銀行に運転資金の申し込みをしたけれど、希望金額どおりには借りられそうもない… という場合にはどうするか? について、お話をしていきます。
希望金額どおりに借りられるとは限らない。
会社が銀行から「運転資金(設備投資のため以外のおカネ)」を借りようとするときに、希望金額どおりには借りられないこともあるでしょう。
つまり、1,000万円の融資を希望したのに、銀行からは「融資できるのは 700万円です」と言われるようなケース。この場合、会社はいったいどのような対応をすればよいのかについて、お話をしていきます。
希望金額には届かずとも借りたほうがよいのか? 希望金額どおりに借りるにはどうしたらよいのか? など。このあと確認をしていきましょう。
銀行に融資を申し込むときには、会社のほうから融資希望額を伝えましょう。銀行は、「必要なおカネ」を貸すのであって、「貸せるだけ貸す」のではありません。とはいえ、「いくらくらいなら借りられるのか…?」については、こちらの動画コンテンツでも話をしています↓
基本は借りる、でも断るケースもある
融資の申し込みをした結果、銀行から希望金額どおりの回答をもらえなかったとしても。基本は、借りることをおすすめします。なぜなら、「融資実績」をつくるためです。
銀行は、「過去にいくらの融資をしたことがあるか、その融資をきちんと返済してもらえたか」という実績を評価します。ゆえに、はじめから大きな金額の融資を受けることは難しく、小さな金額から少しずつ実績を積み上げていくことが大切です。
そう考えると、希望金額どおりではないからといって断っていれば、いつまでたっても融資実績ができません。とくに、新規取引の銀行・取引歴の浅い銀行は、実績が不足しますから、融資金額が少なくなるものです。
また、いちど断っておきながら、あとになってから「やっぱり、その金額でいいから貸して」とはいかないことも覚えておきましょう。融資審査は、あくまでそのときの審査であって、時間がたてば状況が変わりますから、そのときに融資できる金額もまた変わります。
やっぱり貸してほしいくらいですから、自社の状況は悪いはずです(業績悪化・資金繰り悪化)。だとすれば、融資金額はさらに少なくなる… というのは、じゅうぶんにありうることでしょう。借りられるうちに借りておくのは、銀行対応のセオリーです。
ただし、それでも断るべきケースがあります。いま融資を受けたとしても、すぐにまたおカネが足りなくなってしまうようなケースです。なお、ここで言う「すぐに」とは、おおむね2〜3ヶ月くらいの期間をいいます。
では、いま融資を受けておきながら、すぐにおカネが足りなくなって返済できなくなった場合にはどうなるか? 端的に言えば、銀行からは「ダマしたな!」と見られることになります。つまり、返せないとわかっていながら借りたんじゃないのか? だとしたら詐欺だぞ、ということです。
したがって、このケースでの対応は「借りるのではなく、リスケジュール(返済猶予)」になります。「いまその金額を借りても、すぐに資金不足になってしまう。なので、既存借入の返済を止めてほしい」とリスケジュールを申し出るのがよいでしょう。
資金繰りが厳しいときほど、「少しでも借りられるなら借りてしまおう」と考えがちですが。資金繰り予定表を作成してみて、「借りればもつのか、借りてももたないのか」を冷静に判断することが重要です。
ほかの融資条件についてはのむ
希望金額どおりには借りられないかもしれない、でも、なんとか希望金額どおりに借りたい… と考えるのであれば。融資金額以外の融資条件については妥協する、という方法があります。
具体的には、返済期間は短くても妥協する、金利は高くても妥協する。場合によっては、担保提供にも妥協する。というように、融資金額以外の融資条件をのむことで、希望金額を引き出せる可能性があります。
なお、この方法をとるのであれば、融資の申し込みをする段階で、その旨を銀行に伝えるのがよいでしょう。なぜなら、審査の結果が出たあとで伝えられると、銀行は稟議をしなおさなければいけないからです。それはメンドーなので、検討してもらえない可能性が高まります。
ですから、のめる条件があるのなら、申し込みをするときに伝えておきましょう。とはいえ、やみくもに条件をのむような姿勢を示すと、のまされすぎてしまうこともありえます。足元を見られる、ということです。
よって、自社には「どれくらいの借入余力があるのか?」を検討しつつ、借入余力に対して融資希望額が大きい場合にのみ、妥協できる融資条件を伝える。という対応が必要になります。借入余力については、冒頭に挙げた関連動画も参考にどうぞ。
希望金額どおりにいかない理由を確認する
金額以外の融資条件を妥協するにもかかわらず、やっぱり希望金額どおりには借りられない場合にはどうするか? 借りるにしても借りないにしても、「理由」を銀行に確認しましょう。
どうして、希望金額どおりには借りられないのか? という理由です。理由を確認することができれば、次回の融資申し込みに活かすことができます。
たとえば、融資希望額に対して、「自社の業績が悪すぎる」という理由があるでしょう。売上高が少ないとか、利益が少ないとか。債務超過(資産<負債)の金額が大きい、といった理由もありえます。
こういった理由については、できるだけ具体的な箇所、具体的な金額を教えてもらうように努めましょう。具体的であるほど、改善に手を付けやすくなるからです。
このとき、銀行に対して「詰め寄る」ような態度には気をつけましょう。「どうして借りれないんだ!」と詰め寄ってしまうと、銀行としては警戒をするばかりです。すると、なにも教えてもらうことができなくなってしまいます。
そこで、詰め寄るのではなく、「アドバイスを求める姿勢」をとりましょう。「今後の改善に役立てたいので、自社のどのあたりに問題があるか教えてもらえますか?」といった聞き方であれば、銀行の警戒もやわらぐはずです。
なお、希望金額どおりに借りられない理由は、業績面の問題に限りません。数字にはあらわれない問題もあります。たとえば、過去に社長と銀行担当者とで口論(トラブル)があったとか、ほかの銀行で借り換えた(肩代わり融資)ことがあるとか、社長やほかの役員の個人信用情報に問題(金融ブラック)があるとか。
このあたりの理由となると、銀行に理由を聞いても歯切れが悪くなるものです。理由を聞いてもなかなか教えてくれないときには、そのあたりの問題も疑ってみましょう。
また、前述したとおり、融資実績が足りていないという理由もありえます。業績含めて、会社自体に問題はないものの、融資実績がじゅうぶんではないために「いまはそこまでの金額を貸すことはできない」というケースもあります。
この点で、取引銀行ごとに「融資残高の推移」を把握しておくことは重要です。今回希望する融資を受けることで、過去もっとも大きい融資残高を超えるようなら、銀行は慎重に審査をするでしょう。そこまで貸した実績がないからです。
いっぽうで、過去もっとも大きい融資残高におさまるようであれば、少々業績が悪くても、希望金額どおりに借りられる可能性は高いといえます。
会社としては、融資残高を伸ばしたいところなので、取引実績を増やしながら、業績がよいタイミングをみはからって、少しずつ大きめの希望金額をとおしていきたいものです。
まとめ
銀行に運転資金の申し込みをしたけれど、希望金額どおりには借りられそうもない… という場合もあるでしょう。そのようなときにどうするか? について、お話をしてきました。
基本は、それでも借りる。けれども、またすぐに資金不足になるのであれば借りてはいけません。また、融資を申し込むときに、返済期間や金利を妥協するのはひとつの方法です。
そのうえで、希望金額どおりに借りられなかったときには、今後のために「理由」を確認しておくようにしましょう。