会社が融資を受けるにあたり、銀行に提示する書類の1つである「資金繰り予定表」。ところが、銀行はその資金繰り予定表を信用していません。というわけで、銀行に信用される資金繰り予定表の作成ポイントについてお話をしていきます。
その資金繰り予定表は疑われている。
融資を受けている・受けようとする会社が、銀行に提示する書類に「資金繰り予定表」があります。文字どおり、資金繰りの予定を記載した表です。
その資金繰り予定表は、融資を受けるにあたってだいじな書類でありながら、銀行は基本的に信用していないという一面があります。つまり、会社が提示する資金繰り予定表の内容を、銀行は疑っているということです。
すると、せっかく資金繰り予定表を提示しても、その効果(融資が受けやすくなる・融資条件が良くなる)は半減してしまいます。これを避けるためには、銀行に信用される資金繰り予定表をつくること。そのポイントについて、お話をしていきます。具体的にはこちらです↓
- 実績を付ける
- 預金が増えている
- 差異分析ができている
これら3つのポイントについて、このあと順番に見ていきましょう。
銀行に信用される資金繰り予定表の作成ポイント
実績を付ける
資金繰り予定表に、「絶対的な様式」はありません。とはいえ、「向こう6ヶ月〜1年ていどが対象」という共通認識があります。これから先、6ヶ月〜1年ていどの期間を対象にして、資金繰りの予定を記載するということです。
予定とは、すなわち「予測」や「計画」ということであり、「いかようにも書けてしまう」ものでもあります。その結果、銀行融資を受けられるようにと、「売上(入金)が異様な右肩上がり」の資金繰り予定表をつくってしまう会社は、けして少なくありません。
なお、ここでいう「異様」とは。過去の実績から見て、ということになります。たとえば、ここしばらくは毎月 300万円くらいの入金なのに、これから先は急に、毎月 400万円、500万円、600万円… と増えていく、みたいな。
そのような資金繰り予定表を銀行はたくさん見ているからこそ、資金繰り予定表は疑われてしまうのです。では、どうしたら疑いをやわらげることができるのか?
資金繰りの「予定」だけではなく、「実績」も付けることです。様式でいうと、「過去3ヶ月 + 向こう1年」を対象にした資金繰り表をおすすめします。
これにより、過去3ヶ月分の資金繰り実績が記載されていると、実績と予定とを見比べることで、銀行は「予定の妥当性」を検証しやすくなるのがメリットです。
過去から予定を繋げてみたときに違和感はないか、異様な右肩上がりになっていないか? これを、資金繰り表をつくりながら、会社自身も確認できるというメリットもあります。
つくっている時点で違和感に気づけば、異様な右肩上がりの資金繰り表を、そのまま銀行に提示してしまうことはなくなるはずです。
預金が増えている
たとえば、「過去3ヶ月 + 向こう1年」を対象にした資金繰り予定表をつくるとします。このとき、作成時時点の預金残高に対して、向こう1年後の預金残高が減っている、という資金繰り予定表はいけません。
端的にいえば、「おカネが減っていくとわかっている会社に、銀行がおカネを貸したいと考えますか?」というハナシです。貸したいとはおもわないはずですよね。
したがって、資金繰り予定表をつくるのであれば、「預金が増えていく(最悪でも現状維持)」ような資金繰り予定表をつくる必要があります。
さきほど、異様な右肩上がりの資金繰り予定表は信用されない、という話をしました。だからといって、あまりに悲観的な資金繰り予定表となると、預金が減っていくことになるので注意が必要です。
では、どうしたらよいのか? まずは、「資金繰り分岐点売上高」を計算してみましょう。資金繰り分岐点売上高とは、「経費や借入返済などの支出を補うのに必要な売上高」をいいます↓
資金繰り分岐点売上高を超えるだけの売上が見込めれば、会社はおカネを増やしていくことができます。その見込みを、資金繰り予定表に落とし込んでいけばOKです。
いっぽうで、資金繰り分岐点売上高を計算したところ、その売上高を実現するのは難しそうだ… という場合。経費削減をはかる、原価率の改善をはかることを検討し、そのうえで再度、資金繰り分岐点売上高を計算してみましょう。
それでもなお、売上見込みよりも資金繰り分岐点売上高のほうが高い、という場合。既存の借入金を「一本化」するなどして、毎月の返済額を減らす必要があります↓
というように、必要に応じて、経費削減や原価率改善、一本化について、資金繰り予定表に織り込んでいきましょう。現実味のある資金繰り予定表にしあがります。
なお、いわゆる「運転資金」の融資については、「折り返し融資」の考え方があります。当初の借入額から返済が進んだ分の金額を借り直す融資です。折り返し融資、あるいは新規融資について、資金繰り予定表に織り込み、銀行に相談をするのもよいでしょう。
つまり、折り返し融資や新規融資を受けることで、向こう1年の預金を増やすことができる(減らさずに済む)という資金繰り予定表になります。
ただし、売上見込みが、資金繰り分岐点売上高に比べてあまりに少ないようだと、折り返し融資や新規融資を受けるのは難しくなることは理解しておきましょう。
差異分析ができている
資金繰り予定表をつくっておわりにしている会社は少なくありません。予定があるということは、いずれ実績ができるということ。であれば、予定と実績との差異分析をするのはあたりまえです。
予定と実績が完全に一致することはまずありえませんから、なにかしらの差異が生じます。ですから、毎月差異を確認して、その差異はなぜ生じたのか? の「原因」を把握しておきましょう。
この点で、銀行は差異を把握しています。会社から提示された資金繰り予定表を、銀行は、その後の実績と照らし合わせているものです。このとき、大きな差異があったらどうでしょう?
当然、「この資金繰り予定表は信用できないなぁ…」ということになりますよね。
なので会社は、差異を把握して、その原因を銀行に伝えること。さらには、以後大きな差異が出ないように「対策」まで銀行に伝えること。そこまでできれば、少しは信用を回復できるでしょう。
そもそも会社は、大きな差異が出ないように資金繰り予定表をつくりたいわけですが。そうはいっても、予定である以上は差異が生じることだってあります。にもかかわらず、その差異を把握しておらず、放置されていることが問題なのです。
実際には、資金繰りの予定と実績の差異を把握していない会社がほとんどだったりします。資金繰り予定表をつくっている会社も少ないのですが、つくっていても差異分析までできている会社はほとんどありません。
だから銀行は、会社が提示する資金繰り予定表を信用しないわけですが。いっぽうで、差異分析ができていれば、大きな信用をえられるということです。銀行に対して、「この会社は、ほかの会社とひと味ちがうぞ」とおもわせることができます。
資金繰り予定表を提示したのであれば、その後は毎月、差異分析について書類にまとめて、銀行に提示するのがおすすめです。
まとめ
会社が融資を受けるにあたり、銀行に提示する書類の1つである「資金繰り予定表」。ところが、銀行は基本的に、その資金繰り予定表を信用していません。
すると、せっかく資金繰り予定表を提示しても、その効果(融資が受けやすくなる・融資条件が良くなる)は半減してしまいます。これを避けるために、本記事でお話をした「資金繰り予定表の作成ポイント」を押さえておきましょう。
- 実績を付ける
- 預金が増えている
- 差異分析ができている