不動産業の会社が銀行から運転資金の融資を受けられるのか?問題について

不動産業の会社が銀行から運転資金の融資を受けられるのか?問題について

そもそも、不動産業に運転資金は必要ない。結果として、不動産業の会社が運転資金の融資を受けるのは厳しい… というのが「通説」です。

その理由と、それでも運転資金の融資を受ける方法についてお話をしていきます。

目次

そもそも不動産業に運転資金は必要ない説。

不動産業の会社における、銀行融資のよくある疑問として。「運転資金は借りられるのか?」が挙げられます。不動産業における「運転資金」とは、たとえばこんなところです↓

  • ハウスクリーニング代
  • 設備・機器の修繕費
  • 家賃集金手数料
  • 募集広告費用
  • 水道光熱費
  • 火災保険料 など

つまるところ、「物件購入費以外の支出」ということになるわけですが。こういった「運転資金」について、銀行から融資を受けることができるのだろうか?

この疑問に対する回答として。そもそも、不動産業に運転資金は必要ない。結果として、不動産業の会社が運転資金の融資を受けるのは厳しい… というのが「通説」になっています。

ではなぜ、不動産業に運転資金は必要ないのか? 不動産業は、最初に「物件」を購入する以外は、モノを仕入れて売るような商売ではありません。物件の購入以降は、物件からあがる収入(家賃)で、諸経費をまかなえるはずだし、まかなうべきです。

また、物件を購入するときには、融資を受けて購入するケースがほとんどですから、家賃はその返済原資に充てられることになります。そのうえ、運転資金の融資を受けるとしたら、「その返済原資はいったいどこにあるんですか?(ありませんよね)」ということにもなるわけです。

かくして、そもそも不動産業に運転資金は必要ない説が根付いています。

とはいえ、不動産業の会社だって、運転資金が必要だ・あったほうがいい、と考えることはあるでしょう。家賃の滞納が発生したり、空室が続いたり、思わぬ修繕費が発生したり…

もっとも、それとて「家賃収入」に織り込んでおくべきものなのですが。そうは言っても、おカネが足りない、おカネが必要、運転資金を借りたい! ということもあるものと想像します。

では、どうしたら、不動産業の会社が運転資金の融資を受けることができるのか? そもそも不動産業に運転資金は必要ないと言われるなかで、それでも運転資金の融資を受ける方法についてお話をしていきます。ぜんぶで3つ、こちらです↓

不動産業の会社が運転資金の融資を受ける方法
  1. 手元流動性を高めたい、と言う
  2. 銀行からの融資セールスを受ける
  3. 納税資金・賞与資金の融資を受ける

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

それでも運転資金の融資を受ける3つの方法

【方法1】手元流動性を高めたい、と言う

不動産業の会社が、銀行から運転資金の融資を受けるのは厳しい… というのは冒頭でお話をしたとおりです。その「運転資金」を広くとらえると、「余裕資金」が含まれます。

余裕資金とは、読んで字のごとく、余裕を持つためのおカネです。不動産業に限らず、どんな会社もそうですが、ギリギリ足りる分のおカネを持っているだけでは、資金繰りに不安がありますよね。

ギリギリ足りる分のおカネしか持っていないと、収入のタイミングがちょっとズレるだけで、支払いができない… ということが起きかねません。

だから、なにかに使うというのではないけれど、資金繰りに余裕を持たせるために、ちょっと余分におカネを持っておく。そのためのおカネが「余裕資金」です。

そこで、「なにかあったときのために、手元のおカネをもう少し増やしておきたい。だから、融資をしてほしい」と、銀行に依頼をしてみるのはアリでしょう。これをもう少しカッコよく言うと、「手元流動性を高めるために、融資をお願いしたい」となります。

これを銀行の側から見てみると。余裕資金などと言いながら、日常の支払いに使われるようでは困るわけです。余裕資金は手元に置いてあるべきおカネであって、使われてしまったら銀行は返済をしてもらえなくなってしまいます。

なので、余裕資金の融資を受けるためには、銀行に対して「余裕資金を使わずとも、日常の支払いに問題はない」と示すことが重要です。

具体的には、「資金繰り表」になります。向こう1年ていどの資金繰り表をつくって、余裕資金を借りても、それを使い込むような状況にはないことを説明する。借りたおカネは、きちんと返済できることを説明することです。

ちなみに、資金繰り表については「物件ごと」につくられているのがベストになります。不動産業では、「物件ごとの収支」が大事だからです。こっちの物件の赤字を、あっちの物件の黒字でまかなう、という考え方はありません。

すべての物件の収支に問題がないことを示すために、物件ごとの資金繰り表をつくるようにしましょう。

【方法2】銀行からの融資セールスを受ける

銀行は、常に融資先を探しています。言うまでもありませんが、おカネを貸すのが銀行の商売だからです。

この点で、銀行は「融資セールス」をしています。つまり、融資をしてもだいじょうぶそうな会社に対して、「おカネを借りませんか?」と営業をする。不動産業の会社も、例外ではありません。

とくに銀行とのお付き合いが長くなり、融資実績ができてくると、たとえ運転資金であっても、銀行のほうから融資セールスをしてくることはあるものです。

資金繰りの調子がよいときには、「いまはいらない」などと断ってしまう会社もありますが。調子がよいからこそ、銀行は融資セールスをしていることを理解しておきましょう。

逆に、資金繰りの調子が悪くなってからでは、銀行も不安になりますので融資をしてもらうことはできません。なので、調子が悪くなったときのことも考えて、調子がよいうちに融資を受けておくのがおすすめです。

融資セールスは安易に断らない。むしろひとまず借りておく、ということも考えておきましょう。

なお、融資セールスを受けやすい会社の特徴として、物件購入時の借入について「だいぶ返済が進んでいる」というものが挙げられます。

物件購入時に、購入代金の融資を受けるときには、その物件が担保になります。以後、返済が進めば、融資残高に対して担保価値のほうが高くなる。担保に余力ができます。

すると、その余力分であれば、融資(たとえ運転資金でも)してもだいじょうぶだろう。と、銀行は考えて、融資セールスをしてくるわけです。

融資セールスがない場合であっても、担保余力がありそうな銀行に対しては、運転資金の融資を打診してみるのは1つの方法になります。覚えておきましょう。

建物の担保価値について

建物の場合には「経年劣化」によって、年々、担保価値が下がっていきます。木造の場合には、劣化のスピードも速いです。担保余力については、建物の経年劣化も織り込んで考える必要があります。

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【方法3】納税資金・賞与資金の融資を受ける

不動産業の会社が、運転資金の融資を受ける方法として、「納税資金」「賞与資金」の融資を受けることが挙げられます。

納税資金とは、税金(法人税)を支払うためのおカネ。賞与資金とは、賞与を支払うためのおカネ。どちらも、広い意味での運転資金にあたるものです。

納税は半年に1回(中間申告と確定申告時)、賞与も半年に1回(夏と冬)というケースが多いことから、納税資金も賞与資金も「返済期間」は6ヶ月が基本です。

つまり、6ヶ月のあいだしかおカネを借りられないわけですが、借りるのと借りないのとでは、手元の資金繰りに差が出ますよね。自己資金で納税、自己資金で賞与を支払ったのち、「やっぱりおカネがたりないから貸して」というのは通用しません。

そう考えると、いざというときのためにも借りられるときに借りておく。借りられる理由があるときに借りておくのは1つの方法です。

また、納税資金や賞与資金は、銀行融資のなかで「比較的借りやすい融資」になります。納税をしたり、賞与を支払えるということは、会社の調子がよいことのあらわれだから。返済期間も6ヶ月なので、回収不能リスクが小さいから。というのが、借りやすい理由になります。

納税する、賞与を支払うのであれば、銀行から融資を受けることを検討してみましょう。運転資金を借りづらい不動産業の会社にとっては、手元のおカネを融資で増やせるチャンスです。

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まとめ

そもそも、不動産業に運転資金は必要ない。結果として、不動産業の会社が運転資金の融資を受けるのは厳しい… というのが「通説」になっています。

本記事でお話をした、「それでも運転資金の融資を受ける方法」が役立つようであれば幸いです。

不動産業の会社が運転資金の融資を受ける方法
  1. 手元流動性を高めたい、と言う
  2. 銀行からの融資セールスを受ける
  3. 納税資金・賞与資金の融資を受ける
不動産業の会社が銀行から運転資金の融資を受けられるのか?問題について

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