キャッシュフロー計算書?見たことないなぁ・・・つくり方も知らないし。
第3の財務諸表と呼ばれて久しい「キャッシュフロー計算書」。とはいえ。作成義務がない中小零細企業では、いまだ浸透不足の観が否めません。
でも、つくり方も、見方もよくわからんし。そんな声が聞こえてきます。それならば。まずはつくってみましょうか、サクッとね。
キャッシュフロー計算書のつくり方
キャッシュフロー計算書は、その見方が大事なわけですが。「モノ」が無ければ見方もなにもありません。だから、まずはつくりましょう。
「直近2期の決算書」のご用意を
できあがる「料理」がキャッシュフロー計算書ならば。「材料」が必要です。ご用意いただく材料は、
- 直近の決算書(貸借対照表と損益計算書)
- 直近の前期の決算書(貸借対照表のみ)
これだけ。さぁ、はじめましょうか。
計算過程のワク組をつくる
それでは、つくっていきますが。エクセルでつくってしまうのがいちばんラクチンです。できるのであればエクセルを起動しましょう。ムリならムリで、手書きでも十分いけます。
次のとおり、「計算過程」の枠組みとしての表をつくってみましょう。「(D)キャッシュ増減」欄の金額を求めるための算式は、「増減の算式」欄を参考に。
勘定科目 | 貸借対照表 | (C)損益計算書 | (D)キャッシュ 増減 | 増減の算式 | ||
(A)直近期 | (B)直近前期 | |||||
1 | 営業利益 | =(C) | ||||
2 | 減価償却費 | =(C) | ||||
3 | 貸倒損失 | =(C) | ||||
4 | 法人税等 | =-(C) | ||||
5 | 現金・預金 | =(A)-(B) | ||||
6 | 売掛金 | =(B)-(A) | ||||
7 | 受取手形 | =(B)-(A) | ||||
8 | 棚卸資産 | =(B)-(A) | ||||
9 | 他の流動資産 | =(B)-(A) | ||||
10 | 買掛金 | =(A)-(B) | ||||
11 | 支払手形 | =(A)-(B) | ||||
12 | 短期借入金 | =(A)-(B) | ||||
13 | 未払法人税等 (納税充当金) | =(A)-(B) | ||||
14 | 他の流動負債 | =(A)-(B) | ||||
15 | 長期借入金 | =(A)-(B) |
金額を決算書から転記する
表ができたら。それぞれの勘定科目について、下表の金額記載箇所を参考に、貸借対照表または損益計算書から金額を転記してみましょう。例示は次のとおりです。
勘定科目 | 貸借対照表 | (C)損益計算書 | (D)キャッシュ 増減 | 増減の算式 | ||
(A)直近期 | (B)直近前期 | |||||
1 | 営業利益 | 850 | 850 | =(C) | ||
2 | 減価償却費 | 600 | 600 | =(C) | ||
3 | 貸倒損失 | =(C) | ||||
4 | 法人税等 | 180 | ▲180 | =-(C) | ||
5 | 現金・預金 | 1,850 | 1,110 | 740 | =(A)-(B) | |
6 | 売掛金 | 1,250 | 970 | ▲280 | =(B)-(A) | |
7 | 受取手形 | =(B)-(A) | ||||
8 | 棚卸資産 | 2,000 | 2,000 | 0 | =(B)-(A) | |
9 | 他の流動資産 | 30 | 130 | 100 | =(B)-(A) | |
10 | 買掛金 | 760 | 840 | ▲80 | =(A)-(B) | |
11 | 支払手形 | =(A)-(B) | ||||
12 | 短期借入金 | 1,200 | 1,200 | 0 | =(A)-(B) | |
13 | 未払法人税等 (納税充当金) | 180 | 10 | 170 | =(A)-(B) | |
14 | 他の流動負債 | 30 | 30 | 0 | =(A)-(B) | |
15 | 長期借入金 | 2,680 | 2,990 | ▲310 | =(A)-(B) |
転記の補足説明
注意を要する転記について、説明を補足します。
1. 営業利益
損益計算書から(C)欄に転記します。営業利益がプラスであればプラスで。マイナスであればマイナスで転記。
2. 減価償却費、3. 貸倒損失
損益計算書から(C)欄に転記します。経費科目ですが、金額はプラスで転記。
4. 法人税等
損益計算書の末尾、「当期純利益」の上。「法人税等」の金額を(C)欄に転記。経費科目ですが、金額はプラスで転記します。
5. 現金・預金
貸借対照表から、現金と預金の金額の合計額を転記します。直近期、直近前期について、それぞれ(A)(B)欄に転記。
6. 売掛金、7. 受取手形
貸借対照表から転記します。直近期、直近前期について、それぞれ(A)(B)欄に転記。
8. 棚卸資産
貸借対照表から、商品、製品、仕掛品、原材料、貯蔵品などの「棚卸資産」を転記します。直近期、直近前期について、それぞれ(A)(B)欄に転記。
9. 他の流動資産
貸借対照表の「流動資産の合計額」から「5. 現金預金+6. 売掛金+7. 受取手形+8. 棚卸資産」をマイナスして計算します。
10. 買掛金、11. 支払手形、12. 短期借入金、13.未払法人税等(納税充当金)、15. 長期借入金
貸借対照表から転記します。直近期、直近前期について、それぞれ(A)(B)欄に転記。
14. 他の流動負債
貸借対照表の「流動負債の合計額」から「10. 買掛金+11.支払手形+12.短期借入金+13.未払法人税等(納税充当金)」をマイナスして計算します。
キャッシュロー計算書のできあがり
準備はできましたので、キャッシュロー計算書のカタチにまとめます。
簡易版 キャッシュフロー計算書
上記でまとめた計算過程の表から、キャッシュフロー計算書のカタチに転記します。次のとおりです。
項目 | 金額 | 「金額」の計算式 | |
a | 営業活動キャッシュフロー | 1,180 | =1.(D)+2.(D)+3.(D)+4.(D)+6.(D)+7.(D) +8.(D)+9.(D)+10.(D)+11.(D)+13.(D)+14.(D) |
b | 投資活動キャッシュフロー | ▲130 | =d-a-c |
c | 財務活動キャッシュフロー | ▲310 | =12.(D)+15(D) |
d | 現金・預金の増減 | 740 | =5.(D) |
e | 期首現金・預金残高 | 1,110 | |
f | 期末現金・預金残高 | 1,850 |
あくまで簡易版です。きちんとした手順でつくった場合のキャッシュフロー計算書とは、a、b、cの金額が多少異なる。ということもありえます。
とはいえ、「大勢を知る」には、これで十分役立つものであるはず。
どう読めばいいのか?
できたはいいけれど。いったいどのように読めばいいのか?ということについて、少しだけ触れておきます。
- 営業活動キャッシュフロ-、投資活動キャッシュフロー、財務活動キャッシュフローを合計すると「現金・預金の増減」に一致
- 「現金・預金の増減」=「期末現金・預金残高」-「期首現金・預金残高」
つまり、キャッシュフロー計算書とは、
1年間の現金・預金の増減額について、その内訳を示したもの といえます。
その内訳が、3種類のキャッシュローです。それぞれをカンタンに解説すると、
- 営業活動キャッシュフロー → 本業の活動により、キャッシュ(現金・預金)がどれだけ増減したか
- 投資活動キャッシュフロー → 固定資産の取得を中心とした投資活動により、キャッシュ(現金・預金)がどれだけ増減したか
- 財務活動キャッシュフロー → 新規借入、借入返済による財務活動により、キャッシュ(現金・預金)がどれだけ増減したか
例示について、解説すると
以上の読み方にならい、例示のケースを見てみると。
まずは、営業活動キャッシュフローが1,180。本業の活動により、現金・預金が1,180増えたことを表しています。
営業活動キャッシュフローに近い数字として、営業利益 850というものがあります。ほぼ間違いなく、利益額(850)と現金・預金の増減(1,180)は一致しません。
売掛金や買掛金などの信用取引や、現金の動きを伴わない経費である減価償却などが原因です。それはそれとして。
もっとも大事なのは「営業活動キャッシュフロー」です。本業でどれだけのキャッシュを生み出したのかは、大事なポイント。
損益計算書が示す利益額だけに満足することなく、営業活動キャッシュフロー(現金・預金)の動きにも目を配るのがキャッシュフロー計算書です。
また例示では、投資活動キャッシュフローと財務活動キャッシュフローはマイナスです。とはいえ、営業活動キャッシュフローの範囲内での活動であり、問題はなさそうだと読み取ります。
逆に、営業活動キャッシュフローを大きく超える投資活動キャッシュフローには注意が必要です。過大投資ではないのか?などと疑ってみること。
営業活動キャッシュフローを上回る財務活動キャッシュフローも同じです。本業だけでは、借金の返済原資が不足していることなどを表しています。
このあたりの「見かた」は勉強も必要ですが。きょうは、「つくり方」メインのお話ですから。これ以上の「見かた」はこちらの記事をどうぞ ↓
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まとめ
第3の財務諸表と言われる「キャッシュフロー計算書」について、カンタンなつくり方をお話ししました。
いままで見たことがないなぁ、という場合には。自社の「キャッシュを生み出す能力」を知るツールとしてつくってみませんか。
3種類のキャッシュフローを複数年並べてみると、おカネの大きな動きが見えてきます。