金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方

金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方

会社が銀行から受ける融資について。その金利を、最終的に決めるのは銀行です。が、その過程において、会社の考え方や行動が、金利に影響することはありますよ。という、お話です。

目次

最終的に金利を決めるのは銀行、ですが。

会社における銀行融資について。その「金利」を決めるのは会社だ、と言ったら、反論をいただくこともあるでしょう。もちろん、最終的に金利を決めるのは銀行だからです。

それは当然としても、銀行が金利を決めるにあたって、会社(融資先)の考え方や行動が影響することもまた事実だと言えます。

たとえば、「決算書の内容が良い会社は金利が低くなる」というのは、有名なハナシです。ところが、会社がただ黙って融資を受けていたのでは、なかなか金利が下がらないことはあります。

なぜなら、銀行としては「金利が高いほうがもうかる」からであり、わざわざ進んで金利を下げる必要はないからです。だとしたら、会社のほうから、決算書を「材料」として、銀行と「交渉」をする必要もあるでしょう。

そこで。金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方についてお話をしていきます。金利を決めるのが会社だとしたら、会社はどのように考えて、どのような行動をすればよいのか?

具体的にはこちらです↓

金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方
  • 自社の金利水準を示す
  • 適正金利を目指す
  • 金利は高くてもいい、と考える

それではこのあと、順番に見ていきましょう。

金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方

自社の金利水準を示す

銀行は、「ほかの銀行の動き」を気にしているものです。ほかの銀行が融資をするなら、ウチも負けずに融資する。ほかの銀行が融資を引き上げるなら、ウチも遅れをとらずに引き上げる。

その一環として、金利についても同じことが言えます。ほかの銀行の金利を見ながら、「ウチはどうするか?」と、銀行は考えているわけです。

このとき、銀行が「ひとつの目安」にしているのが、その会社の「平均金利」になります。算式であらわすと、次のとおりです↓

平均金利 = 支払利息 ÷ {(期首の借入金残高 + 期末の借入金残高)÷2}

これにより、その会社の金利がどれくらいか、ほかの銀行からどれくらいの金利で借りているかを、銀行は推測することになります。決算書がありさえすれば計算できるので便利な指標です。

が、あくまで「平均金利」に過ぎず、「実態」をあらわしていないケースもあるため、会社としては気をつけなければいけません。つまり、「銀行は勝手に、自社の金利水準を計算しているのだから、あえて言わずともよいだろう」ではいけない、ということです。

では、どのようなケースで、平均金利と実態とが乖離してしまうのか? それは、金利が低下傾向にあるケースです。金利が下がる理由としては、会社の業績が良くなっていることもあれば、世の中の金利が下がっているから、ということもあるでしょう。

いずれにせよ、「以前に受けた融資の金利は高め、最近受けた融資の金利は低め」という状況はあるはずです。この場合、いま現在の金利水準としては「低め」のほうが、より実態に合っていると言えます。

けれども、平均金利だけを見ていると、高めの金利と低めの金利とが平均されてしまっているがために、銀行は「いま現在の金利水準」を知ることができません。結果として、銀行からは「いま現在の金利水準」よりも高めの金利を提示される可能性が高まります。

これを避けるためにはどうするか? 言うまでもありませんが、会社が情報提供をすることです。具体的には、「借入金一覧表」を作成して、銀行に提示します。

借入金一覧表とは、文字どおり、自社の借入金について一覧にした表です。借入日や返済期間、毎月の返済額や金利などの「融資条件」を、各借入金ごとに記載します。参考書式については、こちらの記事もどうぞ↓

こうして、それぞれの借入金についての金利を示すことができれば、銀行も「いま現在の金利水準を」を把握することができます。金利を銀行に明かすのを嫌う社長もいますが、明かしたほうがよいケースもある。と、考えておきましょう。

適正金利を目指す

いま現在の金利水準とは別に、会社が目指す「適正金利」という考え方もあります。これから先の会社の状況から見て、「これくらいの金利であるべきだ」との考え方です。

たとえば、いま現在の金利水準は2%くらいだけれど、「この先は、1.5%を目指す」という場合。それをただただ銀行に伝えたとしても、金利を引き下げるのは難しいでしょう。

銀行にしてみれば、引き下げるだけの「材料」がないからです。そこで、会社にできることは「事業計画書(経営計画書)」の作成になります。でもなぜ、計画書が金利を決める材料になるのか?

まずは、将来の業績が、金利の材料になりうるからです。計画書によって、これから先の会社の状況を「数字」で明示することにより、その数字から見た金利を、銀行は検討することができるようになります。

もちろん、計画書の数字はいかようにも描けてしまうものですから。実現可能性の高い計画書を作成する必要があるのは言うまでもありません。とはいえ、計画書がなければ、つまり、口先だけでは銀行にとっての根拠にならないので、計画書の作成・提示が「出発点」になることは理解しておきましょう。

それから、もうひとつ。計画書が金利を決める材料になる理由は、計画のなかに金利が埋め込まれているからです。

どういうことか、というと。計画書のなかには、当然、将来の支払利息の金額も記載されることになります。たとえば、向こう1年で 3,000万円の借入予定があるのなら、その 3,000万円に対する支払利息を、計画に織り込まなければいけません。

その際、会社は金利を「仮定」して、支払利息の計算をするわけですが。その仮定の金利によって、計画の全体が成立していると考えれば、それは会社にとっての「適正金利」だとの見方もあるでしょう。

もちろん、さいごに金利を決めるのは銀行です。ただそれでも、会社が適正金利として、計画書に織り込んだ金利があるのであれば、銀行に対してアピールすべきところだと考えます。

具体的には、「3,000万円の借入予定については、この計画書(の金利)を参考に、ご提案をお願いします」といった伝え方をしてみるとよいでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、計画書の「実現可能性」が大切です。実現可能性の低い計画書と見られれば、いくらアピールをしたところで、金利は銀行の一存で決まります。

金利は高くてもいい、と考える

金利というと、「低くしたい、低くしたい」と考えるものでしょう。ですが、必ずしも低くしなくてもいい。むしろ、高くしたほうが得策だ、というケースはあるものです。

たとえば、プロパー融資。いままでずっと、信用保証協会の保証付き融資しか受けたことがない会社であれば、その保証がない融資であるプロパー融資を目指しましょう。

なぜなら、プロパー融資には保証付き融資のような「限度額(制度上の)」がありません。また、保証付き融資は比較的借りやすい融資ですから、業績悪化時のために温存したいものでもあります。

したがって、会社はできる限り、プロパー融資で融資を受けることが大切です。とはいえ、プロパー融資は信用保証協会の保証がなく、銀行にとってはリスクが高くて貸しにくい融資にあたります。

それでも、会社がプロパー融資を引き出すためにはどうしたらよいか? もう、お気づきのことでしょう。「金利は高くてもいいから、プロパー融資でお願いします」と、銀行に伝えることです。

金利は高くといっても、いまは低金利の時代です。5%や6%といった、高金利になることはありません。また、はじめてのプロパー融資では金利が高くても、返済実績ができることで、次のプロパー融資では金利を下げることもできます。

さらに、保証付き融資には「保証料」の支払いが必要ですが、プロパー融資にはそれがありません。保証料が「おおむね金利1%相当」と考えれば、プロパー融資の金利もそれほど高くはない、との考え方もできるはずです。

というように、プロパー融資以外にも、「融資条件」を改善するのに金利は使えます。たとえば、担保なしの融資、経営者保証なしの融資、短期継続融資(手形貸付、当座貸越)など。金利は、融資条件のひとつに過ぎません。

あえて「高い金利」を申し出ることで、ほかの融資条件を良くすることができないかを検討してみましょう。金利を自社でコントロールできる会社の融資条件は、総じて良いものです。

まとめ

会社が銀行から受ける融資について。その金利を、最終的に決めるのは銀行です。が、その過程において、会社の考え方や行動が、金利に影響することはありますよ。という、お話でした。

融資の金利は、自社があるていどコントロールできるもの、自社があるていどコントロールすべきもの、と考えてみるのはいかがでしょうか。自社にとって、「良い借りかた」につながるはずです。

金利を決めるのは銀行ではなく会社、という考え方

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