決算がおわったら、銀行から融資を受ける。というのは、スムーズに融資を受けるためのベストタイミングです。けれども、どれだけの金額の融資を受けたらよいのか? その考え方をお話しします。
決算がおわったら借りよ。
銀行から「スムーズ」に融資を受けたいと考えるのであれば、決算がおわったとき(税務署への申告がおわったとき)に、融資を受けることをおすすめしています。
なぜなら、銀行が融資の可否を検討するときに「もっとも重視する材料」が、融資先の決算書だからです。銀行は決算書の内容を見て、向こう1年(次の決算書ができるまで)の「融資姿勢」を決めています。
そこで、その融資姿勢の決定にあわせて融資を受けるのが、タイミングとしても「もっとも早く」、会社としてメリットがあるところです。というわけで、スムーズかつタイミングもベストである、「決算がおわったとき」に融資を受けるようにしましょう。
ですが、この話をすると「いったいどれだけ融資を受けたらよいのか?」と思われるかもしれません。具体的に、どれだけの金額の融資を受ければよいのか? ということです。
そこで、決算がおわったらどれだけの融資を受けたらよいのかの考え方について、このあと次のようなお話をしていきます↓
- まずは年間返済額を借りる
- 簡易キャッシュフローを控除する
- 設備投資も考慮する
それでは、順番に見ていきましょう。
まずは年間返済額を借りる
決算がおわったら、そのタイミングで銀行から融資を受ける。そのときに必要なのが、「融資金額」です。この点で、銀行に対して「いくら借りれますか?」などと言ってはいけません。
銀行は、「必要な金額」のおカネを貸すところであって、必要もないおカネを貸してくれるところではないからです。なので、融資の依頼をするときには必ず、こちらから融資金額を申し出ることが大切になります。
では、融資金額として、いくらの金額を考えればよいのか?
まずは、「年間返済額」です。決算がおわった翌期1年のあいだに、いくらの「元金返済」があるのかを計算してみましょう。融資を受けた銀行から渡されている「返済予定表」を見れば、計算することができます。
ちなみに、本来この「作業」は、融資を受ける受けないにかかわらず、済ませておくべき作業です。年間返済額は、「支出が決定している金額」なのですから、資金繰りを左右する重要な金額として押さえておく必要があります。
そこで、おすすめなのが「借入金一覧表」の作成です↓
自社で受けている、すべての融資に関する融資条件を一覧にした表になります。銀行対応をするうえでの「必須帳票」でもあるので、これを機会にぜひ作成しておきましょう。
話を戻して、年間返済額について。その金額を銀行に依頼して、実際に融資を受けることができたなら、会社としては資金繰りがラクになりますよね。
ざっくり言うと、もし今期(融資を受けようとしている期)の利益がゼロだとしても、銀行への返済はすることができる、ということですから。まずは、年間返済額分の融資を確保して、資金繰りの安定をはかりましょう。
なお、複数の銀行から融資を受けている場合には、それぞれの銀行に対して、それぞれの年間返済額分の融資を受ける。という考え方が基本になります。その金額を把握するためにも、「借入金一覧表」が役立つわけです。
簡易キャッシュフローを控除する
さきほど、年間返済額分の融資を受けましょう、という話をしました。ところが、年間返済額分まるまる融資を受けたとすると、融資残高はいっこうに減らない… ということになります。
それはそれでよい、との考え方もあるわけですが(会社は資金繰りが安定するし、銀行は銀行で融資残高が減らない分、利息収入も確保できますので)。
とはいえ、銀行も「年間返済額分はちょっと…」ということもあるわけで。そこで、「簡易キャッシュフロー」を控除する、という考え方もしてみましょう。
簡易キャッシュフローとは、「税引後利益+減価償却費」で計算される指標です。端的に言えば、「1年間で増えるおカネ(手元に残るおカネ)」をあらわします。
であるならば、会社は簡易キャッシュフロー分の返済はできるわけですから、「年間返済額ー簡易キャッシュフロー」にあたる金額の融資を受けることができればよい、と考えることができます。
というわけで、決算後の向こう1年間について、その簡易キャッシュフローを計算(予測)してみましょう。もし、向こう1年間の年間返済額が 600万円で、簡易キャッシュフローが 200万円だとしたら、差し引き 400万円が融資を受ける金額の目安になります。
それだけの融資を受けられれば、ひとまず、会社の資金繰りは安心です。また、簡易キャッシュフロー分だけ、融資残高を減らすこともできます。
ただし、「簡易キャッシュフローを見誤らないこと」には注意が必要です。言うまでもなく、計算(予測)した簡易キャッシュフローが過大であれば、実際の資金繰りは厳しくなります。
現状把握・現状分析からはじまる経営計画の立案によって、できるだけ精度が高い簡易キャッシュフローを計算できるようにしましょう。
なお、銀行は決算書に加えて、経営計画書にも関心を持っています。経営計画書によって、会社の「将来」を評価することが可能だからです。経営計画書も銀行に提示・説明することで、「加点」を狙っていきましょう。よりスムーズに融資を受けられるようになります。
設備投資も考慮する
決算から向こう1年のあいだに、「設備投資」を予定しているのであれば、別途、その分の融資を考える必要があります。設備投資、つまり、不動産や機械、備品類の購入、システムの導入や、新店舗の出店など。
それらの設備投資を、「自己資金」でまかなうという方法もありますが。金額が大きくなればなるほど、融資を受けておくことをおすすめします。あとになってから、「やっぱり借ります」とは言えないからです。
設備投資の融資は、設備投資をするときにしか借りることができません。ひとまず借りておいて、ほんとうに借りる必要がなかったのであれば、そのときは「繰上返済」をするという方法もあります(おすすめはしませんが)。
新型コロナのような不測の事態もありますから、手元のおカネに余裕を持っておくのは、中小企業にとってだいじなことだと言ってよいでしょう。そのために、設備投資は「自己資金ではなく銀行融資で」というのも考え方のひとつになります。
そこで、決算がおわって融資を依頼するときには、設備投資の予定についても銀行に伝えるようにしてみましょう。あらかじめ伝えることで、銀行も提案をしやすくなります。
このとき、「設備投資計画書」を提示できると、さらに、銀行は融資提案しやすくなるものです↓
計画書をつくるのは「苦手だ」「おっくうだ」という会社も少なくはありませんが、だからこそ、計画書を提示することで、「銀行から一目置かれる」という効果もあります。
前述の経営計画書もふくめて、ぜひ、計画書の作成に取り組んでみましょう。
まとめ
決算がおわったら、銀行から融資を受ける。というのは、スムーズに融資を受けるためのベストタイミングです。けれども、どれだけの融資を受けたらよいのか? その考え方を押さえておきましょう。
- まずは年間返済額を借りる
- 簡易キャッシュフローを控除する
- 設備投資も考慮する