「数字」について。取引が長くなればなるほど、銀行はより多くの数字を取得できるでしょう。3年の取引しかなければ、決算書も試算表も3年分ですが。10年の取引があれば、当然、決算書や試算表も 10年分になります。
では、3年分の数字しか持たない銀行と 10年分の数字を持っている銀行と。どちらが、より分析精度を上げることができるか?
10年分の数字を持っている銀行ですよね。より多くのデータを持っているほうが分析精度は上がるものですし、分析精度が上がれば融資の可否も判断しやすくなります。
もし同じような業績の会社があった場合には、取引が長い会社のほうが、分析精度の裏付けがある分だけ、融資が受けやすくなるはずです。したがって、会社は銀行と長く取引することにメリットがある、と考えておきましょう。
いっぽうで。取引が短いからと言って、悲観しすぎることもありません。会社のほうから、積極的に情報開示をすることだってできるからです。折を見て、決算書の5年推移や10年推移などの資料を銀行に渡すのもよいでしょう。
なお、銀行が「数字」を重視しているとは言っても、「数字以外」の要素をまるで見ていないわけではありません。たとえば、会社の事業や商品・サービスの内容、経営者の資質、社員のようすなども、融資の可否に影響します。
これら「数字以外」の要素については、数字ほどには銀行に伝わらないものです。長く取引をすることで伝わる部分もありますが、会社が伝えようとしなければ伝わりにくいものでもあります。
ですから、銀行と取引を続けているなかで、会社は「数字以外」の要素についても積極的に情報開示するようにしていきましょう。くわしくは、こちらの記事もどうぞ↓
【理由2】返済実績が積み上がる
銀行との取引が長くなるということは、会社はそれだけ長いあいだ銀行との「約束」を守っている、ということでもあります。
約束とは? 借りたおカネを返済する約束です。当初の約束どおり、毎月返済をすれば、会社は銀行との約束を守ったことになります。毎月返済をするたびに、約束を守った実績が積み上がっていきます。
結果として、銀行からの「信用」につながるので、会社は融資が受けやすくなるわけです。
この点で。どんなカタチであれ、返済は返済として信用につながります。つまり、その会社の業績が厳しいとしても、業績はどうあれ、いままで返済をし続けたきた「事実」は信用になるということです。
過去にも業績が厳しい時期があって、それでも返済を続けてこれたのであれば、その信用はなお大きなものになるでしょう。
基本的には、業績が悪い会社は融資が受けにくいものです。それでも融資を受けようとするのであれば、取引が長い銀行に相談・依頼をしましょう。信用が溜まっているはずだからです。
逆に、取引が短い銀行には信用が溜まっていなのですから、業績が厳しいときには借りられる可能性は少ないことを覚えておきましょう。
ところで。返済実績を考えるときに、「据え置き期間」には注意が必要です。据え置き期間を設定すれば、そのあいだは返済を据え置くことができるので、資金繰りがラクになるというメリットがあります。
いっぽうで。たとえば、創業融資で据え置き期間を設定すれば、そのあいだは返済実績ができません。2度めの融資を受けられる時期が、その分だけ遅くなってしまうことはデメリットとして押さえておきましょう。
【理由3】ほかの銀行は安心をする
会社がある銀行と長く取引をしていると、それを見たほかの銀行は安心する、という一面があります。
たとえば。会社がA銀行と長く取引をしているとして。その結果、ここまでお話をしたように、会社はA銀行から融資を受けやすい状況になります。
これを見たB銀行やC銀行などは、「A銀行が信用している会社なんだな」という見方をするものです。すると、B銀行やC銀行も安心して融資をしやすくなることが考えられます。
また、会社の業績が悪いときでも、A銀行が支援を続けている限り、B銀行やC銀行も安心できますから、会社は貸し渋りや貸し剥がしにあうことも少なくなるはずです。
これに対して、長く取引をしている銀行がないとどうなるか?
そのような会社は、いろいろな銀行から場当たり的に融資を受けている可能性があります。そのときどきで、いちばん金利が低い銀行などから融資を受けている。場合によっては、金利が高い銀行の融資を借り換えてしまう。
どこの銀行とも取引が短いので、深い関係を築くことができず、会社の状況が厳しくなった場合などには融資を受けられない… ということが考えられます。
場当たり的に融資を受けるような会社であれば、銀行としては「いつ、ほかの銀行に借り換えられるかわからない」という不安もあるでしょう。「だったら、そもそも融資をしないほうがいい」ともなりかねません。
銀行は、じっくり腰を据えて、長く取引できる会社を探しているものです。取引する銀行をあまり頻繁に変えていると、どの銀行とも取引が短く、融資を受けにくくなる可能性があります。気をつけましょう。
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まとめ
銀行と長く取引をしていれば融資が受けやすくなる、と言われたら。そんなのあたりまえ、と思われるかもしれませんが。
その「理由」までわかっているか? は、また別です。理由までを理解して、ぜひ今後の銀行融資・銀行対応に役立てましょう。
- 分析精度が上がる
- 返済実績が積み上がる
- ほかの銀行は安心をする