税金を安くするために、ここはひとつ「まとめ買い」で利益を減らそうか。
とお考えのあなたへ。その「節税」はだいじょうぶなの? というお話です。
たくさん買えば利益が減る・税金が減る、のか?
決算を前にして、「思っていたよりも利益が出そうだなぁ(税金が増えそうだなぁ)」というとき。経費を増やして利益を減らそう、という考え方があります。
その考え方自体が良いか悪いかはひとまず置いといて(置いときたくないときはこちらの記事を→『節税やり過ぎ』の確定申告書がもたらす5つのリスク)。
経費を増やして利益を減らす方法のひとつである「まとめ買い」についてお話をします。
まとめ買い、つまり、「どうせいつか使うのだから、いまのうちにまとめて買っとこか」という行為ですね、はい。
たとえば、利益 100に対して、まとめ買い 30。このまとめ買いによって、利益は「100 − 30 = 70」ということがOKなのかどうか? ということです。
OKであれば利益が減って税金も減る。NGであれば利益は減らず税金も減らない。さて、いかに。
原則アウト!な「まとめ買い」
まず「原則」からお話すると。まとめ買いによって、利益を減らすことはNGです。
モノを買って経費にできる(=利益を減らすことができる)のは、そのモノを使うことを前提としているからです。
したがって。まとめ買いでは、買ったときではなく、使ったときに経費になる。というのが原則なのです。
仕訳で確認
これについて、一応「仕訳」で確認をしておきます。「仕訳」と聞いて、「うげっ」というカンジかもしれませんが。どうしても厳しければ、ここはひとまず飛ばしていただいたもかまいません。
経費にならないならまとめ買いなんてしない、というのであれば必要のない仕訳ですからね。
【まとめ買いをしたとき】
たとえば、プリンタのトナー 100,000円をまとめ買いしたとします。このときの仕訳は ↓
消耗品費 100,000 / 現金預金 100,000
消耗品費ってなっているけど、経費にならないのではなかったのか? と思われることでしょう。
まとめ買いをしたときは、「いったんは経費」にしておいて、決算時に次のような仕訳をするのが標準的です。
【決算のとき】
プリンタのトナーをまとめ買いしたのち決算を迎え、使っていないトナーを調べてみたら90,000円でした(10,000円分は使った)、という場合の仕訳がこれ↓
貯蔵品 90,000 / 消耗品費 90,000
まとめ買いをしたときに「いったんは経費」にした100,000円のうち、未使用分の90,000円を経費(消耗品費)から、資産(貯蔵品)に振り替えるための仕訳です。
【翌期になったとき】パターン1
決算日をまたいで翌期になったら、【決算のとき】の仕訳を取り消しておきます。つまり、経費(消耗品費)に戻しておきます↓
消耗品費 90,000 / 貯蔵品 90,000
こうしておいて、翌期の決算時に残っているトナーがあれば、その金額でふたたび【決算のとき】の仕訳をします。
【翌期になったとき】パターン2
パターン1に代えて、こちらの方法もあります。翌期以降、トナーを使った分だけ、経費(消耗品費)に振り替えていくという方法です。仮に、10,000円分使ったのなら↓
消耗品費 10,000 / 貯蔵品 10,000
まとめ買いしていたトナーを使うつど、貯蔵品の残高が減っていく、という方式です。
原則があるなら例外がある!
以上、「仕訳」を通じて、まとめ買いをしたときには「原則」経費にならないことを見てきました(使ったときに経費になる)。
しかし、「原則」があるところには「例外」もまたともにあるのが世の常です。
続いて、その「例外」についてお話をしていきます。つまり、まとめ買いをしても経費にできるというケースです。
あきらめんな!まとめ買いでも経費にできる、かも
「できる、かも」って、なんだよ、かもって。というツッコミがありそうだ。うん、あるある。
まとめ買いも経費にできる「例外」があるとはいえ、ビミョーなところもあるのだということを汲んでいただけましたら幸いです。
なんの言い訳かはよくわかりませんが、話を先に進めましょう。
そもそも「まとめ買い」の対象とは?
前述した仕訳の例では、プリンタのトナーをまとめ買いの対象として挙げました。
では、ほかに「まとめ買い」の対象になるものってどんなものがあるの? ということについて列挙してみましょう↓
- 事務用品系 ・・・ コピー用紙、トナー(インク)、文具類など
- 販促グッズ系 ・・・ 会社案内、商品パンフレット、チラシ、カタログ、ポスターなど
- 金銭類似系 ・・・ 切手、印紙、商品券、電車の回数券など
- 梱包資材系 ・・・ ダンボール、緩衝材、ガムテープ、封筒など
上記について、仕訳をする際の標準的な勘定科目を参考に挙げておきます↓
- 事務用品系 ・・・ 消耗品費、事務用品費など
- 販促グッズ系 ・・・ 広告宣伝費、販売促進費など
- 金銭類似系 ・・・ 通信費(切手)、租税公課(印紙)、交際費・福利厚生費(商品券の用途に応じて)、旅費交通費(電車の回数券)など
- 梱包資材系 ・・・ 荷造運賃
ちなみに、上記は「経費に計上するとき」の勘定科目です。これらについて、決算時に残っているものを原則として「資産に計上するとき」の勘定科目はすべて「貯蔵品」になります。
まとめ買いを経費にできる例外とは?
まとめ買いの対象になるものを確認できたところで、いよいよ、まとめ買いを経費にできる「例外ケース」のお話です。
例外として認められるまとめ買いとは、ずばり次のようなケースです↓
- いつも日常的に使っているもの
- いつもだいたい同じ数量を買っているもの
- 買ったときに経費に計上するという経理方法を続けていること
なかなかビミョーな表現が含まれています。抽象的な表現が気になります。そこがちょっと難しく、判断を迷わせるところではありますが。
とにかく。上記の3点すべてに当てはまるまとめ買いであれば、例外的に経費にしてもOKですよ。と、税法では定められているのです。
というわけで、順番に見ていくと。③については、経理方法の話なのでとくにビミョーなところはありません。まとめ買いしたときに、経費の勘定科目で仕訳をしてね、ということです。
①については文字どおりですが、「普段から使っているもの」ということです。普段は使っていなかったけれど決算対策で唐突に買ってみた。という場合には、経費にするのはきびしいでしょう。
②は「だいたい同じ数量(税法の表現では「おおむね一定数量」)」というのがビミョーです。具体性のない表現なので判断に苦しむところかもしれませんが。
要は、いつもより多めにドカっと買ってないよね? ということです。たとえば、普段は5個ずつくらいしか買わないのに、決算直前に50個買いました。というのはアウトです。
じゃあ、10個ならだいじょうぶなのか? ビミョー… というハナシになります。
ビミョーなことについて補足
実務的で現実的なハナシとして。ビミョーなところについては、「金額の大小」が判断材料になることが少なくありません。
つまり、まとめ買いの金額が大きいのか少なくないのか?
金額が大きければ、まとめ買いをしたときに経費にすることは難しくなります(もちろん、ビミョーなところがなければ経費でOKです)。
逆に、金額が小さければ、ビミョーではあるけれど「ま、いっか」というところがあります。少額は追求せず、という考え方です。
じゃあ、どこからが少額なの? という質問はこれまたビミョーですが。誤解を恐れずに言えば、数万円ていどまでなら、というカンジでしょう。
すみません、なんかフォントが小さくなっちゃいましたね。誤解を招きそうだったので、思わず小声になっちゃいました。
でも、もう一回だけ言いますね。「数万円ていど」までであれば、ほんとうはビミョーだけれど、結果的にはOKというケースは少なくありません。
とはいえ。あくまで、原則はまとめ買い時の経費計上はNG、例外的にOK、という取り扱いであることをお忘れなく。
ほんとうはアウトなケースでも「数万円ていど」ならばだいじょうぶ、と言っているわけではありません。
大事なことは、前述した3つのこと(いつも使っている、だいたい同じ数量、経理方法)について、自分が説明をできるかどうかです(税務署に対して)。
まとめ
『決算前にまとめ買い』で節税になる?ならない?についてお話をしてきました。
原則、まとめ買いをしたときは経費ではなく、使ったときが経費計上のタイミングであること。
例外的に、まとめ買いをしたときに経費にするには、3つの要件があることを覚えておきましょう。
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きょうの執筆後記
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