毎月の借入返済がツラい・・・なんとかならないか?
そんなときには、「借り換え」という方法が考えられます。
返済額を抑えたあらたな条件で借入し、いまある銀行借入をいちど返済する方法です。
リスケじゃない、借り換えだ
事業の状況悪化などにより、既存の銀行借入を返済するのがきびしくなる。ということはあるでしょう。
その対応策としての「借り換え」について、お話をしていきます。
「借り換え」とは?
はじめに、「借り換えとは?」について触れておきましょう。
いまある借金を、あらたな別の借金で借入しなおすことを「借り換え」と言います。基本的には、借金を増やすわけでも減らすワケでもありません。
これでどうして、きびしい銀行返済の状況を改善することができるのか?
理由は「借入条件」にあります。つまり、いまある借金の借入条件よりも、「良い条件」であらたな借金をするということです。
具体的には、いまよりも返済期間を延ばし、毎月の返済額を減らす。これが「借り換え」による対応策のしくみになります。
それを「リスケ」というのではないのか?
毎月の返済額を減らす、というのは。いわゆる「リスケ(リスケジュール)」ではないのか? と思われるかもしれませんが。
リスケと借り換えは違います、別モノです。
リスケは、「いまある借金」をそのままに。返済額を減額するなど、「いまある借金」の返済条件を変更することを言います。
これに対して借り換えは、「いまある借金」はいちど返済してしまうのでしたよね。ですから、返済条件の変更ではありません。あくまで、新規の借入です。
いつまでもあると思うな親と借り換え
リスケというのも聞こえが悪いし。それなら、借り換えで! といきたいところですが。
話はそう単純ではありません。借り換えを実現するためには、一定の状況が求められるのです。
要するに、おカネの貸し手である銀行に「あらたな融資をしてもだいじょうぶかな」と思わせるだけの状況がなければいけません。
しつこいようですが、借り換えは「あらたな借金」だからです。
ではその「借り換え」ができる状況とはどういう状況? ということについて、このあとお話していきます。
借り換えができる会社、できない会社
「借り換え」が実現しやすい状況、実現しにくい状況について考えていきましょう。。
借り換え前の様子うかがい
「借り換えをしようか」という会社の、イメージ例を提示します ↓
《イメージ例》
- 決算書情報・・・税引前利益 5,000千円、減価償却費 1,000千円
- 借入の状況・・・下表のとおり(金額単位:千円)
借入金残高 | 毎月返済額 | 年間返済額 | |
A銀行 | 30,000 | 500 | 6,000 |
B信用金庫 | 20,000 | 250 | 3,000 |
計 | 50,000 | 750 | 9,000 |
さぁ、この会社の現状を想像してみてください。どんな状況にあると思いますか?
簡易キャッシュフローを見る
イメージ例の会社の状況を考えるにあたって、いちばんに見るべきは「簡易キャッシュフロー」です。難しいことはありません。
- 簡易キャッシュフロー = 税引前利益 + 減価償却費 = 5,000 + 1,000 = 6,000千円
算式のとおりですが、1年間の利益である「税引前利益」に、「減価償却費」という経費を足し戻したもの。それが、簡易キャッシュフローです。
決算書上、「減価償却費」を経費として、「税引前利益」は計算されています。その減価償却費を足し戻す、つまり、経費として無かったことにするのはなぜなのか?
それは、「減価償却費」が現金の支払いを伴わない経費だからです。現金が出ていかないんだから、利益に足してみよう。
その「簡易キャッシュフロー」の6,000千円は、「1年間で手元に残ったおカネ」だと考えます。
「簡易キャッシュフロー < 年間返済額」という苦悩
結論として、「1年間で手元に残ったおカネ」としての簡易キャッシュフロー 6,000千円が、借金の返済原資になります。
経理的・簿記的なハナシになりますが、借金の返済自体は経費ではありません(支払利息は経費)。
税引前利益の数字を求めるにあたって、借金の返済額がマイナスされているわけではないのです。
つまり、借金の返済は「利益」が無ければできない。これは、よくよく覚えておかなければいけません。
話をイメージ例に戻して、返済原資である「簡易キャッシュフロー」と、年間返済額を並べてみましょう ↓
- 簡易キャッシュフロー 6,000千円 < 年間返済額 9,000千円
1年間で手元に残ったおカネが6,000千円なのに、そこから9,000千円の借金を返そうというのですから。
か・な・り きびしい。ということを、イメージ例からは読み取らなければいけません。
さぁ、借り換えだ
それでは、この状況を打開すべく、借り換えを試みます。時間を早送りして、その結果を先に見ることにしましょう ↓
《借り換えの結果》
- 決算書情報・・・税引前利益 5,000千円、減価償却費 1,000千円
- 借入の状況・・・下表のとおり(金額単位:千円)
借入金残高 | 毎月返済額 | 年間返済額 | |
C信用金庫 | 50,000 | 500 | 6,000 |
計 | 50,000 | 500 | 6,000 |
今度は、この会社の状況はどうでしょう?
「簡易キャッシュフロー > 年間返済額」を目指せ
まず前提として、簡易キャッシュフローは変わりません。6,000千円。
変わったのは借入の状況。A銀行、B信用金庫からの借入を、あらたにC信用金庫からの借入で借り換えをしたのが上記です。
借入金残高は変わらず。変わったのは毎月返済額。もともとの750千円から、500千円に減っています。
結果、年間返済額も9,000千円から6,000千円に減りました。「簡易キャッシュフロー」と、年間返済額を並べてみると・・・ ↓
- 簡易キャッシュフロー 6,000千円 = 年間返済額 6,000千円
ギリギリではありますが、これでなんとか・・・というところです。
このように、借り換えは「簡易キャッシュフロー > 年間返済額」を目指して行われるものです。
借り換えを実現させる条件「債務償還年数」
ハナシとしてはめでたしめでたし、なのですが。このハナシが実現した背景、理由を確認しておかなければいけません。
ずばり、「債務償還年数」です ↓
- 債務償還年数 = 借入金残高 ÷ 簡易キャッシュフロー = 50,000千円 ÷ 6,000千円 = 8.3年
算式からわかるとおり、「借金を何年で返せそうか」というのが、債務償還年数が意味するところになります。
結論として、この債務償還年数を「できれば7年以内」、「最低でも10年以内」に抑えること。それが、借り換えを実現させるポイントです。
なんで7年、どうして10年? というハナシはともかくとして。銀行の考え方とはそういうものだ、ということで覚えておいてください。
一部の貸出を除いて、事業融資の返済期間はおおむね「10年以内」であることがその理由です
借り換えの注意点
さいごに、借り換えをするにあたっての注意点をまとめます。
ケースバイケース
これを言ったら元も子もないのですが。借り換えを実現できるか否かは、ケースバイケースです。
債務償還年数が10年を超えていたってできることもあれば、7年以内なのに借り換えできない、ということもありえます。
銀行の視点は、簡易キャッシュフローや債務償還年数だけではないからです。たとえば、債務超過か否か、など。
それでも、ベースになる考え方を知っているかいないかではまったく違うわけですから。イメージ例でお話したことは、じゅうぶん参考になるものです。
借り換えは「他行から」がキホン
イメージ例でもそうでしたが、借り換えをするなら「他の銀行から」がキホンになります。
もともとの借入先のA銀行に、「借り換えを・・・」というと。いい顔はされないでしょう。場合によっては、それこそリスケを提案されます。
既存貸出の条件がいたずらに悪くなることを、銀行はのぞみません。
そこで、他の銀行を当たることになります。他の銀行にとっては、「新規案件」ですからね。新規営業先として、チカラを入れてもらえる可能性があるわけです。
ということで、もともとの銀行との関係性(悪化?)は覚悟したうえで、借り換え先の銀行を探しましょう。
利益がなければ借入はできない
あえてまた書きますが。借金の返済は「利益」が無ければできません。ウラを返すと、利益が無ければおカネは貸せないということです。
これは「借り換え」に限ったことではなく、借入全般に共通する考え方です。
何が言いたいかというと、過度な節税にはじゅうぶん気をつけてください。そういうこと。
税金を嫌うばかりに、必要以上に利益を落としてしまうと。借入が難しくなります。資金調達手段が絶たれます。
借入には利益が必要であることを、ゆめゆめ忘れてはなりませぬ。
月次試算表は武器になる
節税するな、なんて嫌われついでにもうひとつ。月次試算表は、やっぱりちゃんと作りましょう。できるだけタイムリーに作ることです。
もしも、前期決算の業績が悪かった。けれども、その後は業績が回復傾向です。
そんなときに、月次試算表がなければ。銀行には、業績が悪かった決算書を提示するしかありません。いくら口頭で「回復傾向」を語ったところで信じてもらえません。
必要なのは、数字としての月次試算表です。それがあれば、借り換えを実現できるかもしれません。だから、月次決算はタイムリーにやるべきなのです。
いざというときに、身を守る武器として。月次試算表を携えることをおすすめします。
まとめ
「借り換え」についてお話をしてきました。
遅きに失することがないように。実現できるタイミングを逃さぬように。
借り換えを実現するための基本的な考え方、注意点を押さえておきましょう。
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きょうの執筆後記
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