利益から逆算してつくる数値計画はよくない。そんなのは絵に描いた餅だ!との意見もありますが。むしろ、利益から逆算してつくる数値計画は望ましいとさえいえるのでは?というお話です。
必ずしも悪ではない
会社がつくる数値計画について。利益から逆算してつくる数値計画はよくない!というか、無意味だ!みたいな意見を見聞きすることがあります。
利益から逆算してつくるとは、つまり、必要な利益をまずは決めたうえで、その利益になるように売上や費用の計画を考える、ということです。それって、絵に描いた餅なんじゃないの?と。
なるほど、いわんとすることはわかります。ところが、利益から逆算してつくる数値計画は、必ずしも「悪」というわけではありません。むしろ、そのほうが望ましいともいえます。
そのあたりの理由について、お話をしてみることにしましょう。最近では、銀行も伴走支援(取引先の事業支援)にチカラを入れていることから、数値計画をはじめとした経営計画書に注目が集まっています。
というわけで、ぜひ、数値計画づくりのポイントについても押さえておきましょう。で、利益から逆算してつくる数値計画が、むしろ望ましい理由は次のとおりです↓
- 絵に描いた餅だというのなら
- 具体策を講じられるようになる
- 銀行からの信用度が上がる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
利益から逆算してつくる数値計画が望ましい理由
絵に描いた餅だというのなら
利益から逆算してつくる数値計画とは、利益ありきの計画なのだから、そんなのは絵に描いた餅だ!という意見があることは前述しました。
ちなみに、利益から逆算してつくる数値計画について、具体的な考え方(必要な利益っていくらなの?)については別記事がありますので、ご参考にどうぞ↓
いっぽうで、順算でつくる数値計画はどうなのか?順算とはつまり、売上の計画を立てて、経費の計画を立てて…その結果としての利益を計算する。といった計算方法です。
わたしが知る限り、多くの社長は「順算」によって計画を立てようとします。すると、どうなるか。とんでもなく「調子のよい計画」ができあがることが少なくありません。
まずは売上について、社長は「売れる金額、売りたい金額」を考えます。社長とは、夢や希望にあふれている人でもありますから(経営の原動力)、「売れる金額、売りたい金額」が現実に対して過大になりがちなのです。
結果として、利益もふくらみます。さらには、右肩上がりで売上が増えていく、もちろん、利益もまた右肩上がりで増えていく。そんな計画書が、ちまたにはあふれています。
だとすれば、そちらのほうが「絵に描いた餅」なんじゃないの?というのが、わたしの考えです。現実に対して過大であれば、のちのち計画と実績は乖離します。そのときに困るのは社長です。
それでも、経営歴の長い社長であれば、過去の経験から乖離を免れるケースもあります。ところが、これから創業しようという経営歴のない社長などは、乖離が大きくなりがちです。
順算でつくる計画書には、じゅうぶんに気をつけましょう。
具体策を講じられるようになる
順算でつくる計画に危うさがあるのはわかった。でもさぁ、それって逆算でつくる計画だって同じなんじゃないの?と、おもわれるかもしれません。ですが、それは違います。
そもそも、逆算のスタートは「必要な利益」です。会社が存続していくにあたって「最低でも必要な利益」からスタートします。言い換えると、その利益を出せなければ、遅かれ早かれ会社は倒産するということです。
ゆえに、必要な利益とは「必達の利益」でもあります。その必達の利益から逆算して求める売上が、「過大」ということはありえません。その売上もまた必達だからです。
では仮に、必要な利益から逆算した売上が、年間5,000万円だとします。これを見たときに、社長がどう考えるかです。「年間5,000万円など余裕だ」と考えるのであればそれを計画としてよいでしょう。ただし、裏付けとして「商品別・店舗別」などの内訳も計画することです。
それに対して、「いやいや、5,000万円は厳しい…」と感じる場合にはどうするか。手段は2つです。原価率を下げられるように検討するか、固定費の削減を検討するか。いずれか、あるいは両方をとりいれることで、必要な売上高は少なくなります。
というように、数値計画を利益から逆算してつくると、具体策(手段)を講じられるようになる(というか、講じざるをえない)のがメリットです。
順算でつくったときには、つくりっぱなしになるところを、逆算でつくったときには、つくりっぱなしにならずにすみます。具体策を講じることを通じて、計画を検証することができるわけです。
銀行からの信用度が上がる
逆算でつくる計画は、具体策を講じることを通じて、計画を検証することができるといいました。これにより、銀行からの信用度が上がるのはメリットだといってよいでしょう。
繰り返しになりますが、逆算でつくる計画のスタートは、最低でも必要な利益です。その利益を達成するための、原価率低減や固定費削減が検討されていることになります。
よって、順算でつくったような計画、つまりは「右肩上がりの調子のよい計画」とは説得力が違うのです。逆算でつくる計画とは、いうなれば「堅実で現実的な計画」の傾向があります。
ちなみに、必要な利益からスタートしたうえで、「実際にはもう少しいけるはずだ(売上を増やせるはずだ)」というのであれば、その分を補正するのもよいでしょう。
ただし、あまりやりすぎないようにすることです。やりすぎれば結局、順算の計画と同じことになってしまいます。少なくとも、銀行に提出する計画は「堅実」なものにしておきましょう。
計画の売上が大きくなるほど、銀行からは「根拠」を求められるようになりますし、信用度は下がるものです。また、実績が計画を下回れば、やはり信用度は下がってしまいます。
なので、計画は堅実に、実績が上振れるくらいがおすすめです。
それでもなお、高い目標を掲げたいのであれば、あくまで「社内用」としておくのがよいでしょう。銀行に提出する計画は「必達目標」として、社内用の計画は「努力目標」として使い分ける、という考え方です。
まとめ
利益から逆算してつくる数値計画はよくない。そんなのは絵に描いた餅だ!との意見もありますが。むしろ、利益から逆算してつくる数値計画は望ましいとさえいえるのでは?というお話をしました。
最近では、銀行融資においても計画の重要性が高まっています。数値計画づくりのポイントとして、今回のお話を押さえておきましょう。
- 絵に描いた餅だというのなら
- 具体策を講じられるようになる
- 銀行からの信用度が上がる