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『節税やり過ぎ』の確定申告書がもたらす5つのリスク

やり過ぎ節税のリスク

やった、こんなに節税出来ちゃった!

と、喜んでばかりもいられません。やり過ぎた節税のその先に、意外な落とし穴がポッカリと口を開けて待っているかもしれません。

後の祭り、ということがないように。『節税やり過ぎ』の確定申告書がもたらす5つのリスクについて、確認をしておきましょう。

目次

『節税やり過ぎ』の確定申告書に潜む5つのリスク

税金を払い過ぎないよう、策を講じて税金を抑える「節税」。事業を営む個人事業主にとっては、関心が高く、ぜひとも実行したいものでしょう。

しかし。

「行き過ぎた節税」には気をつけなければいけません。税金が安くなったことと引き換えに、高まるリスクがあるのです。それが次の5つです。

  1. 住宅ローン審査、入居審査に落ちる
  2. 事業融資の審査に落ちる
  3. クレジットカードの審査に落ちる
  4. 休業補償がもらえない
  5. 税務署から疑われる

それでは、順番に見ていくことにしましょう。

ただ、その前に。ひとつだけ「予習」をしておくことにします。サクッと済ませますので、少々おつきあいください。

 

《予習》節税の基本的なしくみについて

基本的に、節税のしくみとは「課税される所得を減らす」ところにあります。

「所得」とは何かというと、事業における「収入-経費」のことだと考えてください。

この「所得」に対して、税率を乗じて税金は計算されるので。税金を減らしたければ、収入を減らすか、経費を増やすか、ということになります。

収入を減らすにせよ、経費を増やすにせよ、税金を減らしたければ所得を減らせ。そういうことです。

こうして節税を目的として、その過程で減少してしまった所得が、このあとお話しするリスクにおける問題点となります。

どうして? ということはそれぞれのリスクごとにお話しします。ひとまずここでは、節税をするうえで、基本的に「所得は減る」ことを覚えておいてください。

節税が行き過ぎているほど、所得もまた減るのだということを覚えておいてください。それでは、本編に入りましょう。

【補足】所得を減らさずにする節税のしくみ
節税には、上述した所得を減らす方法のほかにも、「所得控除」や「税額控除」という方法もありますが、ここでは説明を省かせていただきます。

 

《リスク①》住宅ローン審査、入居審査に落ちる

節税やり過ぎの確定申告書、ひとつめのリスクは「住居」に関するものです。

具体的には、持ち家の場合の「住宅ローン審査」、賃貸の場合の「入居審査」に落ちるというリスクです。

住宅ローン審査

住宅ローン審査を申し込むにあたっては、申込者の「所得を証明する書類(以下、所得証明書)」が必要になります。

個人事業主が申込者である場合の所得証明書は、「確定申告書の控え」「課税証明書(役所が発行)」など。

それらの書類には、さきほど《予習》でお話をした「所得」が記されています。この所得の金額が小さいほど、審査には通りにくくなります。

なぜならば、住宅ローンの返済は「所得」の中から支払われるものだからです。所得の範囲内でしか、返済をすることはできないのです。

また、所得の中から支払われるものは住宅ローンだけではなく、税金・社会保険料、食費、衣服代、光熱費その他生活費が含まれます。

そう考えると。一般に、所得(事業における「収入-経費」)の30%くらいが年間返済額の限度であろう、という見方になります。

たとえば、年間の所得が500万円であれば。年間返済額は150万円(500万円×30%)くらいにおさまるような住宅ローンでなければ難しいということです。

住宅ローンを検討しているのであれば、所得を減らす節税には十分気をつけましょう。

入居審査

賃貸の場合にも、大家さんや不動産管理会社の意向で、所得証明書を要請されることがあります。

趣旨は住宅ローンの返済と同じく、「この人、家賃を支払える能力はあるのかな?」ということを確認するためです。

審査の基準はマチマチではありますが。これも住宅ローンと同じく、所得(事業における「収入-経費」)の30%くらいと考えておくとよいでしょう。

たとえば年間の所得が500万円であれば、月額家賃で12.5万円(500万円×30%÷12か月)くらいが上限、というひとつの目安です。

 

《リスク②》事業融資の審査に落ちる

2つめのリスクは「事業融資」の審査に落ちる、というもの。仕事上で必要な資金を、銀行から借入しようという場合です。

所得証明書に記載された所得金額が小さいほど、融資を受けることは難しくなります。

その理由については、《リスク①》の住宅ローンのところでお話ししたことと同様です。

銀行は融資先の返済能力のひとつとして、事業における所得をチェックしているのです(詳しくは別記事を参照)。

資金調達の手段が限られる個人事業主にとって銀行融資が使えないというのは大きな痛手

目先の節税にばかり目を奪われて、中長期のおカネの動きを見誤ることがないように注意が必要です。

 

《リスク③》クレジットカードの審査に落ちる

3つめのリスクは「クレジットカード」の審査に落ちる、というもの。

個人事業主が、あらたにクレジットカードの利用申込をする際、所得証明書の提出を求められることがあります。

具体的には、クレジットカードに「キャッシング(クレジットカードでおカネを借りる)機能」をつけようとする場合です。

おカネを貸すという観点で、住宅ローンや事業融資と同じように、返済能力がチェックされるというわけです。

キャッシングが良いか悪いかという議論はありますが、ひとつの資金調達手段として備えておくことは検討に値します。

行き過ぎた節税の反動は、クレジットカードの審査にも及ぶのであることを覚えておきましょう。

ちなみに、キャッシング機能を付与しないのであれば、所得証明書を求められることはありません。

 

《リスク④》休業補償がもらえない

4つめのリスクは「休業補償(所得補償)」の保険に関するもの。

フリーランスや個人事業主は、病気や事故によって収入を得られない場合に備えて、休業補償(所得補償)の保険に加入していることが少なくありません。

病気で長期療養が必要な場合、交通事故にあってしまった場合などに、保険金を受け取ることが可能です。

ところでこの保険金。それぞれの保険の契約内容によりますが、実際の「平均月間所得金額」などをベースに計算されるものがあります。

つまり、「保険金額=平均月間所得金額×休業月数」のような計算式。

極端に言えば、節税を求めすぎるあまり所得がゼロであれば。この保険金額もゼロ。保険金を受け取ることができない、ということになってしまいます。

病気や事故は万が一、あるいは可能性が低いものとして捉えがちではありますが。いざという時に困らぬよう、注意を払っておくべきポイントです。

 

《リスク⑤》税務署から疑われる

さいご、5つめのリスクは「税務署」に関するもの。対税務署、という視点でのお話しです。

冒頭からずっと、節税とは基本的に「所得を小さくすること」だとお話ししてきました。これに対する税務署の考え方はどうなのか?

税務署は「不相応に所得が小さすぎないか」を考えています。

たとえば、所得が200万円である個人事業主がいたとして。そのヒトが独身であれば、「まぁ、生活できなくもないか」ということですが。

もし妻一人、子ども3人の5人家族であったならどうでしょうか。「200万円じゃ生活できなくない?」となるわけです。

実際に200万円であればしかたない(もしくは、もっとがんばれ)という話ですが、経費を水増しするなど脱税をはかっているのであれば税務署の追及に耐えることはできません。

また税務署では、「この業種・業態であれば、収入に対して所得はこれくらい」というようなデータを持っています。

このデータから大きく外れるような行き過ぎた節税を行えば、税務署の関心を誘うことになることは覚えておいてもよいでしょう。

 

まとめ

『節税やり過ぎ』の確定申告書がもたらす5つのリスクについて、お話しをしてきました。

  1. 住宅ローン審査、入居審査に落ちる
  2. 事業融資の審査に落ちる
  3. クレジットカードの審査に落ちる
  4. 休業補償がもらえない
  5. 税務署から疑われる

思わぬところで落とし穴に落ちることがないように。「税金」以外の面にも気をつけておきましょう。

 

 

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  きょうの執筆後記
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