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家事按分は『決算一括処理型』よりも『つど処理型』がおすすめ【freee編】

家事按分とfreeeでの処理

”クラウド会計 freeeは家事按分機能がお手軽だよね”

たしかに。けれども、それは注意を要する「決算一括処理型」です。というわけで、おすすめの「つど処理型」の家事按分についてお話をしていきます。

目次

そもそも家事按分には2つのタイミングがある

個人事業者・フリーランスの帳簿つけ(経理)について。

仕事とプライベートの両方にかかわる支出の「家事按分(かじあんぶん)」という考え方があります。

たとえば、自宅兼事務所の家賃。支払う家賃には、「自宅分(プライベート)」と「事務所分(仕事)」の両方が含まれていますから、「全額を経費」というわけにはいきません。

具体例で言えば、こういうことです ↓

【具体例】自宅兼事務所の家事按分
  • 自宅兼事務所について、支払う家賃は月額 150,000円
  • 自宅兼事務所の利用状況は、自宅分 70%、事務所分 30%

支払う家賃のうち、経費にできる金額は?

150,000円 × 30% =45,000円

上記のように、仕事分とプライベート分とを切り分ける処理が「家事按分」です。

自宅兼事務所の家賃だけではなく、その光熱費や、仕事でもプライベートでも使うクルマ関連の費用や、スマホの通話・通信料など、家事按分の対象はいろいろあります。

【参考】家事按分の「割合」について

家事按分をするときの「割合(仕事分〇%、事務所分〇%)」はどう考えればよいのか? については、こちらの記事をどうぞ ↓

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家事按分、いつやるの? いまでしょ。

さきほどの家事按分について。帳簿つけ(経理)の「タイミング」は、大きく2つに分かれます ↓

家事按分のタイミング
  1. 決算一括処理型
  2. つど処理型

上記のとおり、家事按分は「決算でまとめて一括処理」するか、あるいは「支出のつど処理」するか。それぞれ具体例でイメージをしてみましょう ↓

毎月の利益が役立たずな、決算一括処理型

前提をシンプルに、毎月の売上は 500,000円、毎月の経費は自宅兼事務所の家賃のみ 150,000円(自宅分 70%、事務所分 30%)。ということで考えてみることにします。

この前提について、家賃の家事按分を「決算一括処理型」で帳簿つけした場合がこちらです(金額単位は千円) ↓

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決算一括処理型は文字どおり、決算(12月)のときにまとめて家事按分をします。

ゆえに、1月から11月の家賃は「按分する前」の金額 150,000円。さいごの12月にまとめて自宅分(プライベート分)を経費から引っこ抜きます。つまり、

150,000円 × 70%(自宅分の割合)× 12ヶ月 =1,260,000円

この金額を一気に決算(12月)で処理するものだから、12月の家賃が「ー1,110,000円(150,000円 − 1,260,000円)」と、なんだかおかしなことになっています。

当然、「利益」の金額も影響を受けますから。1月から11月の利益は、家事按分をしていない分だけ過小であり、そのしわ寄せが12月に出ているわけです。

これだと、決算(12月)になって「突然、利益が吹き出す」ため、思わぬ利益・思わぬ税金にビックリ! ということになりかねない。

家事按分の処理は年に1回でラクチンなのですが、毎月の利益はアテにならない、役に立たない。これが「決算一括処理型」です。

毎月の利益が役に立つ、つど処理型

前述の決算一括処理型は、毎月の利益が役に立たない。それは、決算でまとめて処理するからだ!

だったら、家賃を支払うつど家事按分をすればいいじゃないか。というのが「つど処理型」です。その帳簿つけのようすがこちらになります(金額単位は千円) ↓

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上記のとおり、毎月の家賃ごとに家事按分をするため、1月から12月の1年を通して経費の金額が同じになります。つまり、

150,000円 × 30%(仕事分の割合) =45,000円

この金額が、毎月の経費です。

結果として、毎月の利益も同じ。これなら、決算で利益が吹き出すこともありません。

つど処理で手間はかかるけれど、毎月の利益をアテにできる、役に立つ。これが「つど処理型」です。

 

クラウド会計 freee を使って家事按分をしてみよう

ここまで、家事按分について「決算一括処理型」と「つど処理型」を見てきました。

ここからは、クラウド会計 freee を使って、実際の帳簿つけ(経理)についてお話をしていきます。

お手軽だけどオススメできない「決算一括処理型」

freeeには、お手軽な「家事按分」機能が用意されています ↓

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次の画面で、「新しい家事按分を登録」をクリックします ↓

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さきほどまでの具体例と同じく、自宅兼事務所の家賃(自宅分 70%、事務所分 30%)であれば、次のように入力します ↓

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上記のように入力が済んだら、「保存」ボタンをクリックです。

すると、次の画面。「合計金額」欄には、年間(1月〜12月)の家賃の支払合計金額 1,800,000円(150,000円 × 12ヶ月)が集計されています ↓

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上記は、毎月の支払家賃の帳簿つけでは家事按分を考慮せずに、「支払った金額の全額(150,000円)」を経費として処理していた。そして、いまが決算(12月末)という前提です。

この状態で、「再計算」ボタンをクリックすると ↓

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上記のとおり、「事業利用分(仕事分)」と「按分(プライベート分)」とに、自動的に家事按分されます。

また、「仕訳」をクリックすると、家事按分の結果として、12月31日付けで家事按分の仕訳(取引)が登録されていることを確認できます。

と、freeeの家事按分機能はお手軽なのですが。12月31日付けの仕訳ひとつのみで処理する「決算一括処理型」です。

つまり、毎月の利益は役に立たないタイプ。あまりオススメはできないなぁ、ということで「つど処理型」についてお話をすることにします。

お手間だけどオススメの「つど処理型」

せっかく帳簿つけをしているのに、毎月の利益が役に立たないのではもったいない。そこで、「つど処理型」です。

つど処理型で家事按分をするときの、freee の使い方を見ていきましょう。

ひとまず、「手動での取引登録」を前提に説明をします。取引登録の画面を開いてみましょう。

2019年1月11日に、自宅兼事務所の家賃 150,000円(自宅分 70%、事務所分 30%)を、プライベート資金(事業用以外の預金口座など)で支払った。という前提です ↓

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入力が済んだら、「詳細登録」ボタンをクリックします。

さて、次の画面がポイントです ↓

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ちょっとややこしく見えるかも、ですが。それほどのものでもありません、ひとつずつ見ていきましょう。

緑色の枠部分については、すでに入力済みで表示されているはずです。

そこからまず、赤色の枠部分「+控除・マイナス行を追加」ボタンを押します。すると、緑色枠の行の下に一行追加されますので、上図のように入力をします。

ポイントは、金額の「▲105,000」です。支払家賃 150,000円のうち、自宅分 70%の 105,000円をマイナスすることを表しています。

あとでそのことがわかるように、「備考欄」には上図のようなメモを残すとよいでしょう。

続いて青色の枠部分。「+行を追加」ボタンを押すと、こんどは赤色枠の行の下に一行追加されますので、上図のように入力をします。

ポイントは、勘定科目を「事業主貸」にすること。金額を、さきほどの赤色枠と同額の「105,000」と入力すること。

入力事項は以上です。ここで、登録画面下の「仕訳形式プレビュー」を確認してみましょう ↓

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赤枠の部分に注目です。「借方(左側)」の 150,000と、「貸方(右側)」の 105,000が相殺されて、結果、45,000が地代家賃(経費)として処理されていることがわかります。

ここは「簿記」的なハナシなので、ちょっと難しいかもですが。そういうもんなのかな、と眺めておきましょう。

さいごに、freee の「レポート」機能にある「月次推移」で、毎月の地代家賃の金額を確認しましょう。家事按分処理後の 45,000円が毎月の経費として掲載されているはずです。

これなら、毎月の経費、毎月の利益を役に立つものとして見ることができます。ちょっと手間はかかりますが、「つど処理型」がオススメです。

なお、よく出てくる取引であれば、「取引テンプレート」に設定をしておけば、その手間も軽減できるでしょう。

また、上記例では手動での取引登録を前提にしましたが、データ連携している預金口座やクレジットカードの取引登録でも考え方・やり方は同じです。

【注意】消費税の「税区分」について

上図では、免税事業者(消費税を納めなくてもよい事業者)の前提として、「税区分」欄はとくに処理をしていません。

課税事業者(消費税を納める事業者)の場合には、居住用不動産の支払家賃は「非課税仕入(あるいは便宜的に対象外)」の税区分になりますのでご注意願います。

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まとめ

家事按分は「決算一括処理型」よりも「つど処理型」がおすすめ、についてお話をしてきました。

お手軽だけど毎月の利益が役に立たない「決算一括型」よりも、手間はかかるけど毎月の利益が役に立つ「つど処理型」がオススメです。

つど処理型を選ぶのであれば、帳簿つけの方法・やり方を押さえておきましょう。

家事按分とfreeeでの処理

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