新規取引先ができたときに、融資を受けている会社がとるべき銀行対応についてお話をしていきます。伝えるべきこと、相談をすべきことはあるものです。
新規取引先=あたらしい売上先
融資を受けている会社は、銀行対応で考えるべきことはいろいろです。今回はそのなかからひとつ、「新規取引先」についてお話をしていきます。
なお、ここで言う「新規取引先」とは、あたらしい売上先のこと。あたらしい売上先ができたときに、会社は取引銀行(融資を受けている銀行)にどのような対応をすればよいのか?
おもなところでは次のとおりです↓
- 取引の内容を伝える
- 取引先の状況を伝える
- 増加運転資金の相談をする
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
新規取引先について会社がとるべき銀行対応
取引の内容を伝える
新規取引先とは「あたらしい売上先」だ、という話をしました。銀行は、融資先の売上先を気にしています。融資先の売上が、返済原資になるからです。
正しくは、返済原資は「利益」だと言われますが。その利益を生み出すのには「売上」が必要です。したがって、銀行は「売上先」にも注目をすることになります。
そう考えると、新規取引先ができること自体、喜ばしいことではありますが。これに付随して、銀行に伝えるべきことがあります。それが、新規取引の「内容」です。具体的には、
- 取引の対象商品・サービスは?
- 取引のボリュームは?(毎月の売上見込み)
- 取引の条件は?(取引単価、入金サイトなど)
- 新規取引までの経緯は?
もしかすると、そんな細かいことまで銀行に伝える必要があるのか? と、思われるかもしれません。ですが、これらは「自社の商売の良し悪し」を知る材料になるものです。
良い商売(中長期的にもうかる商売)であれば、当然、銀行は融資をしやすくなります。逆に、悪い商売(たまたまもうかった、そもそももうからない)であれば、銀行は融資をしようとは考えないでしょう。
ですから、以降の融資をよりスムーズに受けられるように、新規取引の内容を伝えることが大切になります。では、その際のポイントを確認しておきましょう。
まず、「取引の対象商品・サービス」について。既存の商品・サービスなのか、それとも、新規の商品・サービスなのか。自社の主力商品なのか、利幅の大きな商品なのか、といったあたりを伝えます。
続いて、「取引のボリューム」について。自社の総取引量(総売上高)から見たときに、どれくらいの割合になるのか、どれくらいのインパクトになるのか。今後の売上見込みとあわせて、伝えられるとよいでしょう。
続いて、「取引の条件」について。取引単価は適正か、つまり、新規取引獲得のために「ムリな値引き」をしていないか。また、入金サイトは適正か。ほかの取引先よりも入金サイトを長くしたりしていないか、といったあたりを伝えます。
さいごに、「新規取引までの経緯」について。どのような「営業活動」によって、新規取引にいたったのか。自社の営業力をアピールできるところです。また、その営業活動に「再現性」があるかどうかも重要になります。たまたまでなければ、「次」を期待できるからです。
取引先の状況を伝える
前述の「取引の内容」に関連することではありますが。とくに注意をして伝えたいのが、「新規取引先の状況」です。言い換えると、「新規取引先はどんな会社なのか?」ということ。
銀行は、そこに注目をしています。取引ボリュームが大きければとくに、です。なぜなら、もしもその取引先に「問題」があった場合には、融資先が損害をこうむることになるから。
たとえば、1,000万円売り上げたとしても(納品をしたとしても)、そのあとその取引先が売上代金を支払えなければ、融資先にとってはタイヘンな損害となります。
そのあたり、新規取引先はだいじょうぶなのか? ということが、銀行からすると気がかりなのです。この点でまず伝えたいのは、さきほどもふれた「新規取引までの経緯」になります。
紹介を受けるところからスタートしているのであれば、そもそも紹介元は信用できる相手なのか? また、はじめての取引から「大量」の発注を受けていないか? など。
なお、はじめは少量でも、徐々に発注量を増やしていき、最終的には代金を支払わずに逃げられる… という詐欺もありますから、注意をしなければいけません。
そういったことへの対策もふまえて、新規取引先に対する「与信管理」が重要になります。つまり、新規取引先の「信用度」をはかるということです。
与信管理に役立つツールとして、「信用調査会社による調査」が挙げられます。おもな信用調査会社でいうと、帝国データバンクや東京商工リサーチです。調査を依頼することで(有料)、新規取引先の調査報告を受けることができます。
調査依頼をしないまでも、最低限の報告書を取得するのであれば、「G-Search」というサービスを利用するのも1つの方法です。1,600円ほどで報告書を取得することができます。
いずれにせよ、「新規取引先の状況」について、できる限りで状況の把握につとめていること、その結果、状況をどのように判断しているかを、銀行に伝えるようにしましょう。
銀行は銀行で、新規取引先について調べることもありますが。それとは別に、与信管理がしっかりできている会社を、銀行は評価するものです。新規取引先の獲得は、自社の管理体制をアピールする機会でもある、と心得ておくとよいでしょう。
増加運転資金の相談をする
新規に取引先が増えるということは、売上が増えるということを意味しています。売上が増えるとどうなるか、通常は売掛金(売上代金の未回収)が増えるはずです。
また、モノを仕入れて売る商売であれば、棚卸資産(在庫)も増えることでしょう。その結果として、資金繰りが悪くなります。おカネが、売掛金や棚卸資産に変わってしまうからです。
とはいえ、これ自体が問題というわけではありません。むしろ、自然なことですから銀行も承知しています。問題があるとすれば、その状況を放置すること。放置して、資金繰りに支障をきたすことです。
そこで、会社がすべきことが「増加運転資金の相談」になります。設備資金(設備投資をするためのおカネ)以外に借りるおカネのことを「運転資金」といいますが。増えた売掛金や棚卸資産にあてるために借りるおカネが「増加運転資金」です。
新規取引先ができたときには、ぜひ、銀行に「増加運転資金の融資」を相談しましょう。取引量(売上高)が大きいときにはとくに、です。融資を受けるか受けないかで、その後の資金繰りの状況は大きく変わります。
なお、増加運転資金の融資に対する銀行の姿勢は、基本的に「ポジティブ」です。その背景には、新規取引先の増加・売上高の増加という「ポジティブな経緯」があるからですね。
そういう意味でも、「取引先の状況」や「今後の売上見込み」などを伝えることが重要になります。入金があやぶまれるような取引先であれば、いくら増加運転資金といえども、銀行は融資できません。また、今回限りの売上であれば、融資を躊躇するところになります。
ですから、増加運転資金の金額はどれくらいになるのか? その金額は、今後も安定的に必要になるのか? といったことを、「資金繰り予定表」なども提示しながら相談するのがベストです↓
銀行融資は、「借りられるとき」に借りるのがセオリーです。「借りられるとき」というのは、借りる理由があるとき、ということでもあります。その「とき」を逃さないようにしましょう。
まとめ
新規取引先ができたときに、融資を受けている会社がとるべき銀行対応についてお話をしてきました。伝えるべきこと、相談をすべきことはあるものです。
銀行からの支援をよりスムーズに受けられるように、それぞれの対応を押さえておきましょう。
- 取引の内容を伝える
- 取引先の状況を伝える
- 増加運転資金の相談をする