”65万円控除、サイコー。”
たしかに。けれども、控除して安心・満足ばかりもしていられないことがあります。というわけで、「青色申告 65万円控除」の注意点についてのお話です。
広く知られる特典、広くは知られぬ注意点
個人事業者・フリーランスの確定申告について。青色申告 65万円控除、というものがあります。
その「青色申告 65万円控除」は、節税方法のひとつとして広く知られるところです。
ところが。
65万円控除ができるからと言って、安心・満足ばかりもしていられない。
そこで、青色申告65万円控除の注意点について、お話をしていきます。こちらの5つです ↓
- 事前に申請書を提出しなければダメ
- 複式簿記で帳簿つけをしなければダメ
- ただしい貸借対照表をつくらなければダメ
- 申告期限に遅れると65万円控除はできない
- 青色申告のメリットを活かしきれていない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
正しくは、「青色申告特別控除」と呼ばれます。端的に言うと、「利益から65万円を控除してOKですよ」という青色申告者の特典です。
つまり、「65万円の経費上乗せ」というイメージですが。実際に65万円のおカネを支払うわけではない(おカネが出ていかない節税)、という点でタイヘンおトクな特典と言えます。
青色申告65万円控除で気をつけるべき5つの注意点
《注意点1》事前に申請書を提出しなければダメ
青色申告65万円控除をつかうには、事前に税務署へ申請書を提出しなければいけません。
ポイントは「事前に」というところ。具体的には、次のとおりです ↓
- 開業した年から控除をつかいたい人 → 開業した日から2ヶ月以内(あるいは、開業した年の3月15日まで)
- 開業した翌年以降で控除をつかいたい人 → 控除を受けたい年の3月15日まで
上記のとおり、申請書の提出には事前の「期限」がもうけられています。
これに遅れてしまうと、青色申告65万円控除をつかえるのは早くてもその翌年分の確定申告から… ということになってしまうので気をつけましょう。
なお、税務署に提出する「申請書」とは。正式には、「青色申告承認申請書」と呼ばれる書類です。
名前だけ聞くと、「なんだかムズかしそうだなぁ…」と思われるかもしれませんが。A4用紙 1枚、それほど難しいものではありません。
青色申告承認申請書の「書き方」を知りたいときは、こちらの記事をどうぞ ↓
《注意点2》複式簿記で帳簿つけをしなければダメ
青色申告65万円控除をつかうのであれば、「複式簿記(ふくしきぼき)で帳簿つけをしなさい」というルールになっています。
つまり。複式簿記で帳簿つけができないのなら控除は認めませんよ、ということです。
この点で、「ところでフクシキボキってなんですか?」という質問もあるでしょう。
誤解を恐れず答えるのであれば、「(パソコンで)会計ソフトをつかって帳簿つけをすること」です。
いっぽうで、「手書き、あるいはExcelなどをつかって複式簿記で帳簿つけ」は、なかなかできるものではありません。
知識や技術も必要なうえに、手間もかかるからです。
会計ソフトであれば、「複式簿記とはなんぞや」をよく知らずとも、結果的に複式簿記で帳簿つけをすることができる。そのような「サポート機能」が、会計ソフトには搭載されています。
ですから、「フツーにパソコンは扱える・使っている」というのであれば、複式簿記のカベは乗り越えられる。「ひとまず」は、そういう理解でよいでしょう。
逆に。パソコンはちょっと苦手だわ… ということになると、青色申告65万円控除はきびしくなります。そのときには、次善策として「青色申告10万円控除」を狙ってみましょう。 手書きでもいけます ↓
《注意点3》ただしい貸借対照表をつくらなければダメ
さきほど、「会計ソフトを使えば複式簿記で帳簿つけができる」的なことを言いました。
それはそれで事実なのですが、実はその先に、大きな「落とし穴」が待っていることがあります。
その典型例が、「貸借対照表が間違っている」です。
青色申告65万円控除をつかう際、確定申告で税務署に提出する書類のなかには「貸借対照表」というものがあります。
「複式簿記ってなんだそれ?」と同じく、「貸借対照表ってなんだそれ?」ということであっても。会計ソフトをつかう限りは、会計ソフトが「勝手に(自動的に)」貸借対照表をつくってくれる。
なので、あまり中身を確認しないままに税務署へ提出してしまう。というケースが多いようです。
実際、コンサルティングやセミナーでお会いする方に見せていただく貸借対照表には、間違いが散見されます。よくあるものだと、
- 「現金」の残高がマイナス
- 「預金」の残高が、通帳の残高と合っていない
- 「在庫(たな卸資産)」があるはずなのに無い
- 「売掛金」の残高がマイナス、または合っていない
- 「買掛金」「未払金」があるはずなのに無い
上記のような貸借対照表は間違いです。青色申告65万円控除を受けるには、正しい貸借対照表をつくる・提出することが求められるのですから、これではいけません。
ちなみに、見せていただく貸借対照表のなかには、「無料相談会でチェックしてもらった」とか、「〇〇会(←あえて伏せます)というところで見てもらった」というものもありますが。
やはり、上記のような間違いが「フツー」にあります。したがって、じぶんの目でもチェックをできるようにしておきましょう ↓
会計ソフトに頼り切る、のではなく。会計ソフトはあくまで道具、という割り切りが必要です。
《注意点4》申告期限に遅れると65万円控除はできない
ときおり、「遅れグセ」のあるヒトをお見かけします。ここで言う「遅れ」とは、確定申告書の提出期限(毎年3月15日)に遅れることです。
どういうわけか、提出期限までには間に合わず。いつも、ちょっと遅れちゃうんだよねぇ…
この場合、「65万円」の控除はつかえません。遅れてもつかえる、と勘違いしているヒトは注意しましょう。
そもそも 65万円控除は、きちんと確定申告ができるヒトの特典とされているもの。期限を守れないようなヒトには認めない、ということですね。
事前に申請書を出していようが、複式簿記で帳簿つけをしていようが、たとえ1日でも期限に遅れたら認めない。
ただし、遅れても 10万円は控除できます。それでも、65万円控除との差は、実に 55万円です。
控除の効果は「経費」と同じですから、55万円の経費が失くなってしまった… と考えると、とんでもないデメリットです。
遅れグセの自覚があるヒトは、治すようにしましょう。
《注意点5》青色申告のメリットを活かしきれていない
青色申告65万円控除は、青色申告をするヒトのメリットのひとつです。言い換えると、メリットのひとつに過ぎません。
青色申告をするヒトのメリットは、いろいろある。
にもかかわらず。いろいろあるメリットがわからないまま、65万円控除だけで満足をしている。というのは、もったいないハナシです。
せっかく、会計ソフトをつかってまで複式簿記で帳簿つけをしているのですから。メリットの恩恵は存分に受けましょう。
65万円控除のほかには、こんなメリットがあります ↓
- 30万円未満の固定資産であれば、いちどに全額経費にできる
- 赤字が出てしまったら、翌年以降3年間の黒字と相殺できる(翌年以降の税金が減る)
- 家族に支払う給料を全額経費にできる(適正額であれば)
- 年末の売掛金残高に対して、5.5%の貸倒引当金を経費にできる
- 青色申告にだけ認められる「税額控除」制度が利用できる
このあたりのメリットをつかえるのにつかっていない、青色申告のメリットを活かしきれていない、というケースもお見かけします。
上記のメリット一覧を見て、気になるものがあれば勉強するようにしましょう。こちらの記事も参考にどうぞ ↓
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まとめ
「青色申告65万円控除」の注意点についてお話をしてきました。
個人事業者・フリーランスにとって、65万円控除は広く知られる特典です。
いっぽうで、あまり知られていない注意点もありますので。あとで困ったことにならないように、注意点を押さえておきましょう。
- 事前に申請書を提出しなければダメ
- 複式簿記で帳簿つけをしなければダメ
- ただしい貸借対照表をつくらなければダメ
- 申告期限に遅れると65万円控除はできない
- 青色申告のメリットを活かしきれていない