「ご職業は?」と聞かれて、迷うことはありませんか。
独立してひとりで仕事をしている場合。フリーランス?それとも個人事業主?法人でもフリーランスって言えるの?などなど。
フリーランスと個人事業主の違いについて考えてみましょう。
フリーランスは「一般的な呼び名」、個人事業主は「税金上の区分」
両者の違いは、「明確な定義があるか、ないか」です。結論として、フリーランスは明確な定義はありませんが、個人事業主は明確な定義があります。
フリーランスの定義はあって無いような実情
まずはフリーランスの言葉の定義として、Wikipediaから引用させていただきます。
特定の企業や団体、組織に専従しておらず、自らの才覚や技能を提供することにより社会的に独立した個人事業主もしくは個人企業法人である。
・・・(略)・・・
単発の仕事として様々な仕事はするものの、その仕事を引き受ける都度契約を結ぶという形態をとる、請負である。
引用元:Wikipedia フリーランス
ちゃんと定義があるじゃないか、という感じではありますが。フリーランスについては、「本人の自覚しだい」といった言葉の使い方になっているのが実情です。
Wikipediaによれば、「自らの才覚や技能を提供」「都度契約を結ぶ」「請負」などとされています。ライターやデザイナーなどは、その典型としてイメージしやすいでしょう。
ですから、商店や飲食店などがフリーランスとは違うであろうことはなんとなくわかります。ところが、実際にはフリーランスと言えなくもない、みたいな微妙なケースもあるでしょう。
そのときには、「個人事業主です」と言うよりも「フリーランスです」と言うほうがなんかカッコいいかも。という程度の使い分けになっても問題がないのが「フリーランス」だと言えます。
極論として、「自称・フリーランス」が可能なのがフリーランスです。
個人事業主の定義は揺るぎない
続いて、個人事業主の言葉の定義として、Wikipediaから引用させていただきます。
株式会社等の法人を設立せずに自ら事業を行っている個人をいう。自営業者とも。事業主一人のみ、家族のみ、あるいは少数の従業員を抱える小規模の経営が一般的だが、制限はなく、大規模な企業体を経営することも出来ないわけではない。
引用元:Wikipedia 個人事業主
フリーランスに対して、個人事業主の定義は「明確」です。ひとことで言うと、「事業を行っている個人」。個人事業主かどうかの判断に迷う、微妙なケースはありません。
個人事業主という言葉は、法人の対(つい)として使われます。「個人事業(主)ですか?それとも法人ですか?」のように。
法人とは、いわゆる「会社組織」であり、法人として法務局に法人登記をしているかどうかです。そうではない「事業をしている個人」はすべからく個人事業主である、ということになります。
個人事業主と法人の使い分けは、税金の考え方、つまり税法で大事になります。たとえば、個人事業主ならば所得税という税金が、法人ならば法人税という税金がかかります。
そのほかにも税法では、個人事業主だとこう、法人ならばこう、といった考え方が出てきます。一方で、フリーランスだとこう、というような考え方は税法にはありません。
フリーランスとは違い、「自称・個人事業主」はありえないのが個人事業主です。
税法では「事業を行う個人」について、個人事業者という用語が使われます。個人事業主と同じ意味です。
フリーランスであれば「絶対に」個人事業主。逆は、絶対ではない。
個人事業主とフリーランスの定義をそれぞれ見てきました。まとめとして図解をしてみます。
図解 フリーランスと個人事業主
図解のとおり、フリーランスは個人事業主の中に含まれます。個人事業主のひとつです。
ですから、「フリーランスであれば個人事業主」は成り立ちますが、「個人事業主だからフリーランス」は成り立ちません。
さきほど、商店や飲食店の話をしましたが、それらは「個人事業主だけどフリーランスではない」。だいじょうぶですよね。
ところで、フリーランスのWikipediaの定義をよく見ると、「個人事業主もしくは個人企業法人」となっています。つまり、法人でもフリーランスはありうるということ。
フリーランスというと、個人事業のイメージがあるかもしれませんがそうでもない。やはり、フリーランスという言葉にはあいまいさを感じます。
自営業、ひとり社長という呼び名もあります
図解を見ていただくと、「自営業者」と「ひとり社長」という言葉があります。おまけとして解説しておきます。
自営業者というのは、個人事業主と同じ意味です。実際には、法人の経営者などが「自営業」を名乗ることもあり、個人と法人が混同しているところはあります。
ただ、本来の言葉の意味としては、自営業者は「個人」を指す言葉です。
ひとり社長というのは、社員がひとりもいない経営者だけの法人について使われる言葉です。経営者(社長)ひとりだけなので、ひとり社長。
ということで、法人の中には「ひとり社長」法人があります。税法上、ひとり社長法人だからどうこう、という話はありません。念のため。
まとめ
フリーランスと個人事業主の違い、いかがでしたでしょうか。
フリーランスという言葉は、本来の定義があいまいになり、イメージ先行で使われているところがあるようです。
言葉には自分が感じるイメージもあれば、他人が感じるイメージもあります。本人がフリーランスは「カッコいい」と思っても、「なんかチャラい」と思う他人もいるはずです。
フリーランスを名乗る際には、本来の定義、言葉が持つイメージを考えて使うようにしてみましょう。
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きょうの執筆後記
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わたしは税理士ですが、自分は「フリーランス」だと考えています。フリーランス型税理士。
ひとによっては、税理士がフリーランスだというのに違和感を感じる人もいるでしょう。
フリーランスという言葉は職業で区分するものではなく、働き方で区分するものですから双方ありえます。